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パイオニア M-22のの修理とFET化

その1 ブツブツノイズ

もう30年ぐらい前になるかと思うのですが、オーディオ好きの友人からパイオニアのM-22を安く譲ってもらいました。

M22全体像
力強いのにとげとげしない音質を気に入ってマルチアンプの低い方で使っていましたが、最近、なんかブツブツとノイズが入るようになりました。
ネットを調べてみたら、このアンプの修理記録が色々出てきます。これなら私でも何とかなりそうです。
まずは分解。基板は左右2枚あり、

一方にはアンプ部、安定化電源部、保護回路部が区分けされており、
もう一方にはアンプ部、安定化電源部、出力段用整流回路が乗っているようです。
基板からは大量のコネクタで本体各部に繋がっています。
m22裏側

回路構成の詳しいことは分からないので、いちばん経年劣化しているであろう電解コンデンサーを全て交換することにしました。
とにかく基板上の全ての電解コンデンサーの容量と耐圧を洗い出し、同等の容量、一段上の耐圧の電解コンデンサーを通販で購入し付け替えました。
コンデンサ交換後
チューブラ型は適当なのがないし、値段も高いので、基板に穴開けて、裏にジャンパー線通して普及型に置き換えました。
ジャンパ線

パワートランジスタ用電源の整流回路の基板部が黒く焦げています。これは手を入れた方がよさそうです。
整流部
幸い基板自体に支障はないようです。
30D2というダイオードが使われていますが、もう廃版みたいです。データシートを調べて、通販で買えるファーストリカバリのER504なら十分余裕で使えそうです。
セラミックコンデンサも同容量のが見つからないので比較的耐熱性の良いフィルムコンデンサに変えました。

ダイオードの温度が上がらないように、アルミ板とエポキシ接着剤で放熱版を取り付けて、ダイオードも基板から浮かして取り付けました。
整流部1整流部2

コンデンサーはスペースがなくなったので、基板の裏に付けました。
ノイズ防止コンデンサー

出力のDC調整して修繕終了。音質が変わったかは分かりませんが、機嫌よく鳴ってくれていました。

その2 また壊れた。

数日後、音が鳴らなくなりました。遅延リレーのカチッが聞こえないので、保護回路が働いてるのでしょう。
裏ブタ開けてテスター用意して、スイッチON。あれ?正常に動く?なんで?
裏蓋閉めてスイッチON。鳴らない?リレーが動かない?


後で分かったのですが、オーバーヒート検出用のサーミスタ(PCTというらしい)の基板パターンへのハンダがきれいに剥がれてグラグラしており、接触が悪いときにオーバーヒート検出回路が作動していたようです。
そんなことは完全に想定外ですから、あせってあっちこっちの電圧を測り、半固定抵抗をいじっていた時のことです。
繋いでいたジャンクスピーカーがガリガリッと音を立てて、基板のどこかから小さい煙が立ち上りました
調整用の半固定抵抗がガリオームになっていて異常電流が流れたのでしょうか。慌てて電源を切り、しばし呆然としておりました
電源部の5Aヒューズが飛んでます。廃棄かな.... 

しかしこのアンプの左右独立強力電源、A級動作向きの巨大放熱器を捨てる気にはなりません。
何とかしてみよう! といってもアンプ理論なんぞは素人ですから、こういう時は困ります。
基板パターンを作図して、配線図を書いて、たくさんのコネクタがどこに繋がっているのかを調べます。
ネット検索していたらサービスマニュアルが出てきました。解析に大変参考になりました。

