稲木 昭子・沖田 知子 著
『アリスの英語−不思議の国のことば学』
夏のテムズ河遊びの時間すさびに、少女たちに求められるまま語り出されたのが、『不思議の国のアリス』のそもそもの始まりです。その夏の日の輝かしい光は、百年以上を経た今も色あせず、私たちの心を照らしてくれています。単に子供だけでなく、大人も限りなく心のひかれる、この物語の魅力とはいったいなんでしょう。はからずも、物語の最後はアリスのお姉さんの想いで結ばれています。アリスから不思議の国の夢物語を聞いたお姉さんは、大人になっても、アリスは子供の心を忘れずにいるだろうと想像します。
ところが、ひとたびこの物語をひもとくと、その夢物語は、甘美でやさしいものというより、一筋縄ではいきません。物語のそこかしこに、作者キャロルの「罠」がしかけられています。とくに、原書で読むとなると、まず英語が立ちはだかります。『不思議の国のアリス』はさまざまな翻訳で紹介されていますが、言葉遊びをその魅力の1つと考えると、やはり原書でなければ味わえない点が多いと言えましょう。そこで、この物語をこれから英語で読もうとする人たち、そしてアリスのファンの人たちへのささやかなお手伝いができればと本書を思い立ったわけです。
さあ、『不思議の国のアリス』に、キャロルに、そして英語に挑戦してみましょう。
|