2.カスケード・キャニオン・トレイル
   
 (Cascade Canyon Trail)



 カスケード・キャニオン・トレイルは最高峰のグランド・ティトン(4197m)の直ぐ近くの谷を遡るもので、更に谷奥の分岐を左右に取ると、グランド・ティトン連峰の中心を通る長距離のトレッキングコースになります。今回は分岐を右に取りソリチュード湖(Lake Solitude 2968m)へのトレイルを途中まで進んだ。
トレイルの出発点はジェニー・レイク(Jenny Lake)のパーキング・ポイントになるが、ここから対岸まで15分~20分間隔でボート・シャトルが出ており、これに乗れば湖岸を歩く往復6.5kmの歩きを省略できる。
 (ジェニー・レイク)オーバールックから見るカスケード・キャニオン(中央の谷)
山は左からティーウィ―ノット・マウンテン(3756m)、マウント・オーウェン(3940m)、中央カスケード・キャニオンの谷を挟んで左から、ストーム・ポイント(3065m)、シンメトリー・スパイアー(3219m)湖はジェニー・レイク(2067m)
 歩いた日;2012年7月19日
 コース;
West Boat Dockー(13min)Bridgeー(5min)Hidden Fallsー(7min)Lookout(5min休み)ー(12min)Inspiration Pointー(13min)分岐ー(12min休み)ー(1h40min)Forks(10min休み)ー(1h15min)Glacier Lily Point(25min休み,Lunch)ー(1h)Forks(5min休み)ー(1h55min)Hidden Falls分岐(10min休み)ー(10min)West Boat Dock
合計時間:6h50min、総合計時間:8h
最高標高:約2650m、標高差:約580m
       


 カスケード・キャニオンを歩き、できれば更にソリチュード湖(Lake Solitude)へ行くノース・フォーク・トレイル(North Fork Trail)も歩いてみたいと、7時の始発のジェニー・レイク(Jenny Lake)を横断するボート・シャトルに間に合うよう朝早く宿を出た。
来る道々で次第に朝日に照らされるグランド・ティトン連峰を眺めながらジェニー・レイクの駐車場に6時40分頃に着いた。
駐車場から直ぐ近くイースト・ボート・ドック(East Boat Dock)のボート乗り場があり、往復料金1人$10を払う。切符は無く復路料金支払い済みの証明に手の甲にスタンプを押してくれる。帰りはこれを見せろということだ。
 桟橋に並ぶ。船は30人程度が乗れるほどの大きさだが、朝一番の船なので乗り残す客もなく定時に出発。水しぶきを上げて結構速く進む。対岸の正面にマウント・セント・ジョーン(Mt St John 3500m)などのゴツゴツとした岩山を見て10分少々で対岸のウェスト・ボート・ドック(West Baot Dock)に着く。
ボート・シャトル乗り場のイースト・ボート・ドック
ボート上から対岸を見る  ボート上から対岸の桟橋を見る
 背後はカスケード・キャニオンの北側にある山で、左からストーム・ポイント、 シンメトリー・スパイアー、
マウント・セント・ジョーン
背後の山はティーウィノット・マウンテン(左)とマウント・オーウェン(右)


ボートを下りて 早速歩き出した。先ずヒドゥン・フォール(Hidden Falls)に向かう。広い道を進むと直ぐに橋を渡る。川は谷を流れてきたカスケード・クリーク(Cscade Creek)で綺麗な水の流れだ。
 針葉樹林帯の中のゆるい登りを暫く進みインスピレーション・ポイント(Inspiration Point)への分岐に出、更に滝への道を取る。間もなく滝の音が聞こえ姿を現すが、見る場所から滝まで離れていてあまり迫力が感じられないのが残念。早々にインスピレーション・ポイントに向かう。  
 
 カスケード・クリークに架かる橋 ヒドゥン・フォール


岩の上の道になり登り勾配もきつくなるが、道は広く良く整備されている。折り返し点での展望が良く、ボートで渡ってきたジェニー・レイクが広がり、山側にはグランド・ティトンの岩山がせまって、次第に雄大さが増してくる。  
 ジェニー・レイクが見える 登る背後に岩峰が聳える
  中央にピークが見えるのがグランド・ティトン(4197m)、
その右はマウント・オーウェン(3940m)


