自作ピンルーター

今回は工具に興味が無い方には何の事だか分からない内容だと思います
少なくともギター演奏には不要な内容ですので興味の無い方はパスして下さい(^.^)

仕事には道具が付き物で当然道具無しでは仕事は出来ないのでございます
「まぁ、無くても何とかなるんやけどあったら良いなぁ〜」
と云う類の道具もある訳で、そんな類の道具で開店当時から欲しくてしょうがなかった工具があります
工具と云うより機械なのですがそれがピンルーターと云う機械でこんなヤツです↓

 
 
借りてきた画像を適当にトリミングしたもんで見づらくてすみません
画像では刃物に四角いカバーが付けられていますがこの刃物とは前回のコラムで使用した刃物と似たような物が取り付けられます
切削したい木材などをテーブルに置き、べダルを踏むとテーブルが上がり回転する刃物に木材が当たり切削できると云う機械工具です
この機械の特徴は穴あけだけでなく開けた穴をそのまま横方向に広げる事ができる所にあります
(一般の方にはどうやって使う物かわからないと思いますので興味がお有りでしたらyoutubeで「庄田鉄鋼 RO-116」と検索してみて下さい)
NCルーターと言えばどんな機械かご存知の方も多いかも知れませんがコンピューター制御で切削をするのがNCルーターで手動でアナログな作業をするのがピンルーターです
現在はギター製造でもNCルーターが普通でピンルーターなんて使うのは極少数生産の工場くらいですが、ギターを製造しない当店でもこれがあればピックガードの製作や冶具の製作などとても重宝します
しかし、高さ・奥行きが150センチほどと大きく重さも700キロほどもあり価格も中古でも数十万と物理的にも金額的にも到底購入できる代物ではありません
元々家具や建具など大きな物を加工する為の機械ですから大体はこれくらい大きく、以前勤めていたハイエンドギターズでは比較的小さなピンルーターがありましたが特注した物らしくもう手には入りません
となると自作するしかないとず〜っと前からヒマがあるごとに構想を練っていましたがなかなか上手く行きそうにありませんでした
特に昇降テーブルを精度良く作動させようとすると自作でも結構費用が掛かってしまいます
そうこうしている内に10年が経ち、去年工具通販サイトを見ていてたまたま高速回転型のボール盤を見つけました
回転速度が6200回転/分とハンディールーターの回転速度にも届きませんがボール盤としては異例に早くこれだけ早く回ればルーターとして使えそうですしコンパクトで安い!
これは使える!とルーターとしての機構はとりあえず購入してから考える事にしてソク買いしました
そこから機構を構想すること約2ヶ月
’14年の年末についに完成させる事ができました
前回のコラムでもちょこっと出てきますが↓


 
これです
本来テーブル部分は平面精度を出した金属板を使用しますが重く高価ですし取り付け穴加工などが難しくなりますので今回製作したピンルーターは安くそこそこ平面精度の出た集成板を使用しました
テーブルサイズが300ミリ×450ミリとコンパクトですのでこれで問題無いでしょう
難儀していた昇降テーブルの機構はテーブルは固定してボール盤にある刃先の昇降機能を利用する事で代用しクリアできました
普通ボール盤はハンドルを回して刃先を下ろすようになりますがそのハンドルを外しそこに自転車のブレーキ用のワイヤーを取り付けペダルで昇降できるようにしました
これで両手はフリーで作業できるようになります

 
画像右側のペダルを踏むとワイヤーが引かれ本来ハンドルレバーが付いていた軸が回転し刃先が降ります

 
こんな風に。
この 画像では2ミリの刃物を取り付けテーブルに2ミリのピンを取り付けています
木材など削りたい物に冶具を貼り付けて、このピンを冶具に当てなぞる事で木材が冶具と同じ形に削られます
(ピンの付け根にYの字の切れ込みが入った金具がチラッと見えますがこれは後に出てくるドリルチャックの先端です)

 
実作業のイメージとしてはこんな感じです
刃物と同じ径のピンをセットし冶具に貼り付けた木材などをピンルーターに当てれば冶具と同じ形に削る事が出来ます
前回、前々回の記事に出たコロ付きビットとの違いは画像のように木材を少しずつ削る事が出来ますので厚みのある木材を加工出来ることです
前回の記事に出た真ん中にベアリングが入ったコロ付きビットも少しずつ削る事が出来ますが刃先の径が10ミリφしか選べません
その点このピンルーターであれば2〜10ミリφの刃物を選べることが出来、より細かな形状に対応する事ができるんです
この自作ピンルーターの特徴的な所はピンの取り付け方法で通常は専用のピンを特注して取り付けるのですがそれではコストが掛かってしまいますので悩んだ上で閃いたのがドリルチャックを利用する方法です

 
 ここにピン受けとなるドリルチャックが付いています

 
 画像左が通常のボール盤に付いているドリルチャックですが、これはどんな寸法(何ミリ〜何ミリと範囲はありますが)の丸棒でもセンターを出して取り付けられる部品で、これを逆さにしてテーブルの底面に取り付けました
取り付け金具はさすがに特注しましたが2千円もしませんでした
右画像のようにドリルの刃をお尻から差込みテーブルの上に貫通させてピンとして使用出来るようになります
この画像では分かり易いように太いドリルの刃(10ミリφ)を取り付けています
すでに工房にあるドリルの刃を利用できますからコストが削減出来て、しかも0.1ミリ単位でピンの径を換える事が出来ますので出来上がりをジグよりも0.1ミリだけ小さくしたり大きくしたりと云った事が出来るようになります
これは従来のピンルーターでは出来なかった事で自画自賛ではありますがコストダウンと拡張性を兼ね備えた画期的な方法と思っています!(^_^)v
ちなみに本来ドリルチャックはチャックハンドルと云うT型のハンドル工具で回してドリルの刃を固定しますが今回の使い方の場合そこまでタイトに締め付ける必要は無く、チャック本体を握り込んで手締めするだけで十分です

 
ルーター本体の高さはこの様に昇降ハンドルで調節出来ます
このピンルーターの欠点は精度が不要な部分としてテーブルの足を2×4材で作ってしまった事で腰下が軽くなってしまい昇降ハンドルを回す時にテーブルごとガタガタしてしまうようになってしまいました
ルーターを降ろす時はルーターの自重でスムースに降りますが上げる時は自重と精度良く昇降させる為キツキツに組んだフレームの摩擦でスムーズには上がりません
これは今後改善の余地があります

と云う事で工具が好きな方には興味頂いた内容かと思います
参考までにこのピンルーターの材料費は6万円ほど
ただ、組み立てる手間は結構掛かりました
すでに実戦投入していますが具体的な使用方法はおいおいご紹介したいと思います

今回はただの自慢記事みたいになってしまいましたが楽器に限らず修理業と云う仕事はアイデアが肝心だと思っていますのでそう云う意味でのアピールにはなるかと。
よろしくお願いします!!
 
 
 
 
 
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