居合道随想

 

(2009/3/29)

 前回の更新から一年半ほど経ってしまいました。その間に、2007年11月に6段を2008年3月には塩釜流を広めてよろしいという印可号を頂き、9月には7段位を頂きました。塩釜流では宗家が8段なので、宗家以外では7段が最高段位です。6段の試験は、試験までに、師範代から特訓を受け、宗家からも集中的にいろんな事を教わり、かなり必死で受験して合格しました。7段は逆になにもしておらず、普通に練習をしていました。そして据え物斬りをしているときに、急に今から試験をすると言われ、ござを何十本と斬った後でしたが、心が無になって何も考えずに技が出来ました。細かなことはそれまでに色々と教えていただいていましたが。ただ、この据え物斬りの前、半月ほど、毎日夜一本だけござを斬りなさいと言われていました。何本も斬るときは、斬っている内に技が決まってくる感じですが、1本だけというのは、ものすごく難しいです。それまでに、素振りを繰り返し、力を抜く、形をやって心を落ち着かせる、イメージトレーニングを繰り返して、一瞬で全ての技を出し切り、悔いのない斬り方をするわけですから、集中力が必要ですし、やり直しがきかないのです。これがとても、良い練習になりました。
 ここで斬ったござは、写真で分かるように、ござの中に、竹を入れたござです。竹は切ってから日が経つとどんどん堅くなるので、切ってから2日ほど経つと使うのはやめなさいと言うことでしたが、切ってから10日ほどは使っていました。さすが、2週間ほど経つとかなり堅くなっていたので、使わなくしましたが、竹だけを斬ってみると,とても簡単に斬れて、地面近くまで斬り下げてしまいました。そして、12月に他の流派で言うところの免許皆伝に近い印許号を頂きました。据え物斬りで頂きました。その試験は竹を細い物から、太い物に順番に斬っていき、それが斬れると、1年物2年物3年物と堅い物を斬っていって、それが斬れると45度に竹を固定して斬ります。細い物は斬りやすいのですが、固定しているところで折れてしまいます。太いのは固定しているところでは折れにくいのですが、特に先を斬るときは、固定しているところに大きな負担がかかりますので、これも難しい物です。いかに力を抜いて、スピードで斬れるかにかかっています。斬ろうと思って力が入ると絶対に斬れません。ござも初めて2本同時に斬りました。それも、2本を袈裟に斬って、すぐ逆袈裟でもう2本も斬ります。一息で。そして、2本斬って1本を斬ったり、いろんな事で印許号にふさわしいかどうか宗家が判断されます。1年ほどの間に六段、印可号、七段、印許号をいただきました。
 これだけ見ると簡単にとれる流派だと思われそうですが、主席師範代、師範代は25年ほどかかっていますので。それとこのHPを作っていて良かったと思ったことがありました。それはこのHPを見て、昨年は剣道を長年やられていた大学の先生とそのお子さん、長年合気道をやられていた小児科の先生、(柏原病院のお母さんたちの運動に賛同されて、岡山からこられたすばらしい先生です。)そして、今年に入ってから、この方も合気道をなさっているのですが、介護士の方と昨年と今年に入ってから4人の入門者がありました。みなさんとても熱心で武道の経験もあるので、めきめき上達されています。大学の先生と小児科の先生は1年経っていないのですが、2級合格されました。嬉しいことです。
 興味のある方はどうぞ気を使わずに、見学に来て下さい。厳しいけれど、温かい教室です。

 

(2007/8/16)

前回更新してから、約半年が経ちました。その間の大きなことといえば中伝剣をいただいたことがありました。
 塩釜流の中伝剣はあまり詳しく書けないかもしれませんが、よく書かせていただいているように硬いゴザを 5本から8本10本と途中で気を抜かず一息で斬ります。ただ、その斬りかたが斬った後切っ先が上を向いた 状態で止めるのです。ゴザを斬って、すぐに刀を止める事になります。最初は、止めないといけないという意識が強くて、 ゴザが斬れませんでした。また、今まで以上に、まっすぐ頭の上から、刀を下ろして斬らないといけないのです。そして、 斬る場所も切っ先、半分くらいの所、鍔に近い所と3箇所で斬れてなおかつ、切っ先が上を向いている事が条件です。 この斬り方は技のためでなく、例えば狭い室内で斬ると、普通の斬り方では後ろの壁にあたったり、柱などに斬りつけ食い込んでしまうのを防ぎます。又、戦場では切っ先が上を向いているので、隙を作ることなく次の相手に備える事が出来ます。普通に考えると、斬れるわけがない斬り方なのですが、体の使い方が分かれば斬れるようになります。ヒントは押し斬りでしょうか。
 私の家内も同じように、中伝剣をいただきました。宗家によると長い塩釜流の中で、女性で中伝剣を取ったのは初めてのことだと言われていました。中伝剣を取る取らないより、硬いゴザを一息で5本6本と斬れる女性はいないでしょうから。
 img015_2.jpg  この間も挌闘家の方が見学に来られ、実際に塩釜流の体の使い方を、宗家から教えていただいていました。パンチ、キックも古武道と言うより、塩釜流の体の使い方を知ればさらに強いものになるのを見せていただきました。ただ、居合いの形、ゴザを切るだけでなく、塩釜流の教えは 素晴らしいと言う事が良く分かりました。
 下の子供が剣道を始めました。剣道をやっている子供たちにも、居合いを見せて欲しいと言われています。居合いをしている者は 剣道をしたほうがよいでしょうし、剣道をされている方は、居合いもされた方がいいと思いますので、このような機会を増やして行きたいと思っています。
写真は古いですが、今年の1月3日に丹波市氷上町のいちのみや神社で撮ったものです。右から二番目が私です。宗家は一番左です。

