子守唄墓守虫 第四章 クマゼミ
夏休みに入り、僕はキアと毎日のように一緒に遊んで過ごした。
キアは小学校にあがる前まで明智市に家族と住んでいたと言い、海や山裾や田畑の穴場をよく知っていた。
ある夕方、僕は見知らぬ若い男性と一緒にクマゼミの羽化を観察する。はじめ人あたりよく見えた男性は、実は中学校の暴力グループの頭、三年の江坂だった。
終戦記念日に県内で小規模な地震が発生した。
ニュース番組にかじりつき、大震災の思い出を語り合う人々のなかで、僕は取り残されたようないらだちを感じる。
キアの気遣いにさえ反発して、初めて自分から突き放した。
意地をはって長居とゲームセンターに入り浸り、探しに来たキアを無視し続けた。
そのあと急に家族と旅行にでかけることになり、僕は謝罪の機会をのがしてしまう。
旅先でも父親としっくりいかず、落ち着かないままに一週間を過ごした。
こわごわ明智市にもどった僕をキアはいつも以上に機嫌よく出迎えてくれた。
父親に殴られて痣ができたと、こともなげに話すキア。僕は自分の家族とのあまりの違いにとまどってしまう。
キアは夏休み最終週の補習に出ることになっていた。千林が安土先生に、キアがカンニングしていたと告げ口をしていたのだ。
成績の良い生徒の嘘を無批判に信じる教師の態度に腹をたて、僕は安土先生に暴言を吐いてしまった。
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