第424回定期演奏会 <2009.1.22-23>

指揮:ピエタリ・インキネン

シベリウス作曲 「クオレマ」より“鶴のいる情景”作品44-2
ラウタヴァーラ作曲 交響曲第8番「旅」(日本初演)
シベリウス作曲 交響曲第1番ハ短調作品65


Sibelius Inkinen


今年最初の大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会は、フィンランドの若手指揮者インキネンの登場で、祖国フィンランドの作曲家シベリウスとタウタヴァーラの作品で、現代の作曲家ラウタヴァーラの交響曲は本邦初演。1980年生まれというのだからまだ弱冠30歳くらいの初々しい<イケメン>で、ヨーロッパの貴公子というイメージ。前半に現代フィンランドの作曲家、ラウタヴァーラの交響曲第8番の日本初演、後半にシベリウスの交響曲第1番というプログラム。有名な2番を持ってこないで1番にしたところがなんとも心憎い。

演奏は、もともとヴァイオリニストの指揮者らしく弦のアンサンブルがすこぶる魅力的で、大植英次の下では時折すばらしいアンサン
ブルを聴かせるようになった大阪フィルの弦楽セクションが非常に冴えていた。
最初のシベリウスの曲は弦のアンサンブルが生命線となるような曲で、北欧の冷たい雰囲気が非常によく出ていた。

2曲目、実ははっきりとした印象が残ってません。
外が寒かったこともあって、徐々に体があったまってきて猛烈な眠気に襲われたのです。
あまり変化のない音型が続いたこともあって、夢と現をさまよってました。ということはあまり印象に残る音楽ではなかった・・・?

後半はシベリウスの1番。
この曲はクラリネットのソロが、北欧の暗くモノ悲しいイメージでホールを包み込む、そんな開始です。
ソロの金井さんが、こんなに情感豊かに吹いてくれるとは思ってませんでした。クラリネットの音色自体、こういうイメージにぴったりなので、このソロの部分は曲全体のイメージを決めてしまいます。
続いて弦が中心になって主題を演奏することになるのですが、インキネンの指揮は弱音と強音をうまくコントロールしていて、盛り上がる部分でも決して激しすぎない。抑制の効いた、落ち着いた音楽が続きます。
このテーマもそうですが、シベリウスの音楽はどうも下降音型が多いように思います。
一般的に上向音型は明るい音楽、下降音型は暗いイメージになるのですが、シベリウスの音楽はこの下降音型を、クライマックスに持っていくときにも非常にうまく使っているように思えます。
ヴァイオリン協奏曲なんかもそんなことを感じさせます。
インキネンにシベリウスと同じような資質があるのかどうかわかりませんが、この第1シンフォニーを無理なく自然な流れの音楽に仕上げて行きます。
スケルツォ楽章でもオーケストラをしっかりコントロールしながら、歯切れのよさも十分あります。
終楽章になると、寒い北欧のイメージとそれを吹き飛ばそうとデモするかのような激しさがより強く交錯する音楽になり、インキネンの鼻息も荒くなり、曲の素晴らしさを実感させてくれました。
欲を言えば、まだまだ若い演奏家なので、もっと荒削りで激しい面を表に出してもいいんじゃないかなという思いは残りました。
彼はヴァイオリニストでもあるということなので、弦が荒々しく雑音を出すような演奏はいやなのかもしれません。
一度彼のソロ、大植英次の伴奏でこのシベリウスの協奏曲を聴いてみたいですね。