アリスの英語 2−鏡の国のことば学

◆<鏡>と<チェス・ゲーム>という2つのモチーフを手がかりに
著者キャロルの仕掛ける一層凝った言葉遊びを味わうために。


   

稲木 昭子・沖田 知子 著

『アリスの英語 2―鏡の国のことば学』

 ルイス・キャロルは、『不思議の国のアリス』の出版後6年ほどたってようやく、第2作の『鏡の国のアリス』を上梓しました。これは、即興的に出来上がった前作とは異なり、最初から出版を意識して練り上げたものです。幼い頃から並外れた言語遊戯癖をもっていたキャロルが凝りに凝った作品ですので、ここではたいへん複雑でそしてcuriousな言葉の世界が展開されています。たとえば、単なる言葉遊びや論理遊びを散発に終わらせず、有機的にエピソード仕立てにしたり、さらにそれをふまえた新たな遊びが繰り広げられているのです。その意味で、前作に比べてやや地味で取っ付きにくい感すらありますが、それだけに知的好奇心を刺激し読みごたえのあるものといえます。本書は、この『鏡の国のアリス』を言語学的な観点から読み解こうと試みたものです。

アリスの英語2 構成は、大きく「鏡の国の鍵」と「センスを映してナンセンス」の2つのパートに分かれています。まず、鏡の国を読み解く鍵となる2つのモチーフである鏡とチェスが、物語全般でどのように受け継がれ、そしてまた反映されているかを概観します。さらに、鏡に〈見える〉と実際に〈ある〉とのずれが、言葉や論理にも微妙に映し出されて、センスがあるように見えてもナンセンス、ナンセンスのように見えてもセンスがあるというような、おかしな事態を呈するようすを取りあげます。ここでは、なるべく有機的に遊びが増幅されていくさまを捉えられるように、また話の流れをそがないように心がけて、キャロル独自のことばの世界に取り組みます。この世界は、言葉そのものに注意を払えばおのずと明らかになるはずと、言葉を手がかりに、これまで不思議の国の陰に隠れがちであった鏡の国の謎解きに挑戦したものです。

研究社 ISBN327-45102-9 C1098  


アリスと鏡(表)   アリスと鏡(裏)

鏡を通り抜けて

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