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         デフレ・インフレの一般理論
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2007年10月11日 名実GDPの成長率から見る日本の経済失政

名目GDPの成長率と実質GDPの成長率
から見る小泉政権下の経済政策の大罪

デフレの所得線(45度線以下の角度をもつ生産量より資金が大幅に減少した所得線)は、
直観的にみても資金の増加よりも生産量の増加の方が多いことを示しています。それは、名目GDPの成長率が実質GDPの成長率を下回ることからあきらかです。
名目GDPは販売量ベースであり、実質GDPは生産量ベースであるからです。売上額の増加より生産量の増加の方が大きいのです。
この場合価格を安くして生産量を増やしたと見ることができます。本来の付加価値に対して不当に低い値段で販売しているのです。それ故付加価値の総体である名目所得が下がることになり、賃金も当然下がることになります。

このような所得線の角度の45度より下がった状態での生産増は、無理矢理の成長といえます。

本来の成長ならば生産量の増加に対して、付加価値が正当な価格で評価され、貨幣と生産量の関係を1対1とすると45度線を描きます。生産量1の付加価値に対して資金量が1付けることができます。

しかしデフレの場合、資金が生産量より大幅に少なく
その比率が変わっているため、所得線が45度以下の角度になります。
それは生産量の増加に対して付加価値が少ない価格で評価されることを示しています。
このため生産した労働(付加価値)に対して価格による評価が少なくなり、所得が少なくなるのです。正当な労働価値より少ない賃金が支払われることになります。
このため労働の生産性が低く評価されがちです。

デフレの所得線は四十五度線以下の角度を持ち貯蓄がない状態を表しています。これは資金が生産量より少ない状態を表すものです。
資金の増加よりも常に生産量の増加が大きいので生産物がどんどん送り込まれるため、付加価値に対する価格による評価が下がらざる負えない状況です。

現在の石油価格の上昇によって生産物の価格がたとえ上がろうとも、利鞘が増えない状況を言っているのであり、生産費用プラス利鞘の価格全体の価格の上昇を言っているのではありません。現在石油価格の上昇から生産者物価や消費者物価が上がろうとしています。
誤解されては困るのは、石油などの必要な重要物資の値が上がると、価格自体は上昇します。

しかし企業がそれに載せる利鞘すなわち付加価値は、その時の経済状態により変わります。デフレのように資金が不足していると利鞘が十分載せられず企業は自らの付加価値以下の価格で販売することになります。利鞘が下がるということです。石油価格の上昇は生産者にも消費者にも日本の場合同じように費用がかかりそれに資金が奪われます。そして物価が上がっても十分に儲けが取れず、企業が負担することになります。それが利益減になり、国民所得を下げます。
これが付加価値の総体である名目GDPを下げることになります。消費者物価が上がっても名目GDPが下がれば、デフレが続いているという意味です。これは企業が利鞘を十分取れない状況を表わしており石油上昇分のコストを転嫁できないことを表しています。
利鞘が資金減少のため十分取れなければ、企業利益が減り、賃金の減少に直結します。

最近の統計ではどういう分けか名目GDPを軽視し十分に検討されていません。政府がなぜこれを重要視しないのか不思議です。
実質GDPにだけ固執し資金を消費者側に増やす努力を怠ると、生産力が増加するにつれ価格が減少し、または付加価値が減少していきます。
現政府の間違いはここにあります。

デフレやインフレは、ややもすると価格の上昇下降だけを捕らえて理解している人たちが多いのですが、飽くまでも生産能力に対して資金が大幅に多いか、著しく少ないかの状態を意味します。
それ故デフレの状態で、一部の生産物の価格が上昇しても全体の資金が増えなければデフレが続いているわけです。
結局石油製品が連鎖的に上昇しても全体の資金量が増えていなければ、付加価値を削って調整せざる負えなくなります。
このことからデフレが最も深刻な場面である、デフレスパイラルという所得線の角度が下降する過程おいて、継続的に続く資金の減少は、企業の販売競争を激化させ、おのずと自らの付加価値以下の価格で販売し生産量で売上を補おうと行動することになります。
これが、付加価値減の生産量の増加という形であらわれます。デフレスパイラルでは、何もしなくてもただ競争から生産量が増えるのです。
(http//:blog.so-net.ne.jp/siawaseninarouデフレインフレの一般理論より。)
それ故、デフレの状況の時、統計上に現れる生産量の増加をすべて経済の成長と捕らえてはいけないわけです。
この辺を政府がもっと勘案していれば、今の経済が、実質GDPが成長しゼロインフレであることから、単なるデフレの消耗に過ぎないことが分かり、長期にわたる経済成長などとは呼ばなかったでしょう。
(デフレの消耗による成長とは本来の付加価値より低い値段で販売し生産量が伸びる状態です。売上が伸びないのに生産が増える状態を意味します。)

