1.研究テーマ

エネルギー材料の創製と、新しい材料合成プロセスの開発

2.研究内容の分類

エネルギー材料、素材生産プロセス

3.氏名

鈴木 亮輔(すずき りょうすけ)

5.T.主な研究と特長

 金属材料、無機物を対象に、これらをエネルギーの発生、変換、貯蔵関連機器に適用するために必要な諸特性を付与する最善の材料構造・組成設計、および材料の合成法設計を行うと共に、従来より最大のエネルギー消費産業の一つである材料素材製造プロセスを根本的に改変するプロセスの新規創造を目指している。
 磁気特性に優れたアモルファス合金を使用する際に高温にさらされるとその物性を失うことから、それらの熱安定性について研究し、エンタルピー緩和と呼ばれるガラス特有の構造変化を見出して熱力学的・速度論的観点から論じた。その後、新材料合成に興味を持ち、金属間化合物を酸化物混合体から直接酸素を除去することで合成する共還元法を実験的に系統的に研究してきた。超伝導化合物、超伝導酸化物についても早くより着目し、これらの材料の合成製造に不可欠な熱力学および状態図について基礎的であるが先駆的な研究を続けており、いくつかの製造プロセスを提案してきた。さらに、超伝導素材であるニオブ、チタンから極低濃度まで酸素を除去する方法・プロセスを数々試み、高品位化を計っている。また高温不安定ガスと金属、無機物との非平衡反応を利用した化学プロセスにも興味を持っている。
 具体的な研究テーマは次の通りである。
  1. ニオブ、チタンの製造、脱酸、リサイクル
     高融点金属のニオブ、酸素との親和力の強いチタンは共に酸素濃度を下げることは簡単ではないが、カルシウム、マグネシウムなど強力な脱酸材と、高真空電子ビーム溶解や電気化学的手法を組み合わせた種々の手法を提案し、ニオブについては0.001%以下、チタンでは0.003%酸素のレベルまで引き下げることに成功している。

  2. 熱電発電
     小さな温度差で直接熱を電気に替えることの出来る熱電変換材料は魅力的である。性能指数ZTが1を越すような素晴らしい材料を開発したいと願っている。ただし、そのような材料が開発できたとしても一体どの程度の発電量が可能であるのか、がかねがね疑問に思っていた。熱流体を用いた大型熱電発電機を試作した場合に発電できる電気量をとりあえずは熱伝導方程式と流体力学から算出する方法を提案し、解析解、数値解に挑戦している。

  3. オゾンガスによる過酸化
     オゾンガスは高温では酸素に分解してしまう不安定なガスであるが、その強力な酸化力を材料製造に積極的に応用することを目指している。高圧酸素下でのみ、あるいはそれでも不可能な過酸化物を合成できるとの熱力学指針と、超高濃度オゾンガス発生装置を駆使して、種々の無機物、酸化物に適用を始めている。

  4. 溶融塩を利用したシリサイド・コーティングによる金属素材の酸化防止
     一般の金属は高温で酸化しまた室温で腐食する。これらを防止する手法の一つとして、金属表面をコーティングし保護するのが有効である。高温溶融塩を用いて金属表面にシリコンを析出させ、同時に珪化物とし、さらにシリコン酸化物として安定に金属を保護するという手法を開発した。鉄鋼材料を始め高融点金属などの保護皮膜として使用できるかどうかを調査した。

  5. アンモニアガスを用いた脱銅
     日本は世界一の鉄鋼生産を誇るが、今後鉄スクラップは増加の一途となろう。廃鉄に混入する銅線を除去すれば現有の鉄鋼製造プロセスで鉄のリサイクルが可能とされる。アンモニアガスを溶鉄に吹き付けることによって銅が優先的に揮発除去できることを見出して以来、その原理の解明と共に実用化(真空精錬、アンモニアリサイクル)を目指して研究を行った。

U.今後の展望

 重厚長大な産業である素材生産プロセスは将来とも我々の生活を支える必須の産業であり、より少ないエネルギーで価値のある材料を生み出す新プロセスは研究の甲斐のあるテーマである。現在の生産プロセスの自動化、高効率化等も重要であるが、若い学生諸君と共に大学らしい新しいプロセスの提案、新しいエネルギー材料の開発を積極的に行いたいと考えている。

T.経歴

1979年京都大学工学部冶金学科卒業、
84年同大学大学院工学研究科金属加工学専攻博士後期課程単位認定退学、日本学術振興会奨励研究員、
85年京都大学工学部冶金学科助手、京都大学工学博士、
90〜92年スイス連邦工科大学(ETH)客員研究員、
93年京都大学工学部助教授、
95年同大学大学院エネルギー科学研究科助教授、
06年〜北海道大学大学院工学研究科教授

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U.所属学会

日本金属学会
日本鉄鋼協会
エネルギー・資源学会、
新超電導材料研究会

6.W.主要論文・著書

  1. DSC Study of Pd76Au6Si18 Amorphous Alloy, J. Mater. Sci. Lett., 1, 127-130(1982).
  2. Enthalpy Relaxation of Metallic Glasses near Tg, J. Non-Cryst. Solids, 61&62, 1003-1008(1984).
  3. Processes to Produce Ti-Al Alloy Powders by Calcium Co-Reduction from the Oxide, Mem.Etud.Sci.Rev.Metal., 86, 655-658(1989).
  4. Phase Equilibria of Bi2O3-SrO-CaO-CuO System at 1123K in Air, Proc. 2nd Inter. Symp. on Superconductivity, "Advances in Superconductivity II", 235-238(Springer-Verlag, 1990).
  5. Thermodynamics and Phase Equilibria in the Sr-Cu-O System, J.Amer.Ceram.Soc., 75, 2833-42(1992).

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8.キーワード

省エネルギー、チタン、オゾン、熱電発電、酸素
1997年1月29日寄稿から2006年6月少し追加修正

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