コラム

社員の化学日記 −第175話 「素数セミ」−

昔よく見ていた海外ドラマの1シーンで、こんな場面がありました。

一人の社員がその会社の社長に、多額の負債を出してしまったとの連絡で、補填するための資金承認をお願いしていました。

その社長は変わった人で、その社員が必死に話しているにもかかわらず、聞く様子もなくハンバーガーのバンズに乗ったゴマをじっと見つめながら、ゴマ、ゴマ、とぼそぼそ話します。

ゴマについて気になるようで、いろんなバーガー屋からハンバーガーを買ってきて、全てのバンズの上にゴマが乗っているのを見た社長が、ゴマからセミの話をし始めます。

「すべてのハンバーガーの上にはゴマが乗っている。ゴマはハンバーガーになくてはならない存在だ。」

「世界でのゴマ生産三大国はミャンマー、ブラジル、インドネシアだ。」

「素数セミの大発生がミャンマー(13年に1度)とブラジル(17年に1度)起こるが、その年が重なる来年は221年に1度の災害がおこるため、作物に影響が出る。」

「インドネシアにはセミがいないから、災害は起こらない。インドネシアに注文が殺到するはずだから今のうちにインドネシアのゴマを買い占めよう!」

で、会社の負債を充分賄えるほどの資金を手に入れるというお話でした。

フィクションドラマですが、セミとゴマという一見関係性がないような話でもビジネスに繋げるという面白い話で印象に残っています。

さてこの素数セミですが、実在するそうで、周期セミとも呼ばれています。

13年周期と17年周期のセミが存在し、素数周期で大量発生します。 北アメリカだけに生息するらしく(ミャンマー、ブラジルには生息ないのでドラマの話は嘘となりますね)、日本には生息しておりません。

なぜ13年や17年周期でセミが大量発生するのか、この謎は昔から謎のままでした。 日本人の学者が発表した説(謎の解明?)によると、周期発生の理由は、希釈効果で説明できるとのこと。

希釈って聞くと薄めるってイメージですが、 希釈効果とは、群れで集まることで、捕食者に食べられるリスクが減り、配偶相手が見つかりやすい等の種の生存確率を上げる効果のことです。

イワシや羊が群れを作るのも、この希釈効果が本能的に備わっているためでしょう。

ある周期で大量発生することで子孫を残すことは理解できますが、なぜそれが素数周期なのか、解説を読んだのですが私の頭では理解できませんでした。 捕食者や外敵が大量発生する周期と被らないようにするため(例えば捕食者の大量発生の周期が5年だとしたら13年周期と被るのは65年に1回)という説もありましたが、しっくりきません。

どなたかご興味を持たれた方はご自身で調べて、いつか私にわかりやすく解説してください。お願いします。

素数セミはほかのセミよりも寿命が長く、これは最も長生きする昆虫の1つらしいです。

日本に生息するアブラゼミやクマゼミの一生は7年前後だそうです。7年間土の中で育ち、土から出て羽化した後、数週週間だけ地上で暮らします。

日本のセミの寿命も7年、という素数であることも周期セミと同じような理由があるのかもしれませんね。

【栗林】

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