 

 

 

(2007/1/27)

 前回更新させていただいてから、もう一年が経ってしまいました。
 昨年1月、初伝剣をいただいて、7月には1年半かかるといわれた4段をいただきました。3段に比べてとても難しい段位でした。さらに現在5段に向けて、諸先輩、 宗家に教えていただいて練習中です。4段と5段では、大人と子供との違いほど差があると言われましたが、本当に5段の技、気構え、攻めは4段とは比べ物にな らないほど難しく、また難しいだけに練習にも身が入ります。据え物斬りも、昨年1月からやっと始まったところですが、2月3月くらいまでは、一本のござを斬るのも難しく 〈乾いたござは本当に斬りにくいものです)道場で斬れたものが、家で斬るとぜんぜん斬れないという期間が長く続きました。切っ先に気を集め、丹田に力を入れて、 腰は浮かさずといった、習ったことをすべてに気をつけてやってもなかなか斬れませんでした。それが夏ころからは、連斬りに入り、続けて2本3本4本と斬るようになり、 斬り終わった短いござももっともっと短くなるまで、何本も何十本も切るようになりました。当然斬り方も変えて。そしてさらに難しい斬り方で。
 私のことはこれくらいにして、新しく塩釜流の居合いを始めた方々のことも紹介させていただきます。
 昨年春、私のHPをご覧になって、還暦を迎えられた方が入門されました。少林寺拳法をやられていたということで、姿勢もよく力もあり、秋には私が拵えをした脇差で 据え物を始められました。(この脇差は始めて柄巻きやりました。これで研ぎから、拵え、柄巻きとすべて出来るようになりました。)そして12月には自分の刀を求められ、 据え物をやっておられます。
 秋には私と同い年の女性も入ってこられて、さらに1ヶ月遅れで彼女のお嬢さんも入ってこられました。今までに日本舞踊をやられていたということで、体の使い方が分か っておられるのでものすごく進歩が早く、このまま続けてくだされば素晴らしい技を身につけられると思います。お嬢さんのほうも、スポーツをやっておられたので姿勢もよく、 またまた、ものすごいスピードで上達されています。女性の歳を言うのはいけないことなのですが、団塊の世代はやはりパワーがあるのでしょうか?(もちろん、お嬢さんは 若い方ですが。)
 次回の更新はもっと早くやって、塩釜流のことをもっと知っていただくようにします。

とここまで書いて、日が経ってしまい内容が変わってきました。
1月3日に丹波市氷上町にある、いちのみや神社で奉納した際に5段の試験を受け合格しました。始めてから3年半ほどで5段を頂いたのですが、これだけを見ると簡単に 早く取れる流派だと思われるかも知れませんが、普通1年半で次の段位を受ける資格がいただけるところを特例として半年でいただけることが出来ましたのでこんなに早く 5段を頂くことになりました。 もっと上の段位の技があるのに、低い段位のままだと業がそれ以上伸びないということで特例を設けさせているとのことです。 江戸時代には5年で師範代になった人もいると聞いていますし。〈もちろん、それだけの努力はしないといけないのですが。)
 ここでまた1月3日に宗家からすごい技を見せていただいたので報告させていただきます。
以前、昔の剣豪も出来なかったという、ござの1枚だけを切る技を見せていただきましたが今回はその進化系で竹の皮一枚だけを切る技です。 硬い竹の皮に刀の刃を少しだけ食い込ませて、まっすぐ切り下ろし、刀を少し回して切り取るのです。それを一瞬のうちにするのです。 本当に人間業でない技がどんどん出てきます。最近思うのですが、楽器を弾くのも、居合いも同じだなとよく思います。 ピアノも、チェンバロも、ギターも、リュートも、ガンバも。音を出す瞬間まで、力を抜いていて音を出す瞬間だけ、力を入れて音が出ればすぐに、 というかその瞬間に力を抜かないといけないのです。居合いも、斬る瞬間まで力を抜いて〈特に右手は)斬る瞬間だけ力を入れて、切れたらすぐに力を抜く。 楽器の場合は音が伸びていかないし、音がつぶれてしまいます。居合いの場合は次の攻めが出来ないのです。据え物で斬るとき以外も、普段の素振りでも振って 振り下ろしたときに力を抜きます。私たちの塩釜流は戦場で戦うための実践の流派なので、隙を作らずいつも責められるようにしないといけないので、 斬った後も力を抜くことが大切です。よく宗家は斬ったあとに、刀を180度ひっくり返して、刃を上に向けることをされます。これも力が抜けないと出来ない技です。
このような素晴らしい技を、私たちだけで独占するのはもったいないと考えることがあります。もし、興味のある方がおられましたら、見学でも結構ですし、出かけて技を 披露させていただくことが出来ればと思うことがあります。居合いについては、いくらでも書くことがあって、本当はもっと頻繁に更新しないといけないのですが、 また時間があるときに更新させていただきます。次回をお楽しみに。

