コラム

社員の化学日記 −第65話 「Drスランプ」−

社長からホームページの管理を任され,コラムの原稿についても「次はお前の番だ」「原稿はまだか」といつも偉そうに言っていたが, スランプに落ちてしまったようだ。

子供のころは感想文を書くことなどは大の苦手。文章を書くことより,いかに原稿用紙を穴埋めするかしか考えられなかった。

でも,大学,特に卒業研究以降から大学院まで研究生活を送っていた頃から,文章を書くこと自体苦手ではなくなった。

やがて,五十路(男の場合もこういうのか?)の足音が聞こえてくるようになった昨今,前にもまして文章を書くこと自体が楽しくも思えるようになった。

巷では家族に残す遺言として「エンディングノート」なるものがあるようだ。

こんなことまで意識したことはないが,本能として何かを書き残そうとしているのかもしれない。

それなのに何も浮かんでこない。考えれば考えるほど何も浮かばない。「無」である。

でも社長にまでエラそうに原稿を要求しているからには,自分だけ書かないわけにはいかない。ムムム・・・。

とりあえず,困ったときは時候の状況から・・・。

今年もあっという間にあと1ヶ月となった。まさに光陰矢の如し。

今年は10月まで夏のような日が続き,秋はほんのわずかに感じられただけですぐに冬になった。 そのためか,毎朝の通勤電車でもコートを羽織るなど冬服モードとなった人が急に増えた。

夏の満員電車では折角の冷房もあまり効かない。 そんな中,予期せず若い女性の隣に立ってしまい,押されるままに若い女性に密着しそうになって痴漢に間違われまいと身を翻すと,向いた方向におじさんの脂汗の浮いた頭皮がちょうど自分の鼻の高さに。

結果,女性に対する紳士的な態度をほめる自分と,それによって自分が置かれている現状をすこぶる後悔する自分が葛藤する・・・・・・おっと,いかん!

こんな下世話な内容では会社のホームページにはふさわしくないのでここで終わり!

と,化学らしい話題を思い出した。

寒くなってくると,光熱費がまたカサんでくる。そうすると我が家の”大蔵大臣”が眉間にシワを寄せながら家計簿を凝視している時間が増えてくる。

そういうときは,小生も娘もそっとその場を離れて近づかないようにしている。 なぜか?

”大蔵大臣”が掲げる経済政策「ヨメノミクス」は,当然,無駄な支出の削減であり,我々善良なる小市民への”補助金”がそのターゲットとなるからだ。

ある日,”大蔵大臣”が眉間にシワを寄せながら家計簿を見始めたので,警戒警報発令。 そそくさとその場を離れたが追いかけてきてこんなことを言い始めた。

「ウチのお風呂を沸かすのに必要なガスの量を計算できる?」

おや?いつもと違うぞ。こうなったらこちらの独壇場。実は我が家の”大蔵大臣”も理系出身ではあるが,所詮は「元」。 こちらは現役なので,主導権はこっちのもの。 中2生の娘も加わって計算大会が始まった。

  • 今時期の水道水の水温:10℃と仮定
  • 1回あたりの平均湯量:200Lと仮定(比重1として200kg)
  • 都市ガス1m3当たりの発生熱量:45MJ/m3(10,750kcal/m3,大阪ガスWebサイトより)
    •  ・・・「MJ」は「メガジュール」と読み,「M」は「1,000,000」を表す接頭詞。
         「J」は「cal(カロリー)」と同じくエネルギー(熱量)の単位で,「1cal=4.184J」である。

1gの水の温度を1℃あげるのに必要な熱量(エネルギー)は1calなので(これが「cal」という単位の定義),お風呂の温度は42℃に設定しているから,熱効率を80%ぐらいと仮定すると必要な熱量は

1cal×(42-10)℃×200,000÷80%=8,000,000cal(=8,000kcal)

よって,

 8,000(kcal)/10,750(kcal/m3)=0.744(m3

実際は追い炊きもするし,シャワーも使うので,入浴に使用するガス量はもっと多いはず。 そんなこんなで,とりあえず今回はこちらに矛先はまわってこず,ホッとひと安心。

本コラムの原稿も気が付けばこんな量になっていたので,ホッとしてこの辺でやめておこう。

【道修町博士(ペンネーム)】

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