コラム

社員の化学日記 −第155話 「無題」−

昨年からテレビのニュースはこれしかない。

緊急事態宣言を受けて休業中の近所の飲み屋さんの手書き看板メニューの片隅にはこう書かれていた…。

「コロナ、嫌いっ!」

落書きではなく、おそらく店主が書いたものと思われる。

好きな人間はないと思うが、特に飲食業界は「大嫌い」の方がほとんどであろう。飲食業界を狙い撃ちするかの如く自粛を強いる行政の方針も含め…。

飲食業界の売り上げが落ちれば、飲食店で消費されるはずの食品やお酒、飲料類の消費も落ち込み、関係会社への売り上げに直結する。

飲食業界以外の業界も影響は出始めている。 コロナが蔓延すれば、ヒトやモノの流れが当然制限される。

コロナが広がり始めた直後の話ではあるが、南ア共和国がロックダウン(都市封鎖)を実行し、それに伴い世界的産出量を誇る貴金属の鉱山も閉鎖。 一時的ではあったが、白金、ロジウム、パラジウムといった貴金属の供給不安が世界中に広がり、高騰を始めていたロジウム、パラジウムの価格上昇に拍車をかける形となった。

日本は、その資源原料のほとんどを海外からの輸入に依存しているが、輸入品のほとんどは輸出国でのコロナ禍のため、港でのコンテナ不足によって予定通り日本に届かない、というのが通常であるらしい。

「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないが、物事思わぬところに影響が出るものらしい。

先日も国内の会社から弊社に午前中に入荷予定だった荷物の到着時間が遅れたことがあった。

原因を問い合わせると「コロナ禍の影響で重量物は午前着には届かない」と説明された。 その時は「そうか、ならば仕方ない」と思ったが、ふと、出荷品の集荷に来た運送会社のドライバーに聞いてみると、 「それ、コロナのせいにして逃げてるだけですよ」とのこと。

便数そのものが制限されている海外便ならばまだしも、国内輸送の場合は(年末年始、GWなどを除く)通常期ならばコロナ禍が原因で遅れることはあり得ない。 そのドライバー氏によれば、配送時のトラック荷台の荷物は当然重量物ほど下の方に荷積みされていることになるが、コンテナなどに固定されていると引き出すことができないので、 配送ルート上にあっても後回しになってしまう場合はあるとのこと。

でも、総重量は大きくともバラ積みであれば手前に引き出すことは可能なはずなので、単に配送ルートの都合で後回しにされただけでは?との同氏意見であった。

何でもコロナのせいにすれば許されると思われるのも困ったものである。

【道修町博士(ペンネーム)】

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