更に登ると傾斜した岩棚に出る。湖を下に見ながら歩くが道幅が有り怖さを感じないで歩ける。この岩棚を過ぎると、パーと展望が広がりインスピレーション・ポイント の展望地に着く。眼下にジェニー・レイクが広がり、その向こうに映画「シェーン」のロケが行われたグランド・ティトンの広大な台地が横たわる。ここでの標高は約2200m、高く登った感じがしたが、歩き始めからまだ130mほどしか登っていない。
 岩棚の登り  インスピレーション・ポイントからジェニー・レイクを見下ろす


 インスピレーション・ポイントを過ぎると、いよいよカスケード・キャニオンのトレイルとなる。先ず谷の北側(右側)の岩山が目に入る。ジェー二―・レイクのボートから良く見えたストーム・ポイントの山とシンメトリー・スパイアーの山が遮るように立ち、谷の南側(左側)の直ぐ上部にはティーウィノット・マウンテンが聳え、正面にマウントオーウェンが威容を誇る。
トレイルは良く整備された穏やかな登りで、テンポよく歩ける。
 
 谷の北側の山、左がストーム・ポイント(3065m)
右端はシンメロリー・スパイアー(3219m)
谷の南側の山、左端がティーウィノット・マウンテン(3756m)、中央がマウント・オーウェン(3940m)



   少し進むと北側の岩峰がトレイルに覆いかぶさるような壁となって見え出す。丁度ストーム・ポイント(3065m)の真下を通る所で、写真では壁の高低差が大きいようには見えないが、700m程もの高さがある。
 
 見上げる北側(右手)の岩峰
左がストーム・ポイント(3065m)、右がシンメトリー・スパイアー(3219m)


   次いで、カスケード・キャニオンのクリーク(川)の中で、唯一流れが穏やかな場所に出る。流れがあるので水に映った景色はクリアーとまではいかないが、トレイルの中ではほっと一息つける所。
 
 カスケード・クリークの穏やかな流れ
(左の写真の山はマウント・オーウェン、右の写真の中央の山は3055mのピーク)


穏やかな流れを過ぎた後、今度は南側(左手)の山裾に滝を見ることができる。左のティーウィノット・マウンテンと右のマウント・オーウェンの間の急峻な谷の間から流れ落ちてきていて見ごたえのある景色です。

ここを過ぎると景色にさほどの変化がなくなり、谷合のゆるい登り勾配の道を唯ひたすら歩く。
 ティーウィノット・マウンテン(左)とマウント・オーウェン(右)の間に見える滝


 樹林帯を入ったり出たりしながら進むと谷下に遠ざかっていた谷川が近づき、谷川と山の姿が同時に見えるようになって、ようやく変化のある景色になったと思ったが、直ぐ林の中に入り視界が途絶えた。広場のような空間があって、そこに標識があり、カスケード・キャニオンの分岐点を示していた。標高は2533m、スタートから3時間弱かけて約470mほどを登ったに過ぎないので、全体が穏やかな登りだったということが分かる。
時計はまだ10時少し過ぎ。2人の体調も先ず先ずなので、休憩の後ノース・フォーク・トレイル(North Fork Trail)を歩くことにした。ソリチュード湖(Lake Solitude 2754m)へ向かうトレイルだが、結構遠いので、途中で引き返しても良いつもりで出発した。
 
 分岐の手前から、山はマウント・オーウェン  分岐からサウス・フォーク・トレイル方向を見る 
山は3055mのピーク
 分岐(Forks)の標識
 



   今まで西方向に歩いていたが、ノース・フォーク・トレイルに入って方向が北に変る。グランド・ティトン連峰の中心を歩いていることになる。
暫くは視界のない針葉樹林帯の中を歩き谷川を渡る橋に出て振り返ると、今まで良く見えなかったグランド・ティトン(4197m)がはっきりと確認できるようになる。
 橋の上から、
グランド・ティトン(4197m)の全体が見え出す
この辺りから林がまばらになり展望が開ける。谷は両側に3000mクラスの山並みが続いているが、歩いている所との標高差は400m程度しかないせいだろう、明るく広い感じで圧迫感がない。
 
