コラム

社員の化学日記 −第94話 「古い新しいってどういうこと?」−

金属で出来た製品は,製造したてすなわちピカピカの新品の状態から,年月がたつと錆びや腐食などにより老朽化し,見た目も汚くボロボロになってくる。

身近なところでは,10円硬貨の製造が新しいものは綺麗な金属光沢を放っていますが,それがだんだんと製造時から時間が経過してゆくと金属光沢を失い, また銀で出来た装飾品なども同様に金属光沢を失う。 さらに時間が経過すると,金属としての形や,性質も失う。

これは,製造直後の状態から,時間が経過してゆく過程で空気中の酸素や硫黄などと反応し金属の表面に皮膜を形成する為であり, それがさらに進むと金属から化合物へ変わり性質も変化する。

老朽化とは,古くなり,役に立たなくなることであるが,化学反応によって別の化合物へ変化しているだけで,製品としては,役に立たなくり, 見た目も汚くなっいるのだけど,化学な目線で見ると老朽化とは単なる化学変化である。 物質Aが物質ABへ新しく生まれ変わったともいえる,また逆も同様である。

何かが,古くなるときは,必ずなにかが新しく生まれる。古くても,ボロボロでも新しいのである。 化学的見方をすると老朽化とはまるで禅問答のように思えてくる。そしてそれはとても自然なことなのだろう。 化学とは人工的なイメージがあるが,非常に自然でそしてまた哲学的である。

化学的な見方で見ていくとこれは古い,これは新しいなどは人間的な見方で一方的な評価に過ぎないことがわかる。 人間の老化にしても,通常あまり良いイメージをもたれないかも知れないが,一番老化した状態は,一番新しい状態という解釈も出来る。

通常当たり前と思われる常識的な認識や解釈だけにとらわれることなく,化学な見方など別の視点から多角的に物事を認識できることはとても有意義である。

【白色林檎(ペンネーム)】

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