鬼門

設計打ち合わせで、時々ですが、鬼門を気にされる方がおられます。できるだけ意に沿うようにしますが、そのことによってプランが悪くなるなら、反対もします。以前、”玄関を東北角にもってこない”と”建物の形を凸凹させたらだめ”と言われましたことがあります。後者の方は無理なくできましたが、前者を設計に取り入れると、プランが悪くなる、つまり、日常生活に必要な通風採光にとって良くないように思いました。そのため、玄関は北東のままで、玄関ポーチに3mくらいの壁をたてたらどうかというと、OKという返事が出ました。施主が鬼門に詳しい人に相談すると、壁が北東の風をさえぎることができる、つまり、玄関は北東に向いていない、ということになるらしいのです。外観的にも、その壁がアクセントになり、また、プランを悪くすることはなかったのでよかったですが、建ぺい率、容積率ギリギリ、2台分の駐車スペースということが当たり前になってきた街中の宅地では、このように鬼門との共存は難しくなっているのではないでしょうか。また、鬼門を決して軽んじるつもりはありませんが、もっと優先して解決しなければならないことが他にたくさんあります。たとえば、我が家を建てるときに古家付きの土地を購入したのですが、その古家は、どうやら鬼門を意識して、玄関を配置しているようでした。しかし、採光、通風、広がりはなく、鬼門はセーフでも、プランニングはアウトという印象でした。南間口の広い土地ならともかく、クセのある場合、鬼門に忠実でありすぎると日常的に大事なものがこぼれ落ちることがあります。そのことが最も、「鬼門」なのではないでしょうか?

2006年12月11日