「みんなの数学 ホップ・ステップ・ジャーンプ」


出版社:海青社

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まえがき
目次

みんなの数学

日本を元気にしよう
皆さんは数の概念がなくなった社会を想像できるであろうか。例えば牛1頭と2頭では何かが異なるという概念がなくなった状態を考えればよい。何一つ思考を進めることができないことに気づくであろう。皆さんは無意識の内に数を認識しているのである。このように数の概念なくしては、何一つ思惟し認識することは不可能であり、我々の日常生活や精神生活は成り立たないのである。これは極端な例であるが、方程式、三角関数、微積分等々、今日我々が普通に学んでいる数学の概念がなければ、それぞれのレベルにおいて同様な状態が想定でき、従って今日の文化的生活の享受もあり得ないであろう。

数学は基本的には広い意味で数を扱う学問であり、人類が2000年以上の長きにわたり延々と積み重ねてきた知恵である。数学は種々の事象を抽象化かつ一般化して扱う学問である故、全ての学問の基礎であると言える。例えば1+1=2は、1人+1人=2人にも、1km+1km=2kmにも、1億円+1億円=2億円等々、あらゆる分野で使うことのできる普遍的概念である。従って程度の差はあるが、数学を抜きにしては、これらの学問を十分理解しさらに発展させ、他の関連する分野に応用することは困難である。言い換えれば数学を活用することによって、これらの学問の理解度と応用力をさらに深化させることができると言える。現にそのようにして現代社会は成り立っている。

近年大学生の学力低下が著しいと言われている。これにはいろいろな理由が考えられるが、この傾向は多くの大学・学部で観られており、学生による授業内容の理解に、大きな弊害となっている。さらに小中学校や高等学校の生徒の学力低下も、日本社会の大きな問題になっている。学力の基本は言うまでもなく“読み、書き、算盤”であるから、算盤即ち算数・数学は基礎学力中の基礎なのである。この学力が低下しているということは、日本社会の根底が劣化しつつあるということである。残念なことであるがこの影響は静かに、しかし確実に日本社会のあらゆる面に現れてくるであろうし、現に現れていると思われる。国際社会における我が国の立ち位置の相対的低下も、また近年日本社会の閉塞感や元気のなさの真因の一つはこの辺りにあると筆者は考えている。日本社会を元気にする大本は、小・中・高・大学において、基礎学力をつけるようしっかり教育することにある。

日本は幕末から明治にかけて、西欧の基礎学問、例えば数学、物理学、化学、医学等を多くの努力をもって取り入れることに成功した。これ自体は日本人のすぐれた素質によると言ってよいであろう。しかしこれらの学問は西欧において古代ギリシャの時代から積み重ねられてきたものであり、先人たちの実践と思考の繰り返しの歴史そのものでもある。この歴史こそがこれらの学問の背後にある真髄ともいえる。樹木に例えれば、地下深く大樹を支えている根であり、幹である。我が国はこれらの真髄までは、十分には取り入れることができなかった。以来百有余年になるが、筆者はこれが基礎学問の重要性の認識に対する彼我の差として、現在なお尾を引いていると考えている。我が国が欧米を追いかけているうちはこれで何とかやって行けたのであるが、欧米に追い付き、道の見えない未来に向かおうとしている今こそ、この基礎学問の重要性に対する認識の不足が顕現してきたと思われる。めまぐるしく変化する現代において、いつの時代にも変わらない、従って通用する基礎学力を身に着けることこそが大切である。それがあなたの力となり、そして社会の底力となり、結果として日本を元気にするのである。さあ、一歩を踏み出そう。

筆者は数学を専門として学んだ学徒ではない。しかし縁あってある大学で数学の授業を担当する機会を与えられた。本書はその講義内容を加筆、整理することによって成った書である。本書にはかなり初歩的な内容から、中学・高校で学ぶ内容、さらにはそれを一歩進めた内容が含まれている。従って本書の読者として中学生から大学生、一般社会人等、本格的学習から、昔学びそこなった箇所の再学習さらには頭の体操等を含め少しでも数学に親しんでみようと思う人々を想定している。また中学・高校の時期に数学に苦手意識を持った人も多いであろう。しかし大丈夫である。それは、学問はいろいろな分野で多かれ少かれ相互に関連を持ちながら進歩しており、また各分野で論理思考性という共通点を持っているので、ある分野が理解できれば他の分野も理解する力を持てるからである。従ってこのような方も読者の対象である。正に“みんなの数学”なのである。本書がいろいろな方面で、数学の大切さ、さらには基礎学力の大切さについて考えるきっかけの一助になれば、筆者として大変嬉しいことである。