 

 

(2006/1/17)
 前回書かせていただいたことから後に起こったことを書かせていただきます。これからも同じように何かあれば書かせていただこうと思っています。居合いの更新をしないといけないと思っているうちに半年以上経ってしまいました。この間に沢山のことがありました。

 まず4月に私と奥さんが2段位を頂きました。それで特例なのですが少年部の指導員の資格も取らせていただきました。12月には3段位を頂き、これも特例ですが一般の指導員の資格を頂きました。今年1月には初伝剣の免状を頂きました。ものすごいスピードで進んでいて、自分でも段位、資格に見合った技を身につけねばならないと思っています。

 昨年は7月に丹波市にある老人ホームで、居合いの演舞をさせていただきました。
 写真は子供たちの型、中学生の組立打ち、それに宗家と師範代の組立打ちです。
img0001.jpg img0002.jpg img0003.jpg

 最後に、宗家が斬られたござの写真です。
img0004.jpg

8月には、これも丹波市青垣町で、夏祭りで演舞をさせていただきました。(写真を撮る事が出来ませんでしたので、写真はありません)写真をあらてめて見て、わずか半年ですが、子供たちも成長しているのがよく分かります。

img0000.jpg  今まで師範代や宗家に刀をお借りして、据え物斬りをさせていただいていたのですが、12月にやっと刀が手に入りました。刀身は篠山今田の藤井刀匠に作っていただき、鞘、柄(鍔も、藤井刀匠に素材を折り返し鍛錬で作っていただき、自分で糸鋸で切って作りました。)といったこしらえは自分でしました。研ぎも自分で夜なべをしてやってみました。(何十年もやっている研ぎ師と同じ事は出来ませんので、自分なりの方法でやりました。美術刀ではありませんので、普段の刃物を研いでいるようにやってみました。)据え物きりの日に間に合わせようと鞘の塗りも一回だけでしたが、これで良かったと思います。今回は、柄巻きは専門家に任せましたが、次回からは自分でやってみるつもりです。(本など見てある程度分かっていたのですが、インターネットのおかげで、よく分かるHPがありましたので)

 据え物斬りは本当に難しいです。柔らかいござなら(何日も水につけたような)簡単ですが、乾いたござは切っ先の攻め、姿勢、脱力、間合い、腰の安定、目線、足の踏ん張り、右手左手の使い方、刀の何処で斬るか、もちろん刃筋を通すこと、斬った後の刀を止めることすべてが出来ていなくては斬れません。まだ1本2本を普通に斬っているだけなのですが、塩釜流は4つの流派の切り方が出来ないとだめで、一つの流派の切り方が出来ても次の流派の切り方になると、(一つの流派の斬り方が、完全に身に付いてしまうと、それだけ)斬れなくなり、長いスランプが続くそうです。それを次々克服していかないといけないと聞いています。
それと、段位によって斬り方が全然違うのです。4段の方が4段位の斬り方で、スパスパ簡単に斬っていても(連斬りといって7,8本のござを走って斬るなどものすごい技なども出来る方が)5段、6段の斬り方を試しにやってみると、全然斬れないのです。ちょっと見るとその難しさが分からないのですが、段位が違うとすべてにおいて違うのです。私は3段まで早くとらせていただきましたが、4段は1年半くらいはかかりそうです。さらに、4段から5段はもっと難しくなるという話を聞いています。

 最後に、宗家に昨年暮れ又ものすごい技を見せていただきました。ござの皮を一枚残して切るというのは何度も見せていただきましたが(これでも、昔の剣豪でも出来なかったことのようです)今回は、ござ一枚だけを斬る技です。宗家の刀は刃引きといって、刃を斬れない状態にしています。刃をゆびでいくらさわっても斬れない刀です。その刀で幅3センチくらい長さ50センチくらいのござを一枚だけ斬ってしまうのです。相変わらずすごい技がいくらでも出てきます。宗家に見せていただいたござの半分に切ってそこで止める技は、師範代たちが今練習されています。

 居合いについては、書くことが山のようにありますが、又書かせていただきます。そうそう、居合いのノートが4冊目になりました。