この自作資料を参考に、不要なコネクタを外して、順番に各部をチェック。

●まずは電源部が壊れていないか → 全て正常な電圧です。
●パワートランジスタは? → エミッタ・コレクタ間の抵抗をテスターで測ってみると2SA744と2SC1402が1個づつショートしてるようです。このトランジスタはもう売ってません。代替品を検討しなければ(泣)。それは後程。
●保護回路は? → 終段は外しているのにリレーが入りません。ここで初めて検出用のサーミスタのグラグラに気付いてハンダしましたが、リレーは作動しません。各検出部分からの信号は正常範囲のはずなのに。
仕方ないので保護回路部のトランジスタを一個づつ外して調べることにしました。
そこでhFE測定装置を作成。雑な作りですが...
hFE測定回路
調べたらスピーカー出力部のリレーを駆動する2SC1384が全く導通せず、その前の2SC945がショートしてました。
故障時に煙が上がったのはたぶんこのへんでしょう。どちらももう販売してません。まあスイッチ回路だから細かいこと考えずに似たような規格ならいいだろうと、手持ち品で代用しました。
2SC1384 → TTC004B  2SC945 → 2SC1815
ttc004b 2sc1815
ちゃんと動作しました。修理完了。
●ついでに、アンプ基板上のトランジスタも全て外して正常動作してるか調べてみます。→ 全て正常でした。
データシートも見つからないトランジスタがいくつかあります。幸い1984年版のトランジスタ規格表を持っていたので、hFE等に異常がないか調べることができました。


あと、基板上で手入れするところは...
●まずはガリオームになっていた半固定抵抗。
立型でないと組み立ててから調整出来ないので、普通のにエポキシパテで台座を作り改造しました。
半固定抵抗
●取り付けて、終段手前のプッシュプルの中点電位を調整すると回し切ったところでやっと数十mVになります。気持ち悪いので中点電位調整部の抵抗を560Ωから670Ωに変えて、半固定抵抗の範囲内で0Vがとれるようにしました。
オフセット回路図

その3 終段のFET化

さて、終段のトランジスタをどうしましょうか。
金属のキャンタイプでなくても、プラスチックモールドでもいいから、オリジナルに近い規格で安いのがないかと探しました。プッシュプルなので多めに買って選別しなければならないと思いますので、安いことは必須です。
いろいろ調べましたが、みんなhFEが大きいですね。そのまんま置き換えると電流が流れすぎそうです。
それに某通販サイトのは選別後のものを売っておりペアが揃えにくいのでは?てなネット記事もあります。
この際FETでもいいけど、と思って探してたら、2SJ162と2SK1058というMOSFETが目に止まりました。これって、むかし作っていまだ現役のFETアンプの2SJ49と2SK134とそっくりな特性で、プラスチックモールドになっただけみたいなもののようです。
MOSFET
これなら保守用として余分に買っても損はないし、MOSFETはバイポーラよりコンプリが組みやすいと聞きますし、熱暴走の心配も減ります。
で、8本づつ買って測定してみました。
Vdd=9V、Vgs=1.5Vでドレイン電流を測ると

2SK1058 421mA, 418mA, 411mA, 411mA, 409mA, 408mA, 408mA, 404mA
2SJ162 386mA, 385mA, 382mA, 380mA, 378mA, 377mA, 376mA, 368mA
コンプリペアの許容範囲がどれくらいか知りませんが、買い足しても一緒だと思うので、差の小さい4ペアで組みます。
次に回路をどうするか?
私、ネット学だけの素人なので、回路設計なんてとんでもない。けど、やってみます。
まずは単純にパワートランジスタをMOSFETに置き換えてみます
前段の2SD356と2SB526のエミッタには約±1V出ているので、そのまま行けるのでは
fet直結1回路図  fet直結2回路図
結果、出力端子に12V位出てきます! ゲートにもそんな電圧が!! 即SW OFF。 FETは? 無事でした。
なぜだろう?分からない。分からないけど、即あきらめました。
図書館でアンプ製作の本をいろいろ借りてきて、気づいたことは、発振防止のためにゲートには抵抗を入れるものらしい。
(常識らしい)
もしかして発振していた? でも後の祭り、すでに次の案に取り掛かっていました。
抵抗でゲートのバイアスを作って、前段のプッシュプルの信号を乗せます。
抵抗でバイアス回路図
素人にとって、シンプルで落ち着く回路です。簡易発振器で調べたら、ちゃんと信号が出てます。
しかしバイアス回路の安定性はいまいちらしいです。

