家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん6月号(2023年6月1日発行)は

「人生に余生はない 与生である」
以前、あるお寺の掲示板に紹介されていた言葉です。私たちが普段、「よせい」と書く時や話す時、「余生」という漢字を思い浮かべることが多いのではないでしょうか。
しかし「余生」は、「余った人生」と表現されているように、少し違和感を覚える言葉のようにも感じます。私たちの人生やいのちに、余った人生やいのちはないからです。たとえば仕事をリタイアすれば、子育てを卒業すれば、歳を重ねていけば、私たちの人生は「余生」に入っていくのでしょうか。そうではないように思います。たとえ仕事をしていようと、していなくても、子育てをしていようと、していなくても、歳を重ねていようと、重ねていなくても、私たちは「与えられた人生」を今、生きているのではないでしょうか。
かけがえのない、たった一度きりの「与生」を生かされている、それが私の人生に他なりません。日々、言葉を使って生きている私たちだからこそ、どのような言葉を使うかによって、人生の景色も変わってくるように思います。「与生(与えられた人生)」という言葉を大切に、この人生を精一杯、歩んでいきたいと思います。

「私のものさしで問うのではなく 私のものさしを問う」
この言葉もあるお寺の掲示板で見て、ハッとさせられた言葉です。私は無意識に、いつも自分のモノサシである価値観や都合で周りのすべてのものを問い、計りながら生きています。「好き・嫌い」「損・得」「良い・悪い」「生・死」と、何の疑問も持たずに自分のモノサシで勝手に優劣をつけ、評価して生きています。しかし私の持っているモノサシが、そもそも間違ったものであれば、計っていくものを誤って捉えていくことにつながっていきます。
だからこそ、私の持っているモノサシを確認し、チェックしておくこと。自身の価値観や都合を、問うていくことの大切さを仏教は伝えてきました。仏さまの心(智慧・慈悲)という、自分のモノサシをはるかに超えた、大きくて深いものと出遇うことによって、私のありのままの姿をはっきりと確認することができますし、そこに仰ぐべき真実とは何かが知らされてくるように思うのです。
自分の価値観だけが確かなわけではなく、自分のモノサシだけが正確なわけでもありません。自分の持っているモノサシを超えた、仏さまの心(智慧・慈悲)に包まれた安心のなか、自身の姿を省みながら、与えられた今を生きていきたいと思います。
(赤井 智顕)

育心

我が子の姿に知らされる    本福寺住職・第二本福寺こども園園長/三上明祥

今月の『育心』は、第二本福寺こども園の三上明祥先生が、ご執筆くださいました。
私の園では、毎週月曜日に全園児が集まって合同礼拝を行います。
私が座っている席の一番近くは、1歳児クラスの子どもたちの席です。保育者や年上の子どもの姿を真似て、小さな手を合わせ、たどたどしいけれど、一生懸命讃歌を歌う姿がとても愛らしいです。
この礼拝の際に、私は調声の役割として皆を後ろに仏さまの前に立ちます。するといつも、子どもたちの「おつとめ」を導いているつもりの私は、子どもたちの「お念仏」の声に包まれ、導かれているような、ありがたく不思議な気持ちになります。まるで子どもたちの声が、仏さまの喚び声となって届いてくださるような感覚になるのです。
三上先生のお話の中に、「私の周りにそのこと(なもあみだぶつ)を大切にされた方が沢山おられた」ことを、子どもの姿から気づかされたとありました。
「忙しい忙しい」とバタバタ日々をこなす私に、仏さまの喚び声に包まれる幸せがここにあるということを、私もまた、子ども達から気づかせてもらっていると感じています。

たくさんの花とたくさんの喜びを12

わたしが歩んできた道のりを    育児漫画家/高野 優

2ページ目は、育児漫画家の高野優先生のお話です。
高野先生のお話を読ませていただき、「私はちゃんと子離れできているだろうか?」と、いつも自分を振り返らせていただいています。
我が子が自分のもとを離れていく際は、本当に身を切るような思いがします。
「病気をしているんじゃないだろうか?」
「事故に遭ってはいないだろうか?」
と、考えだしたらきりがありません。
しかし、先生のお話の中の「そこまで悲しく思える自分自身を、まずは褒めてあげませんか? きっと、慈しんで育ててきたからこそ芽生える感情のはず」という言葉に、今回もとても励まされ、我が子の進む道を応援する勇気をいただきました。
子離れの時は、意外にも早く、本当に突然やってきます。子育て現在進行形のお父さんお母さん、どうぞ思う存分、子育てを満喫してくださいね。

私の雑記帖

お伝えしていたつもりが・・・   
本覚寺住職 認定こども園別海くるみ幼稚園園長/加藤泰和

今月の『私の雑記帖』は、加藤泰和さんの「朗読塾チーム一番星」の、朗読劇の活動を通してのお話です。
私も以前一番星さんの、「いのちのいろえんぴつ」を鑑賞させていただいたことがあります。こころにしみる深いお味わいでした。
しかし加藤さんは、「一番の特等席でお育てを受けてきたのは、朗読塾チーム一番星のメンバー達だったのです」と自分たちの活動を振り返っておられます。
演じる側と観客が、仏さまのお慈悲の中でともにお育てをいただく。そんな世界を感じさせていただきました。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし19

おばあちゃんのご法事   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、おばあちゃんのご法事を通して、「連綿とつながる命」を感じるほしくんです。

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雨の後、虹が美しい季節ですね。
(鎌田 惠)

令和5年5月18日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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