事故詳細

(事故No,19540110a)

 1954年1月10日午前10時52分頃、シンガポール発イタリア・ローマ経由イギリス・ロンドン行きBOAC英国海外航空(英国航空の前身)781便デハビランドDH-106コメット1(G-ALYP)が、ローマのチャンピーノ空港を離陸して約21分後、地中海エルバ島(イタリア)上空26500ftを巡航中に空中爆発し同島南方沖約16Kmの海上に墜落した。
 この事故で乗員6名、乗客29名、計35名全員が死亡した。
 事故機の残骸は水深150mの海底に沈んだが、地道な回収作業が行われた。事故当初は爆弾テロが疑われたが、爆発の形跡は回収した破片からも遺体からも検出されず、次いでエンジンのタービンブレードが脱落して飛散し、与圧胴体に損傷を与え爆発的な急減圧を招いた可能性についても検討されたが、証拠は何一つ得られなかった。
 本件事故の発生を受けて、同年3月23日までコメット機は運航停止となり、コメット全機の点検と強度不足の不安がある約50箇所の補強が行なわれた。考え得る万全の対策を講じた末の運航再開のはずであった。しかし運航再開直後の4月8日に再びコメット機が空中分解を起こしたため、イギリスの国家を挙げた徹底した事故調査が行なわれた。この結果、コメットの機体の与圧にかかる設計強度が不足していたことが分かった。本件では、ADF取付用の機体上部の穴を始点とした亀裂が空中分解の原因となったことが明らかにされた。
 事故機は1951年に製造された。

◎関連文献(刊行年順)
著者名書 名出版社刊行年頁 数
宮城雅子「大事故の予兆をさぐる」講談社(ブルーバックス)1998年30頁〜31頁
加藤寛一郎「墜落 第二巻 新システムの悪夢」講談社2001年37頁〜39頁
デイヴィッド・オーウェン「墜落事故」原書房2001年53頁〜55頁、56頁〜61頁
上記文献のうち現在も流通しているものについてはこちらで入手できます。
 


(C)1999-2003 外山智士
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