ヘッド交換part2

前々回のコラムでレスポールのヘッド交換をご紹介いたしましたが
今回は少し違った仕上げをしましたのでまた取り上げたいと思います
ただ、ヘッド交換はそう頻繁にある修理ではなくて
実はこのpart2の修理が入った時にヘッド交換の仕方として
前回'08年にヘッド交換をした時の画像資料をお見せして
オーナー様に作業工程をご説明したのですが
「いい加減コラムの更新をしないとイケナイなぁ…」と思っていたこともあり
ついでと言っては何ですが今回シリーズ物として取り上げる事にしました

前回の物は楽器店からの下請けで入った物でしたので
直接オーナー様とはお話は出来なかったのですが
今回は直接ご依頼頂いた物なのでご事情をお聞きしましたが…


ドーン!
い゛っ?
なんと割れ目にパテらしき物が埋め込まれています…
友達に貸していたらこうなって帰ってきたそうです
なんて事するんだか…
もっと割れ目が小さければこんな事になっていても以前「DIY修理の代償」で取り上げたようにその部分を切り取り木材で埋めて修理出来たのですが、今回の物は割れ目が大きく
矢印部分が角度を変えて折れていますので強度を維持しながら切り取り・埋めると云うのは無理そうです     
と言う事でヘッド交換となってしまいました
こんな事さえされていなければ塗装込みでも修理代金23,000円で済む良くある折れ方なんですが…

前回の物はヘッドが2分割になってしまっていた事とヘッド表の化粧板が薄い木製である事からそれ自体を温存する事が出来ませんでしたが今回はヘッド表にダメージが無かった事とレギュラーラインのモデルは化粧板が厚い積層ファイバーですので剥ぎ取り再利用する事にしました
表面に熱を当てて接着剤を緩ませたところにヘラを差し込んで剥ぎ取ります
ちなみに当店では250wのハロゲンライトで照射して熱を与えます
ブリッジや指板を剥がす時にもこの方法を利用していますがこの方法ですとアイロンなどで加熱するよりも広く均等に熱を与えられますし熱を与えたくない所にアルミ箔を貼っておけば照射を反射して余計な加熱を抑えることが出来ます
例えば指板を剥がす時、そのまま熱を与えるとバインディングや樹脂製ポジションマークを溶かしてしまう事がありますのでその部分をアルミ箔で覆っておきます

で、上が化粧板を剥ぎ取った画像ですが一部ちょっと熱を与えすぎて塗装が浮いてしまっていますがどっちにせよ塗装はやり直しますので大丈夫です

それにしても作業台汚いなぁ…  10年前に自作して以来そのままですわ

汚い作業台は見ない事にして頂いて次にヘッド本体を切り取ってしまいます
この切り取ったヘッドを今回は一部再利用します
その前に前回と同じように新たにヘッドとなる部材とダブジョイント工法で接続しますがココの説明は前回しておりますので割愛して次に進みます

切り取ったヘッドをこの様にテーパー状にスライスして

同じ角度でテーパーを付けた新しいヘッド部と貼り合せると

こうなります
この段階では粗取りですので汚いのですが

この様にした一番の狙いはシリアルナンバーを温存したかったのです
前回ヘッド交換したヒスコレレスポールはシリアルナンバーがスタンプでしたので温存は無理でしたがこちらは刻印ですので塗装を剥がしてもこのように残ります
「ここまでしなくても新しいヘッドに刻印ポンチで印字すれば良いじゃん」と思われた方
本当の事を言いますと私、刻印ポンチ苦手なんです…(^_^;)
8桁の数字を均一に打つのって結構難しく私からするとこうやって丸ごと移植する方がより良い仕上がりなるからなんです
もちろん私の都合ですからこの作業は見積もりに盛り込んではいませんし
オーナー様からしても少しでもオリジナルな部分が多い方がウレシイと思いますし…
ってのは言い訳ですかね(^_^;)

周辺の塗装を剥がしつつ木部を整えました
塗装を剥がしてみるとオリジナル部分と新たに製作した部分の色が随分違いました
製作した材木自体は前回のヒスコレレスポールのヘッド交換に使用した材と同じマホガニー材で前回はほとんど違和感なかったのですがヒスコレの方の画像と見比べるとネックの材自体がこちらの方が濃い色でした やはり木材なので個体差はありますね
この色の差も生地着色でほとんど違和感なくなると云う前提で塗装に入ります

と、いきなり塗装仕上がりです

生地着色で違和感無くなる事を前提…とは言っても多少の不安はありましたが
この様にほとんど分からなくなる様仕上げる事が出来ました
良かった…(^_^;)

シリアルナンバーもこの様にオリジナルとまんま! 
ま、移植したんだから当たり前ですが…
分かり難いとは思いますが一応下4桁はモザイク処理しています
IDってのはあくまでもプライベートな物なので一応ね

引きの画で締めとします

このギター、他もチェックするとナットもトグルスイッチも交換されていてどれも貸している間にされたようです
ちゃんとした作業だったら良いんですけどいかにもアマチュアな作業でナットは低くしすぎたんでしょうナット床に板を張ってかさ上げしてるし弦溝も仕上げもメチャメチャ
スイッチは安物に換えられてるし交換作業もはじめはハンダ付けにチャレンジしたらしく汚くハンダ付けされた所が一箇所あってそこで断念したんでしょう他のところは配線を端子に結んで絶縁テープで止められていました
自分のギターでするなら勝手ですけど借りたギターをこんな事するなんて信じられないです
でも、こういう話はこの仕事をやってると時々聞くんです
「人に金を貸す時は返って来ないと思って貸せ」と言いますが
ギターも人に貸すときはぶっ壊されても良いと思って貸した方が良いかも知れませんね
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