そこで、2SC2240でバイアス回路を組んで、10YG201Cという古い2mAの定電流ダイオードで挟みました。
この定電流ダイオード古すぎてデータがありません。昔±40Vで使ったと思うので、多分大丈夫?
図書館で借りた本ではJ-FETで定電流にしていましたが、10YG201Cの手持ちがたくさんあったので、特性の揃ったものをペアで使いました。
前段からの出力もバイアスの片方につなげばいいらしい。
トランジスタバイアス回路1

で、やってみたらスピーカー出力が0Vになりません。2つの定電流ダイオードの差は0.02mA以内で問題ないと思うのですが。
本のとおりにはいかないですね。
カップリングコンデンサー挟めばいいかもしれませんが、せっかく入力以外コンデンサーレスなのに、いまさら入れたくはありません。
試しに抵抗を挟んでバイアス両端に信号を分けてみました。バイアス回路への影響は?とかよく分かりませんが、結果うまくいきました。
トランジスタバイアス回路図2
これで行きます。

あとは負帰還量ですが、オリジナルは15.4KΩと1kΩのアースでゲインを約16倍にしているようです。終段無帰還でもいいのですが、音が荒くなるとかいう説もあり、手持ちのオーディオ用抵抗の都合で、終段47kΩとその前27kΩとに分けて負帰還し、トータルで約16倍程度にしました。

結果、回路構成は次のとおりです。(全回路図載せたいけど、オリジナル部分は著作権かな)

本で勉強したところでは、MOSFETなら2段目の差動増幅から直接繋げそうですが、
繋ぎ変えも面倒だし、知識も伴っていないので、これでよしとします。


さて、実装です。
実はいままでは0.5Ωの終段ソース抵抗を外部に別接続にして回路を試していたのですが、オリジナルの基板上の0.5Ωを使うように改造しなくてはなりません。これが結構大変でした。
まず、2SD356と2SB526のエミッタからパワートランジスタのベースにつながる抵抗を外します。なんと基板裏にパターンを切断して接続されていたので、簡単に外せました。
ダーリントン接続抵抗

負帰還用の幅広のパターンを切って、2SD356と2SB526のエミッタ抵抗端をFETのゲートに行く接続端子にジャンパー線でつなぎます。
出力用ジャンパ線
MOSFETは絶縁板を挟んで配線は直付けです。ショートしないように熱収縮チューブでカバーしました。
FETの取付
バイアス回路は小さい基板に組んで、巨大放熱器に取り付けました。エポキシパテから出ている線がトランジスタの足です。
バイアス回路
ほかに、負帰還抵抗や出力の発信防止回路等を基板裏でむりやり繋ぎ変えて一応完成。

ICL8038というファンクションジェネレーターICで大昔に作った発振器をジャンク箱から出してきて、
デジタルオシロキットで測定してみたら、増幅率は、16倍で、40kHzまでほとんどレベルは落ちていません。
ただし、この発振器、正弦波も方形波もかなりいい加減なもので、歪率など到底測れません。
オシロで見ると、20kHz方形波の立ち上がりの肩で少しリギングがみられますが、改善方法も分かりませんし、信号源の汚い方形波を割とそのまんま再現してくれいるのでよしとします。
まずはアイドル電流0.3Aで試運転。温度補正は効きすぎかもしれません。
アイドル電流時間経過

終段のバイアス回路のトランジスタは放熱器に密着させないでもいいみたいです。
放熱器は手で十分触れる程度なので、現在はアイドル電流を0.4Aに増やして使っています。
マルチアンプのウーファー用として使っており、FOSTEXのエッジレスウーファーSLE34W(現役です)は90dB/Wあるで力不足は感じません。
音質に問題はないようです。力強く歯切れよく鳴らしてくれてます。

私にとっては一大事業でしたが、分かっている方から見れば、何をやってるんだ?という改造かもしれません。
ご覧になった方、問題点をやさしく教えて下さると助かります。


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