本書では内容の本質を理解するため、かなり論理性に重点をおいて書いてある。また各章の初めに“いんとろ”を設け、楽しみながらその章に関連した話題に触れられるように、会話風に解説してある。また本書を自習書としても活用できるように、問題の解答も比較的丁寧に解説してある。 なお表紙カバーのデザインと本文中のイラストは、上記大学の漫画研究会会員の不知火泉氏の作品である。 末尾ながら、本書の出版を快諾していただいた海青社社長の宮内久氏、また編集担当の福井将人氏のお二人には、貴重なご意見とご尽力をいただいた。ここに深く感謝する次第である。
2011年 立春                       大津市国分にて
松本孝芳

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目次

1章 序

いんとろ1

1.1 数について
1.2 分数の割り算? なぜひっくり返して掛けるの?
1.3 逆必ずしも真ならず
1.4 負の数
1.5 0の発見
1.6 方程式
1.7 2次方程式の解
1章 演習問題


2章 関数とグラフ

いんとろ2

2.1 関数
2.2 不等式
2.3 座標軸の回転
2.4 高次関数、奇関数と偶関数
2章 演習問題

3章 三角関数

いんとろ3

3.1 弧度法
3.2 三角関数の定義
3.3 三角関数のグラフ
3.4 逆三角関数
3.5 三角関数の公式
3章 演習問題

4章 指数関数と対数関数

いんとろ4

4.1 この世のスケール
4.2 指数
4.3 指数関数のグラフ
4.4 対数と対数関数
4.5 対数の性質
4.6 対数関数のグラフ
4章 演習問題
5章 複素数
いんとろ5
5.1 虚数単位
5.2 複素数の平面表示
5.3 複素数の四則
5.4 共役複素数
5.5 複素数の極形式表示
5章 練習問題
6章 順列・組合せと数列
いんとろ6
6.1 順列・組合せ
6.2 区別できないものを含む場合の配列
6.3 二項定理
6.4 数
6章 演習問題
7章 関数の極限
いんとろ7
7.1 極限値と連続
7.2 極限値の性質
7.3 いくつかの関数の極限値
7章 演習問題

8章 微分

いんとろ8

8.0 微積分の歴史的背景
8.1 微分係数
8.2 導関数
8.3 微分の公式
8.4 合成関数、媒介変数表示関数及び逆関数の微分
8.5 三角関数、指数関数、対数関数の微分
8.6 陰関数の微分
8.7 関数の増減
8.8 関数の級数展開
8.9 指数関数と三角関数の重要な関係
8章 演習問題

9章 積分

いんとろ9

9.1 不定積分
9.2 積分の基本公式
9.3 定積分
9.4 定積分の応用
9章 演習問題

10章 ベクトルの基礎

いんとろ10

10.1 スカラーとベクトル
10.2 ベクトルの和及び差
10.3 ベクトルのスカラー倍
10.4ベクトルの合成、分解
10.5 ベクトルの成分
10.6 ベクトルの積
10.7 ベクトル関数
10章 演習問題

11章 微分方程式

いんとろ11

11.1 微分方程式を立てようー世界の人口増加速度ー
11.2 変数分離形微分方程式
11.3 同次形微分方程式
11.4 一階線形微分方程式
11.5  物体の落下運動への微分方程式の応用
11.6 炭酸ガス排出速度も微分方程式で解析
11章 演習問題
12章 データ処理・統計的取り扱い
いんとろ12
12.1 有効数字
12.2 四則演算における有効数字の扱い方
12.3 統計的取り扱いの基礎
12.4 正規分布
付録
A1平均値・分散の基本性質
A2 標本平均の平均・分散
12章 演習問題

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