コラム

社員の化学日記 −第147話 「放射線への認識が変わった」−

《放射線ヤバイ》

改めてそのように考えるようになったのは、弊社の本棚に置かれている《朽ちていった命 NHK「東海村臨海事故」取材班》読んだからである。

東海村臨界事故については、過去に週刊誌に目を背けたくなるような写真が掲載されていたことぐらいしか記憶になく当時まだ学生で関心も薄かった。ぼんやりとしか危険を認識いなかった。

書籍を読むにつれて、放射線障害の身の毛のよだつ危険に今までの無知を恥じた。

まずは、放射線が人体に与える影響の怖さ驚いたこと、自然界にも放射線はあるしラジウム温泉など健康やがん治療のためにも使用されるため少量の放射線なら大丈夫と今までリスクを過小評価していた。

放射線を浴びると細胞が傷つくことで異常な細胞となり放射線障害が出る。造血機能の低下や白内障に死亡などetc…

放射線障害は放射線をどのくらい浴びたかが重要となる。一定量以上浴びると障害が起こる確定的影響とたくさん浴びると障害が起こる確率が上がる確率的影響がある。確定的影響とは線量が低いと障害は発生しないが、しきい線量(最低100mSv体の組織によって違う)を超えてくると確実に障害(脱毛、吐き気、不妊、死亡)が出ることをいう。当然線量が増えるほど障害も重くなっていく。そして確率的影響とは少量の線量であっても、放射線障害に至ってしまうことをいう。放射線量のしきい値は無く、異常な細胞が1個だとしても障害(生殖細胞に起こる遺伝的影響と発がん影響の2つ)が出る可能性がある。線量が増えると障害の出る確率が上がる。放射線の浴び方で症状の現れ方が違うのだ。

東海村臨界事故での被ばく者の放射線被ばく線量は8Sv以上、8Sv以上の放射線被ばくは死亡率100%だ。事故直後には嘔吐や意識を失うなどの急性障害がおきた。そして恐ろしいのが生命の設計図といわれる染色体がズタズタに砕け散っていたことだ。染色体がばらばら破壊されるということは、今後新しい細胞が作られないということ。この事実を知ったとき放射線被ばくの本当の怖さを知った気がした。病気になるとか、障害がでるとかそんなものじゃなくて、人間の根本を破壊してしまっている怖さ。被ばくから一か月後の写真では表皮が失われ赤黒く変色してしまっている。壊れた皮膚は再生されていない。昔見た、原爆での被ばく者そのもの写真だった。火傷で爛れていたと思っていた写真は、被ばくにより染色体が破壊され、日々体が朽ちてゆく過程の写真だった。そして染色体が破壊されている以上、細胞が再生されることはない。残酷過ぎる。

臨界事故が起きた背景には、事故を防ぐための作業手順を無視した違法な裏マニュアルが会社の承認を得ている、そして事故が起きたときはそれすらも無視されていた。 企業の都合だったのだろう本当に信じられない。

臨界事故は一度に多量に放射線を浴びたケースだが、被ばく量が少ない場合潜伏期間を経てがんなどの症状が発生する(確率的影響)。まさに「直ちには影響がない」だ。そして直ちに影響が無いがゆえに放射線リスクを過小評価してしまう。慣れてしまう。自然界にも放射線は飛んでいる、影響は無視できることなのかもしれない、しかしリスクを過小評価した認識が大きな事故を起こしてしまうのではないだろうか。

【白色林檎】

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