原発企業から審査組織のメンバーに1億円

ゆがんだ原発行政の背景 政界にも原発マネー

 本来、原子力の問題に中立的な立場から意見を述べるべき審査組織のメンバーたちが、原発推進企業からの寄付をもらっている実態が明らかになりました。

 内閣府の原子力安全委員会や原子力委員会、経済産業省原子力安全・保安院の委員や審査委員として、中立的な立場で原子力行政に意見を述べる立場にある大学教授ら24人が、原子力関連の企業・団体から2006年度〜10年度の5年間(一部は11年度分も含む)で計1億965万円の寄付を受けていました。

 寄付を受けた学者には、安全規制機関トップの原子力安全委員会・班目(まだらめ)春樹委員長をはじめ要職者が多数おり、原発マネーが日本の原子力の審査組織にまん延していることが浮き彫りになりました。(しんぶん赤旗が大学から情報公開請求した資料で判明)

 寄付を受けていたのは、原子力安全委員会や原子力委員会、原子力安全・保安院の意見聴取会の委員24人。寄付したのは、「原発利益共同体」の中核団体「日本原子力産業協会」(原産協会)に加入する三菱重工業など24企業・団体です。

 こうした寄付は、企業や団体などから「研究助成」名目で大学を経由して、指定した教授らに届く仕組み。

 原子力安全委員会(5人)では、班目委員長が委員就任前の2009年度まで原子炉メーカー三菱重工業から400万円を受領。代谷(しろや)誠治委員も、2団体から計320万円を受けていました。

 さらに同委員会内に設けられた二つの専門審査会では、12委員が寄付を受けていました。

 このうち岩田修一委員(東京大学大学院教授)には、核燃料の調達をする三菱商事や日本核燃料開発など3社から計480万円、酒井信介委員(同)には原子炉メーカーの日立製作所など4社から計370万円の寄付。室蘭工業大学大学院教授の岸徳光委員には、北海道電力とグループ企業の北電総合設計が計950万円を寄付しています。

 原子力委員会で、東京電力福島第1原発事故後の原子力政策の基本方針を話し合う会議の委員3人にも計1989万円の寄付が。プルサーマル導入をめぐって各地の国主催のシンポジウムで、安全性を強調していた山名(やまな)元(はじむ)京都大原子炉実験所教授は、原産協会の地方組織、関西原子力懇談会や東北原子力懇談会などから寄付を受けていました。

 また原子力安全・保安院内に置かれた小委員会や意見聴取会の委員14人にも寄付がありました。

 業界から寄付を受けた委員には、委員を兼任したり、会議の座長を務めるなど、要職者が目立ちます。

 寄付する側では、三菱重工業が2267万円と最多。原産協会が1504万円と続きます。

政界も原発マネー汚染

 同じく原子力行政と利害関係が深い電力会社など“原発利益共同体”から自民党と民主党に2010年だけでも総額約6億円の原発マネーが流れています。

主な委員への寄付
委員会名 委員名 寄付した企業、団体
原子力安全委員会 斑目春樹委員長(元東京大教授) 三菱重工業400万円(06〜09年度)
代谷誠治委員(元京都大原子炉実験所所長) 関西原子力懇談会、原子燃料工業、計320万円(06〜08年度)
同専門審査会 岩田修一(東京大大学院教授) 三菱商事、日本核燃料開発、日立金属、計480万円(08〜09年度)
酒井信介(同上) 日立、日立GEニュークリアエナジーなど4社、計370万円(06〜10年度)
岸徳光(室蘭工業大大学院教授) 北電、北電総合設計、計950万円(07〜10年度)
原子力委員会
新大綱策定会議
山名元(京都大原子炉実験所教授) 関西原子力懇談会、東北原子力懇談会、日立GEニュークリアエナジー、計615万円(06〜10年度)
山口彰(大阪大大学院教授、意見聴取会委員も) 原子力エンジニアリング、日本原電、原産協会、三菱重工業、計974万円(06〜11年度)
田中知(東京大大学院教授、意見聴取会委員も) 日立、日立GEニュークリアエナジー、電源開発、計400万円(06〜10年度)
原子力安全・保安院意見聴取会 飯井俊行(福井大大学院教授、福井県安全専門委員も) 三菱重工業、日本原子力発電、計850万円(06〜11年度)
岡本孝司(東京大大学院教授) 三菱重工業200万円(09、10年度)
前川宏一(東京大大学院教授) 東電設計、大成建設、計849万円(06〜10年度)

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