居合道について

 まだ、始めて1年半少しですが、ものすごく面白くなり、どんどんのめりこんでいます。薩南 塩釜流という流派ですが、一般的には知られていない流派です。おそらく日本で唯一の実戦のための居合いで、戦国時代、実際に戦場で戦うための技を学んでいます。本当にたまたま、近くですばらしい先生、先輩に出会い、家族全員で2003年夏から始めました。
仕事が西洋の楽器を作るということで、西洋の古い文化、伝統はかなり勉強させていただきましたが、日本の古い伝統、文化については日本人でありながらそんなに知っているとはいえませんでした。子供にも、すばらしい先生がいれば何か日本の物を学ばせようと思っていたところ居合いに出会いました。
現在の宗家は36代目で、一子相伝で伝わっている流派でしたが36代宗家によって、一般に広めてもよいということで私たちも習うことが出来るようになったようです。(そのために、師範代が宗家に熱心に習わせて欲しいとお願いして叶ったと聞いています。師範代に感謝です。)
本当は、子供たちに習わせようと見学に行ったのですが、本当にす晴らしい先生、先輩方々だったので、私たちも習うことになりました。(一緒にやれば、子供達も続けてくれるのでは、と考えたこともあるのですが) 始めてまだ、1年半少しで、現在初段を頂いている段階なので、やっと、塩釜流の入り口に入りかけたところです。奥が深く、おぼろげに少し分かりかけた私が塩釜流のお話をさせていただくのはまだまだ、早いのですが、あくまで私が感じて、私が思っていることを書かせていただきます。公式のホームページではありませんので、勘違いなどもあると思いますが、その点、よろしくお願いいたします。

→ 居合道随想(09/3/29)


   居合いの動画(私が出ています)を2つほどYoutubeにupしていますので是非ともご覧ください。

(1)据え物斬り
(2)組み立て打ち(形より実戦に近い練習です。)


 

(1) 居合道とは
 まず、居合道についてあまりなじみのない方もいらっしゃると思いますので、少し説明を。
一般的には江戸時代に生まれ、発達したとされています。よく似た物に抜刀道というのがあり、刀を抜く瞬間に相手を切る技で、この抜刀術に刀を抜いてからの技も加えたものが、居合い道と言えますでしょうか。流派も沢山あり、現在も多くの方が練習をされています。詳しくは、他のホームページ(居合道で検索すると沢山出てきます)でご覧になってください。少しは説明させていただくと、大きく分けて、刀を持って、(真剣を使う場合が多いですが、模擬刀と言って刃が付いていない刀でやる場合もあります、特に初心者のうちは)形を演じることと、実際に真剣で藁、ござなどを切る据え物斬り(試斬と言う言い方もあるようです)の二つが一般的な居合い道で行われているものでしょう。

 

(2) 薩南 塩釜流  
 私の習っている居合い道です。名前から分かるように、薩摩、今の鹿児島県で伝わってきた流派です。塩釜流には居合いだけでなく、剣道、組み打ち(合気道のようなものです、戦場ではすきあれば刀で切るだけでなく、投げ飛ばすこともなんでもありでしたから。それもただ投げるだけでは、ダメージを与えることが出来ません。鎧、甲冑を着ている相手にダメージを与えるために、例えば、頭から落とすと鎧、甲冑の重さを利用して、即死させることも出来ます。また、体制を崩させて、切りつけることも出来ます。ちょうど、今のK−1のような総合格闘技のようなものでしょうか。刀を持った総合格闘技と言えますか。)
それに、居合いというと、イメージしやすい、形。(形だけの流派もあるようで、刀を持った日本舞踊に近い物、剣舞。また、映画などで見られる、殺陣などが近いでしょうか)そして、実際に、ござ等を切る、据え物斬り。木刀で、打ち合い、形から一歩、実戦に近い組み立て打ち。など総合して塩釜流なので、居合を習っていると言うより、塩釜流を習っているといったほうがよいでしょうか?字ばかりが続いてそろそろ読み疲れてきているのではないかと思いますので、このあたりで写真を見ていただきたいと思います。

 

photo0000.jpg 1枚目は、宗家が(少し若い頃ですが)据え物斬りをされている写真です。
(クリックすると拡大することが出来ます)
ござを巻いたものを、水につけてごみ,中に噛んでいる砂などを除いて使っています。写真も上手ですが、切った瞬間を写しています。切ったあと、刀が水平の位置で止まっています。それに、力が抜けているのがお分かりと思います。もちろん、ござは台の上に置いているだけです。

 

photo0002.jpg 2枚目は、普通に切っている写真ですが、足元に凄い物が落ちています。これは、真っ向切りと言って水平の台の上にござを水平に置き、それを正面からまっすぐに切っているのです。普通に切れば、ござに跳ね飛ばされ、切るどころではありません。また切っても、台に刀が刀が食い込んだり、折れたり、曲がったりと大変です。それを、宗家は、大根を切るように切られます。(実際に、刀が折れたり、曲がったりした、門下生がいたと聞いています)

