家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん7月号(2022年7月1日発行)は

「ひなたは10歳や。僕は10歳のお父さん。るいは10歳のお母さん。一緒に大きくなってったらいいねん」(2022年2月1日NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」、大月錠一郎が、妻・るいに言った台詞)
「完成された人間である親が、未完成な人間である子どもを育てている」と無意識の内に考えてしまうので、真面目な親ほど、子育てに悩みます。
子どもが親によって育てられるように、親も子どもによって育てられているのです。親も子どもも、共に未完成な存在であり、共に育て育てられている関係なのです。「親も子も、同じ年齢だ」ということを忘れないでいたいと思います。

「暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか聞こえぬ歌もある」これは、NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の中で度々出てきた、棗黍之丞(ナツメキビノジョウ)の台詞です。
また、若松英輔氏は『悲しみの秘義』(「悲しみとは何か」を考え抜いた26編のエッセイ集)の中で、
「人生には悲しみを通じてしか開かない扉がある。悲しむ者は、新しい生の幕開けに立ち会っているのかもしれない」
と述べておられます。
暗闇や悲しみを否定するのではなく、暗闇や悲しみ自体が、新しい人生を開くご縁へと転じられていく。そんな人生の受け止め方を、大切にしたいと思います。

カーリング女子、ロコ・ソラーレのメンバーのインタビューより。
吉田知那美「私たちの強さは、強くあろうとしないっていうこと。弱さ全開で私たちは弱さをしっかりと情報公開し合うので、理解しているからこそ助け合うことが出来る」
鈴木夕湖「やらかしたことに対して怒る人はいないですよ」
皆が口々に「みんなやらかすから〜」
自分の弱さを知り、それを受け入れるということは、とても大切なことです。そして、そこに本当の強さがあるのだと思います。
しかし、自分の弱さを受け入れるということは、とても難しいことです。それが出来るのは、弱い自分をそのまま受け入れてくれる世界に、出遇っているからなのでしょう。

あるお寺の掲示板に、「『幸齢者』なのです 『老花』なのです」とありました。高齢者は単に年齢の高い人ではなく、幸せな年齢の人(幸齢者)であり、老化も単に老いていく変化ではなく、老いの花(老花)を咲かせることだというのです。
老いることが、ダメになること・不幸になることだとしたら、子どもたちの未来は、真っ暗です。仏さまは、老い・病み・死んでいくことにも大切な意味があると教えてくださいます。
まず、大人が幸齢者に成り、老花と言える人生を、歩ませていただきたいものです。
(小池秀章)

育心

ほとけさまから 預かったわが子   仏教思想家/ひろさちや

今月の『育心』は、ひろさちや先生です。本誌最後のご寄稿となりました。先生のありし日の面影を浮かべながら、しみじみと拝読させていただきました。
先日、T君の乱暴がエスカレートし、対応に悩んだ担任のN先生から「園長先生、T君のお母さんとの面談に同席してくださいませんか」という申し出を受けました。
部屋に入って来られたお母さんは開口一番「先生、うちのTが迷惑かけてすみません。愛情不足だと思っています。Tのことが可愛くて、大切でしょうがないのに、どうしてもあの子と関わる時間が作れません」と、ポロポロ涙を流されました。
仕事をしながら、4人の子育てをする(T君は第3子目)お母さんの大変さは十分に予測ができましたが、話を聞いてみると、お父さんは毎日帰りが遅く、ほとんどワンオペ状態です。
私は、園でのお子さんの様子などを話すことも大切だとは思いましたが、ちょうどひろさちや先生の『育心』を拝読した直後でしたので、まずは「相手を拝む気持ち」で、お母さんのお気持ちを聞くことが大切だと思いました。
仏さまが、T君をご両親にお預けになったのですから、ご両親ともども拝ませていただく気持ちで、お話を聞かせていただきました。

親と子の育ち合い広場16

子育てと自分 全部ひっくるめて豊かに   
子育て支援コミュニティワーカー/藤本明美

2ページ目は、藤本明美先生の『親子と子の育ち合い広場』です。
コロナウイルスの感染状況は、完全終息とはいきませんが、マスクの着用や外国人旅行客の受け入れなど、ずいぶん緩和のムードが感じられるようになりました。
藤本先生がご紹介くださっているお母さん達の会話の様子は、コロナ禍の中で感じたジレンマや、逆に気付きを得てプラスに転じたことなど、それぞれが素直な気持ちを安心して発信し、共感し、認め合いながら、未来に向かって共に歩んで行こうとされるお姿に、力強さを感じました。
子育てママ同士、ご近所、同僚、親戚、家族など、大人も子どもも安心できる場所があるということが、大切だと学ばせていただきました。
園もそんな場所になりたいと思います。

私の雑記帖

他者の命と痛みを共有する心    同朋大学特任教授/森村森鳳

『私の雑記帖』は森村森鳳先生です。お医者さんの娘であった森村先生は、中国の文化大革命で下放され、苦難の青春時代を生きられました。そんな中でのひとつのエピソードをご紹介くださっています。私は、ポロポロと涙を流す母牛や子牛の姿に、手を合わさずにはいられませんでした。
「人間が生きることの矛盾を自身に問うていく」ということを忘れず、他のいのちを犠牲にし、多くのいのちに生かされていることに感謝して生きていきたいと思いました。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし9

太陽の味   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、つきみちゃんとほしくんの、夏野菜の栽培です。「トマトが太陽の味」とはすばらしいですね。

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向夏の夜に、蛍の光が美しい今日この頃です。
(鎌田 惠)

令和4年6月15日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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