サドルのアタリ

楽器店からの依頼でレスポールのピックアップ交換が入ってきましたがチェックの為に音出ししてみたところ、弦のアタック音が明らかにおかしい…アタックがミュートされたように潰れてしまい弦が鳴らない様な状態です
こう云う時はナットの溝が悪いかサドルのアタリが悪いか…1フレットを押さえて音出ししても同じような音ですのでこれはサドルのアタリだと見てサドルを観察すると

やっぱり…  サドルの弦溝の切り方がおかしいのです
一見綺麗に溝切りされているように見えますが実はこのような溝の切り方ではダメなのです
溝をほんのちょっと切り直すだけですぐに改善されるのですが
コラムのネタの為にその前後の写真を撮ったものの、どのように変わるかは実際の音が無いと説明にならない…
と云う事で急な思いつきでデジカメのムービーで記録することにしました
完全に思いつきで行動しましたのでかなりアタフタしておりマスが…(^_^;)

        1弦は切り直してしまっていたので2弦で撮っています
        間があると比べ難いと思いますので音出しの部分だけ繋げてみました
        4回繰り返されるのできっと違いに気が付かれると思います
        アタック音に注目して聴いてみて下さい

違いが分かりましたでしょうか?
SOHO向け安物ノートパソコンの内臓スピーカーで再生しても明らかに違いが分かりますのでほとんどの方に違いを聴き分けて頂けると思います
では、どのように切り直したかと言いますと…

赤矢印の部分に注目しながら画像にマウスポインターを当ててみて下さい
赤矢印が指す部分の弦が少し奥に入り込むのが分かると思います
つまり元の状態では弦とサドルが「面接点」になってしまっているのを赤矢印部分をほんの少し削って弦溝に角度を入れる事により「点接点」にしたと言う訳です
これがタイトルの「サドルのアタリ」による音の違いなのです
弦溝の切り方による弦のアタリの違いやサドルの形状による弦のアタリの違いで弦の振動の仕方がかなり変わるんです
このレスポールはアフターマーケットのロックタイプのブリッジユニットに交換されていて、交換した時にどこかのリペアショップか自分で弦溝切りをしたのでしょうが多分オーナーさんはあの潰れたアタックはこのタイプのブリッジの音だと思ってしまっていたんでは無いでしょうか?
あと上の画像で黄色矢印が指す部分にも注目して頂きたいのですが、加工前と後ではこの黄色矢印部分の弦の位置も変わっています
赤矢印部分をほんの少し削っただけでこれだけ弦の角度(サドル進入角)が変わったのですが加工後の画像で黄色矢印部分がブリッジの縁に当たっているように見えますがこれはギリギリ当たっていません
実はここがブリッジに当たっているとサドルに掛かるはずの弦圧が分散されてしまいこれもまた弦の振動の仕方に影響が出ます
とは言っても今回のサドルのアタリによる違いから比べると僅かな違いではありますので分かる人には分かる程度の違いですが…

今回のテーマの「サドルのアタリ」ですが、一般にはサドルの素材による音の違いをよく言われますが、私は素材の違いよりもサドルのアタリによる音の違いの方がよっぽど分かりやすいと思っています
いずれこの事に関しては詳しく検証して行きたいと思っているのですが、なにせ込み入った話になってしまい万人に理解して頂けるかどうかがネックになり行き詰っています
実はその記事の第一章は8割方書き上がってるのですがそれを出入り業者のB君(リペア学校卒業生)に読んでもらった所、「すごく興味のある内容だけれど、難解である事には違いないでしょう」と言われてしまいました(汗
間違って解釈されてしまうのはすごく嫌なので悩みドコロです
前の記事 目次に戻る 次の記事
HOME