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7.(3) 3.  南丹森のエコミュージアムの基本方針
更新日時:
2024.08.16 Feb.
志方隆司
 平成16年4月、亀岡・園部・京北の三地方振興局が統合され、京都府南丹広域振興局が誕生しました。統合によ
り振興局が自主的に取り組めることが増え、地域の独自色をはっきり出せるようになりました。
 新しい広域振興局では、「温故知新」をキーワードに「地域振興計画」が策定されました。南丹森のエコュージ
アムはこの計画で提唱され、「南丹森のエコミュージアム専門協議会で具体的な内容が示されました。
 いざ動き出すと、最初の壁はすぐに現れました。「エコミュージアム」という言葉はきちっと固まったものでな
く、話す人、聞く人により様々なイメージや解釈が生じていたのです。しかも「エコ」+「ミュージアム」という、
比較的聞き慣れた外来語で構成されており、「え、それなに?」と聞くこともなく、人それぞれにそれなりのイ
メーシができてしまうのです。
 その結果、相当に話が進んでから、根本的な認識の違いに気付くことが生じました。
 そこで、「南丹森のエコミューシアム」はどのような目的で、何を行い、どのような姿を目指すのか、大枠を示
すことが必要となりました。専門協議会の最初の仕事は、「基本方針」をまとめることから始まり、平成19年2月
に「南丹森のエコミュージアム基本方針」か策定されました。
1 南丹森のエコミュージアムの目的
 地球温暖化防止のための「京都議定書」が発効され、世界中で環境負荷の少ない生き方が求められています。
 新しい技術か生まれる一方で、私たちひとりひとりに、身近なところでの取り組みが求められています。その手
法には燃料革命以前の暮らしから学ぶことがたくさんあります
 南丹地域の農山村は、里山カら薪炭や堆肥を得ながら、森と深く関わり、京の都へも木材や炭、米や野菜など自
然の恵みを供給してきました。まさに都と一体となって資源循環型社会を担ってきた歴史があります。
 なかでも、木を「植え・育て・利用する」を繰り返す林業の経営は、資源循環型産業そのものと言えるでしよう。
 この地域に伝わる遺産や伝統行事をはじめ、今も脈々と受け継がれている農林業の生業(なりわい)には、歴史を
学び、未来に伝え、未来を考えるのに役立つものがされています。
 私たちひとりひとりがそれらを発見し、学び、さらに観光や交流を通じて周りの人々に伝えながら、地域振興に
役立てることが、「南丹森のエコミュージアム」の目的です。
 @ 「地域づくり」のため、
 A 住民と行政がともに動き、
 B 森林の恵みを再発見し活用する。
 このことを出発点に据え、この地域に適した展開をめざすものです。
2 エコミュージアムは何をするのか
 「南丹森のエコューシアム」は、南丹地域全体をエリアとし、人と人の交流を基本に次の3つの姿をもった「博
 物館」を目指します。
 ただし、「博物館」は、必すしも建物が必要ではありません。物語の舞台となる「現地」があればよいのです。
 @楽しむ博物館
 読む・見る・聞く・体験を組み合わせて楽しく学ぶ。
 A提案する博物館
 地域環境から地球環境まで、循環型社会を提案する。
 B発展する博物館
3 エコミュージアムはどのような姿を目指すのか
 基本方針では、数年間のタイムスケジュールを示しました。
(1)平成18年度
 a. エコミュージアム専門協議会の立ち上げ
 b. 先行検討エリア(日吉・神吉)での候補地の選定
  基本方針が定まると、次は農山村・山中に埋もれている「宝石」の原石探しが始まります。その主役は住民
  です。原石の多くは日常生活の中にすっかり溶け込んで静かに眠っていることが考えられます。
  昔は「薪」を産出していた雑木林、民家に残るいろりや竈、もはや人々の記憶の中にしか残っていない炭窯
  等々。
  「ああ、これは宝物なんだ」と気づき、どのように宝石にしていくのか、具体的な実例が必要です。そこで
  専門協議会はミュージアム第1号を実現することが、どのような説明よりも有効と考えました。この第1号
  が「ひよし窯」です。
(2)平成19年度
 a. 先行検討エリアでモデル運営の開始
 b. 検対エリアの拡大
  ひよし窯のスタートで、実例を示すことができました。同時に亀岡エリアでの検対も始まりました。
(3)平成20年度以降
 a. 単一施設(ポイント)、施設の集まり(エリア)かできる。
 b. エコミュージアムの中心組織の立ち上げ
 c. 新たな候補地の具体化
  平成19年度までは「縦に掘り下げる」行動を先行しましたが、20年度以降は横の広がりを展開します。「ひ
  よし」を先行事例に、仲間づくりが始まります。
(4)将来のエコミュージアムの姿
 a. 「森」の枠を超えて「南丹エコミュージアム」へ出発しましたが、人の営みと自然との関係は森・里・川・
  街、さまざまな場所で見ることができます。これらを区別する必要はありません。発展し、仲間が増えれば
  増えるほど、あえて「森」を冠する必要はなくなるでしょう。森を出発に、地域全体の宝探しに発展するこ
  とが自然な進化と考えられます。
 b. 運営組織の姿
  運営は各施設か独立して行います。例えば既存の郷土資料館や展示・体験施設がそのままエコミューシアムに
  登録することができます。また、集落で行っている伝統行事をエコミュージアムに登録することもできます。
  開館日は年に1回、行事の時だけの野外博物館の仲間入りです。ただし、いつ訪問してもその場所がエコ
  ミュージアムであることを示すため、現地に案内板の掲示を求めます。
  一方、中心組織は個々の施設のバックアップ、エコミュージアムの一体的な情報発信等を行います。ある程度
  慣れてきたら複数の施設を巡るツアーや、キャラクターグッズの製作などを行って、より幅広く展開します。
  仕事が広がれば、業態もそれに併せて変化する柔軟な組織がよいと思います。これは、例えば関西の私鉄各
  社と「スルッと関西」のような関係です。スルッと関西は当初プリペイドカード共通利用のための協議会と
  して始まりましたが、加入社局が増える中で、数社にまたがった企画切符や、電車型チョロQなどのキャラ
  クター商品等の企画・製作を手がけ、株式会社へと発展・進化しました。エコミュージアムの中心組織は、
  ひよし窯のような個々の取組を、うまく活かす組織として適宜進化する柔軟性が望まれます。

  ひよし窯に続く、地域の小さな「温故知新」が集まって、南丹の新しい名物が創造されることを夢見ています。
   
(しかた・たかし/京都府南丹広域振興局農林商工部 企画調整室担当係長)


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