いかに馬鹿げた政策を取っていたかを次に示しましょう。
このような現象が顕著に表れているのが、2千零年頃から今まで(2千7年後半)続く低成長のデフレです。これをまともな成長と捕らえいざなぎを越える最長の経済成長と唱えていますが、内需の停滞などからその大部分はデフレの消耗による生産増であり、あとは輸出による分です。

特に2千零年頃から2千4年までがひどく、あきらかにデフレスパイラル(所得線の角度が下降している間)であったと思われます。それは公共投資がなくなったため統計に顕著に表れたのだと思います。デフレスパイラルに入ると特に顕著に売上減の生産量の増加が生じ、実質GDPを伸ばすことになります。この消耗から生じた成長を本来の成長と取ってはならないということです。

その頃小泉政権になった頃です、1、借金増から公共投資による景気浮揚策ができなくなり、2、低金利に加えさらにインフレにするため極端な過剰融資を実行しました。
3、金融機関の安定の目的のためという名目で銀行合併が繰り返され、貸し剥がしの横行から企業の資金を奪いました。
3、さらにデフレは生産設備の過剰による供給過多が原因ということで、資金量に合わせるように企業を整理淘汰しました。不公平にも大企業は再生機構などを通して倒産を避けさせました。

デフレは明らかに大借金により生産能力より大幅に消費資金が不足したものです。しかし逆に見ると生産能力が多いようにも見えます。生産能力を資金量に合わせたとしても原因がなくなる分けではなく、デフレが解消する分けでもありません。しかし机上ではできる政策ですが実際には企業のもとには多くの労働者や協力者、関係者がいるのでできない政策です。
しかしこれを人非人のように断行したのです。

銀行優遇により貸し剥がしが行われ、低金利による融資は不良債権の多いところへはまわらず、預金金利の削減となり、消費者の購入意欲を減退させ、売上を減少させ、多くの企業は倒産していきました。大部分の融資は外需による輸出企業に回ったのでした。

このような政策がデフレスパイラルに日本を完全にほうり込んだのです。そして自然淘汰以上の勢いで企業を潰し、生産能力を削減したのです。その激しい消耗の結果を反映して実質GDPが名目GDPより伸びたのです。それ故この実質GDPの伸びは、経済の実際の成長ではなく、企業が付加価値に対して価格を低く付け販売した事を表わし、その減じた価格分を生産量で補おうとしたことが分かります。
輸出がこの現状を分かりにくくしているに過ぎません。
デフレスパイラルすなわち所得線の角度の下降は資金の減少が続きます。こういう時、資金の減少を止める政策を打つのが当たり前です。それどころか逆に資金をさらに減らし、デフレをより促進する政策を取っていたのです。
しかしデフレでは消費者側への融資が必要なのです。最も大事なこの視点が小泉政策は端から欠けていたのです。このような政策は消費者に辛酸をもたらすのみであり、痛みを伴う骨太政策はデフレでは全く通用しなかったのです。

低金利と過剰融資のインフレ政策は始めから理論的に無理がありました。低金利が企業を刺激し有効需要を巻き起こすには、貯蓄があることが前提になっています。しかしデフレでは貯蓄がないため、生産を増加させても消費が増えないので所得が形成されません。さらに低金利は預金金利を削減する方向へと進み、消費を抑えることになり、企業にとって一番重要な売上を減少させる結果になったのです。

過剰融資は国内に有望な仕事を見つけられないため、一番必要なところに回らず、輸出産業の生産設備や運転資金に回り、それ以外は円キャリーによる外国資本の資金になり、それにより日本株が買われたり
買収される資金になっています。今年起こった海外の資金あまりによるインフレはこの円の低金利も一つの原因です。
合併で体力のついた銀行は不良債権で悩む企業から頂門の一針のごとく資金を回収し、倒産させ、有効な投資先にのみ資金を回しています。すなわち内需企業には資金を回していないということです。
このような政策は、バブルの崩壊で既に10年近く不況で苦しんできた会社に対する拷問になり、バタバタと倒産、廃業が増え、それがさらに所得を減少させてしまったのです。
本来資金を増やすべきデフレにおいて、供給体制を削減し資金量にあわせようと画策した結果です。

この馬鹿げたデフレ促進策による大量淘汰は国民の所得を低下させ、貯蓄を少なくし、格差の固定を招き、新規開業を拒み、正規雇用を減らしたりさまざまな問題を生んでいます。
今企業が欲しいのは売上であり、融資ではありません。
今なお政府は実質GDPの成長だけを楯に取り、自分たちの政策が功を奏していると喧伝し、経済は成長していると唱えていますがそれは間違った見解です。

ハートランド理論はこのデフレにおける生産増の仕組みを解明しており、低金利がデフレを促進することを証明しています。是非ご覧いただき日本の政策を変えるきっかけにしましょう。
http//:blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/デフレインフレの一般理論より。


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