第2章 グリコアルブミンはいつの血糖を表すか?

2.2) グリコアルブミンと過去の血糖の関係:図形で説明

作成日:2018/8/30,最終更新日:2018/8/30

 前ページ(第2章 2.1)の解析でグリコアルブミンと血糖の関係が明らかになりましたが,グリコアルブミンとグルコースの結合過程を目で見るように説明することができます.本ページでは主に絵を使ってグリコアルブミンと血糖の関係を説明します.

図1.グリコアルブミンの生成と代謝

 図1はアルブミンおよびグリコアルブミンの生成と代謝を模式的に示したものです.図1では灰色の大きい丸がアルブミン,赤と緑の小さい丸がグルコース,アルブミンにグルコースが結合したものがグリコアルブミンを示しています.最初の状態がAですが,血中にはアルブミンと赤のグリコアルブミンが存在します.時間が経過するとBに移行しますが,Aの一部は代謝され,アルブミンと赤のグリコアルブミンの一部が血中から除去されます.一方,残ったアルブミンの一部にグルコースが結合し,新しい緑のグリコアルブミンが生成されます.また,これと同時に新しい糖化されていないアルブミンが血中に流入してきます.血中ではこのようなアルブミンとグリコアルブミンの生成と代謝が繰り返されています.

図2.グリコアルブミンと血糖値の関係

 グリコアルブミンと血糖値の関係を明らかにするため,時間を追ってグリコアルブミンを観察しましょう.図2にグリコアルブミンの生成と代謝を模式的に示します.左上のAが最初の状態を示します.ここからアルブミンの代謝半減期に相当する時間が経過した状態が図Bです.ここでは,半減期の間に赤丸で示す4個のグリコアルブミンが生成されると考えます.ここから更に半減期だけ時間が経過すると図Cになります.半減期だけ時間が経過していますから,アルブミンとグリコアルブミンの半数が代謝され,赤のグリコアルブミンは2個になっています.しかし,この間に新たに緑のグリコアルブミンが4個生成されています.ここから更に半減期だけ時間が経過すると図Dになります.ここでは,赤,緑のグリコアルブミンはそれぞれ半数が代謝され,残っているのはそれぞれ1個および2個になっています.しかし,ここでも新たに黄色のグリコアルブミンが4個生成されています.
 このDの状態でグリコアルブミンの数を数えると,血中には,赤のグリコアルブミンが1個,緑のグリコアルブミンが2個,黄色のグリコアルブミンが4個存在することになります.従って,グリコアルブミン値に最も寄与しているのは最近の血糖であり,古い時期の血糖ほど寄与率が小さくなることが分かります.また,半減期ごとにグリコアルブミンの1/2が代謝されることを考えると,過去の血糖の寄与率は時間とともに指数関数的に減少することが分かります.