家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん7月号(2023年7月1日発行)は

「私の雑記帖」に寄稿していただいたプロバレリーナの橋本有紗さんが、ある方から、プロを目指している子どもたちへのアドバイスを求められた時、「小さいうちに、生(なま)の舞台を見て欲しい。コンクールだけだと本当のバレーが分からない。出来るだけ本当のバレーを見て欲しいと思います」と言われていたのが印象に残っています。
2023年4月号の「編集室 だより」で、NHK『おかあさんといっしょ』を制作されていた人達が、「子どもだましではダメで、みんな本気で本物を見せてあげたいって思って作っていた」と言われていたことを紹介しました。
また、アンパンマンの作者として有名な、やなせたかしさんも、「子どもの絵本だからといって、容赦(ようしゃ)はしない。レベルを下げない」と言われています。
本物に出会うことの大切さを強く感じます。子どもの時に、どれだけ本物に出会うことが出来るか、大人が心がけなければならないことだと思います。
そして、本物の宗教に出遇(あ)うことも、忘れてはならない大切なことの一つだと思います。

「人間は基本的に善良なものだ。そしてどういう障がいがある人も、他の力が抑圧しなければ、妨害しなければ、彼には彼の自分らしい表現があるということを、考えるようになりました。それはね、子どもと四十年以上毎日ほぼ一緒に生きています。それによって私は学んだと思っています」
これは、ノーベル文学賞受賞者・大江健三郎さんの言葉です。大江さんは今年(2023年)3月に88歳で亡くなられました。その特番の中で、2010年に放送された「障がい児の父親 心の葛藤を描く」の中で、語られていた内容です。
障がいの有る無しに関わらず、他の力の抑圧や妨害がない環境を作ることの大切さを、再認識させられました。ただ、頭では分かっていても、知らず知らずのうちに決めつけを行い、抑圧や妨害をしてしまっているのが、私たちなのではないでしょうか。抑圧や妨害をしてはいないか、常に自己を振り返ることを、忘れてはならないと思います。

NHK大河ドラマ「どうする家康」(2023年5月14日放送)の中で、家康の家臣・夏目吉信が、幼き家康(幼名・竹千代)に、「怖いですか?」と問いかけます。竹千代は、「竹千代は……弱いんじゃ」と答えます。それに対して吉信は、「弱いと言えるところが若(わか)の良いところでござる。素直にお心を打ち明け、人の話をよくお聞きになる。だから、皆、若をお助けしたくなる。皆が助けてくれます」(中略)「若はきっと大丈夫」
自らの弱さを認め、自らの弱さを隠さないということは、とても勇気のいることです。しかし、そのように、自らの弱さを受け容れたところに、多くの人に支えられ、多くの人と共に生きていくという、本当の強さが生まれるように思います。
(小池 秀章)

育心

I(私)メッセージ    児童養護施設 光明童園 施設長/堀 浄信

今月の『育心』は、堀浄信先生がご執筆くださいました。
お話の中の「罰せられ型罪悪感」(悪いことをしたら罰を与えて、自律心を高めていく罪悪感)の部分を読んでいて、スキナーのオペランド条件づけの「正の弱化」と「正の強化」を思い出しました。
例えば、「正の弱化」とは「食事を残した(望ましくない行動)ので、皿洗い(行為者にとって望まない刺激)をさせる」という、罰を与えて望ましくない行動をしないようにする条件づけです。
そしてその逆が「正の強化」で、「宿題をした(望ましい行動)ので、お菓子を与える(行為者が望む刺激)」という、褒美を与えて望ましい行動を継続させる条件付けです。何だか少し心が重くなってしまいます。
しかし「許され型罪悪感」(大切な人を悲しませたくないという心から湧き出る自発的なもの)を読ませていただき、「罰」や「褒美」などからはかけ離れた、溢れんばかりのお慈悲の心で包み込んでくださる、仏さまを感じられるような感覚になりました。
子どもたちが「自分を大切にし、他者を大切に思う」そんな素敵な人生を歩んでいけるよう、「I(私)メッセージ」の関わりで、「許され型罪悪感」を育んでいきたいと思いました。

マッキー先生のアートで子育て3

美術館と思わずに、美術館へ行く   
美術館アートナビゲーター 福井県坂井市立高椋小学校校長/牧井正人

2ページ目、マッキー(牧井正人)先生の『アートで子育て』は、すぐにでも美術館に出かけてみたくなります。
なるほど、「けんちゃん(仮名)はどの絵が買いたい?」と、コンビニで買い物をするかのように絵を鑑賞すると、子どもたちは品定めに夢中になるでしょう。
絵の中の登場人物になりきって、遊びながら絵を観るのも楽しそうですね。親子の会話が弾みそうです。
温泉につかるように、温かい絵を鑑賞してホッとするのも、慌ただしい毎日へのご褒美のような気分になりますね。
世界のいろんな街並みや、自然の絵を鑑賞しながら、「いつかこの街へ行ってみたいね」と、親子で夢見るのも素敵です。
マッキー先生のお話は、親子でアートを楽しむために必見のナビゲート書です。さあ、今夏の思い出の一ページにぜひ親子で美術館へ!

私の雑記帖

バレエの世界に魅せられて   
カザフ国立オペラバレエ劇場 ファーストソリスト/橋本有紗

今月の『私の雑記帖』は、カザフ国立オペラバレエ劇場ファーストソリスト橋本有紗さんのお話です。
橋本さんは、日本を離れられてから30ヵ国以上の国で活動されてきましたが、その間は、様々な異国の文化や国民性に戸惑われながらも、一つ一つの出会いや縁を大切に、ダンサーとしての糧にされています。
「諸々の現象は過ぎ去るもの、怠ることなく、修行を完成させよ」というお釈迦様の言葉を原動力に、芸術の道をひたむきに突き進んでいかれる姿がとても素敵です。益々のご活躍に期待が広がります。

お話の時間 つきみとほし20

風鈴の音   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、風鈴の音を聞きながら、見えない空気に「おかげさま」を感じたつきみちゃんとほしくんです。

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太陽の下、夏の遊びを楽しみたいと思います。
(鎌田 惠)

令和5年6月15日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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