 谷の前方 谷の左手前のピーク(2977m)


後ろを振り返り 景色を眺めながら進む。見えていた山が歩くに従い姿を変えるので変化があって楽しい。
もう一度橋を渡り、橋の上から振り返る。左にマウント・オーウェンを従えたグランド・ティトンの山が大きく聳え、その右肩にミドル・ティトンの姿も見え出す。カスケード・キャニオン・トレイルだけでは見ることができない景色で、ノース・フォーク・トレイルにまで踏み込んだ甲斐があった。
   
 振り返ると分岐の近くにあった3055mのピークが形を変え大きく見える 川をもう一度渡って振り返る
  山は、左マウント・オーウェン(3940m)、中央グランド・ティトン(4197m)、
右肩に少し見えるのはミドル・ティトン(3902m)


更に登ると、ガレ場が何か所か現れ、谷側のキャンプサイトの表示を通り過ぎる。振り向くと、谷は昔氷河が押し寄せて削り取った典型的なU字状になっている。そのU字の谷の中央にグランド・テートンがそそり立つ姿は雄大で素晴らしい。

ここで、大きな勘違いをしていた。正規の地図ではなくWebからA4でプリントしたカラーマップを持っていったのだが、等高線と川の流れが不鮮明で、ソリチュード湖(Lake Solitude)へのトレイルは最初の3/4くらい迄が上りで、後は下りと読み間違っていた。家に帰って地図を見直していて初めてソリチュード湖へのトレイルは全部上りが正解と初めて気が付いた。


谷は典型的なU字谷
 山は、左からティーウィノット・マウンテン(2756m)、マウント・オーウェン(3940m)、グランド・ティトン(4197m)、右肩ドル・ティトン(3902m)



 大きな 雪渓を超えた辺りから、一面のグレーシャー・リリーの花畑が現れた。日本のカタクリの花の仲間で色は真っ黄色、カナディアン・ロッキーのあちこちで見た懐かしい花でもり、歓声を上げる。一帯にはオダマキの花があり、高山の砂地に咲くモス・キャンピオンもある。他にも色々な花が咲いていて楽しませてくれた。
 もうそろそろ下りになるはずだが、と先を見てもまだまだ上りが続く。時計は11時半で時間に余裕はあるが、先がまだまだ長いようだし、ソリチュード湖迄行って帰りの上り返しを考えると、足の不安をおしてこれ以上進むのは止めておいた方が無難かなと判断した。
行きは全部上りで帰りは全て下りが正しいのだから、完全な思い違いをしてしまったわけだが、安全側への勘違いだったので本当に良かった。
 グレーシャー・リリーの花畑を進む  グレーシャー・リリー(Glacier Lily)

 オダマキ(Yellow Columbine) モス・キャンピオン(Moss Campion)


 グレーシャー・リリーのお花畑まで戻り、パンの昼食をとった。

下りは、ティトンの山を正面に見ての気持ちの良い歩きとなる。ガれ場も綺麗に整備されていて危ない所は殆どない。
帰りは正面に山を眺めて下る
山は、左からティーウィノット・マウンテン(2756m)、マウント・オーウェン(3940m)、グランド・ティトン(4197m)、右肩ドル・ティトン(3902m)



   途中に結構大きな残雪が有ったが、傾斜もゆるく下りでもスリップするような所はなかった。
正面にティトンの山を見ながらの下りは分岐前の針葉樹林帯に入る迄続いた。


ノース・フォーク・トレイルを登ってくるパーティーはさほど多くなかったが、カスケード・キャニオンに入ってからは、登ってくるパーティーが結構多くなった。

更に、登り始めのインスピレーション・ポイントには午後の3時少し前だったが、人だかりができ、岩場の登りは観光客で列をなしていた。ここは観光客に大人気のようだ。

雪渓を下る



   帰りのボートは2艘待っての乗船だったが、待ち時間は15分程度ですんだ。標高が2000mもある湖上のボートに風がドンドン当るが寒くない。ここでも日中の温度は高いようだ。


レイク・ソリチュードまで勘違いで行けなかったが、その途中まででも十分楽しめた。ここは是非カスケード・キャニオンの分岐を超えてノース・フォーク・トレイルまで足を延ばしたいコースです。
帰りのボートから