 

photo0001.jpg さらに凄いのが、3枚目の写真です。
塩釜流の据え物切りの、一番の特徴が、連切りと言って、台の上にござを置いたものを4本から8本並べて、それを順番に切っていく技です。技が、高度になるに従って、本数も増え、間隔も広がります。この写真では、かなり長い、竹を切っています。それだけでなく、この時は、走りながら、切っているのです。それは、後ろに見える、竹を切って、すぐに、目の前の竹を切り、この写真の瞬間では、もうすでに、次の竹に向かうように、左足が前に出ています。刀で切る場合は、右足を前に出して切るのですが、切ってすぐ左足が出ていると言うことは、かなり、速く走って切っていると言う事になります。

 

長い文章のあとの写真はこのくらいで、また、塩釜流のお話をさせていただきます。据え物切り斬りの写真が出ましたので、実際の練習のときに見せていただく、宗家ならではの技について、少し書かせていただきます。ござをただ切ってしまうことは,稽古をすれば出来そうですが、宗家は、ござの真ん中で止めたり、ござの皮一枚残して切ったり、またござを直角に切って、真ん中で止めたりととても人間業でないことを簡単にされてしまいます。そしてもっと凄いのが、沢山並んでいるござを、最初の2本は、切りはなしてしまい、次の2本を真ん中で止めると言った、初心者の私でさえ難しいのが分かる技を本当に簡単にされてしまいます。もっとも居合いの極意は、体の力を抜くことにあるのですから、力が抜けて簡単に見えてしまうのでしょうが。
据え物切りの話はこのくらいにしておいて、塩釜流の話に戻ります。塩釜流は、戦国時代、実戦のための居合いと、書かせていただきました。刀と言うのは、イメージと違って、そんなに切れるものではありませんので、塩釜流には、突く技が多いです。(余談ですが、戦国時代は、戦に行く前に、わざわざ、砂に刀を突っ込んで、刃を切れない状態にして、戦場にいってたようです。映画などで見るように、刀を刃で受けると、刃が刀に食い込んでしまって、身動きが取れなくなってしまいます。その時に、ほかの敵から攻められると、切られていまうのです)ですから、塩釜流では、戦場で周りに敵が沢山いるという想定で練習しています。常に隙を見せない、攻めを忘れないように。形も、実戦から生まれた物なので、他の流派に比べると、洗練されていないかもしれませんが、攻めと気迫は充実していると思います。百聞は一見にしかずとか言いますが、ここで1万語説明するより、一度見ていただいたほうが理解していただけると思います。興味と時間がおありの方は、私のほうまで連絡下さい。

 

(3) 練習場所  
兵庫県丹波市柏原町東奥50  兵庫県立 柏原高校 体育館
(JR福知山線柏原駅より東北へ徒歩約5分、柏原駅までは、大阪駅から約1時間30分) 

 

(4) 練習時間  
毎週月曜日 午後7時から午後9時まで
(祭日は体育館が使えませんので休みです。第2週は基本的に剣道の日ですが、居合いもさせもらっていることが多いです) 

 

(5) その他  
宗家が、「私たちの塩釜流の稽古は1日で他の流派だったら1か月分に相当するほど内容が充実しているし濃い練習です。」と言われることがしばしばあります。本当に、1日練習すると、帰ってからノートをつけているのですが、ノートを付けるのに2時間以上かかったり、6ページ以上になることもあります。最初は体を使うより頭を使うことのほうが多く、(今でもそうかもしれませんが)これだけ沢山習ったことを頭でなく、体が覚えるように、頭で考えなくても体が出るように繰り返し練習するので、内容も充実しているのかもしれません。私も、夜遅くまで、仕事をしてから、深夜1時、2時に居合いの練習しているのですが、素振りを500本ほどやってから、形の練習、などをやっていると、真冬でも、からだはすぐ温かくなってきます。宗家は、毎日2500本ほど、素振りをされて、寝る前に、布団の上で、座って1000本ほど素振りをされていると聞いていますし(もちろん、一本一本チェックしながら)、また、私たちに稽古をつけるために、練習日の前には(2〜3日は)近くの神社で深夜まで練習されていると聞いています。なるべく多くのことを私たちに伝えたい、覚えてほしいとご自身も努力されているのが伝わってきては、私たちもがんばらねば、と思ってしまいます。こんな素晴らしい宗家と、また、同じように素晴らしい先輩方々と一緒に居合いを始めてみませんか?
あともう少し、居合いを始めるとこんな良い事がありますよといったことを。礼儀や挨拶がしっかり出来るといったこと、姿勢が良くなったり、体が作られたり(やりすぎると体を痛めることもありますが)と言う外面的なこともありますが、日本人として、古来より伝わっている、伝統が学べると言うことが大きいでしょうか?仕事柄、西洋の文化、音楽については、詳しいと思っているのですが、本当に日本のことは知りませんでした、(楽器についても、日本のお琴、三味線などについては、ほとんど知りませんし)そんな私にとって、やっと日本のことが頭だけでなく、体も含めて勉強できる、それが居合いではないかと思っています。
最後にこの間、宗家に見せていただいた技があまりにも人間離れの技なので、少し書かせていただいて終わりにします。
その技は。据え物斬りで、短くなったござをちょうど真ん中で切って止める技なのですが、その止める場所がござを置いてある台の上なのです。ちょうど真ん中間で切って、台の上でぴたりと止める。いくら台を見ても傷はなし。こんなことが人間に出来るのかなと、先輩と顔を見合せ、お互いに無言になってしまいました。(ござを真ん中まで切って、止めるという技は、先輩たちは練習されていますが)