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         デフレ・インフレの一般理論
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2007年3月28日 デフレ経済下の最低賃金の引き上げ、正規雇用増大策について

デフレ経済下における最低賃金の引き上げ政策、
パートの正規雇用政策

結論から言うと賃上げや正規雇用を民間サイドにおいてすべて調整させるなら失敗するであろう。また無意味である。しかし政府が直接労働者に資金援助し消費が増える方法を取りそして民間の負担が増えない方法を取るなら成功するだろう。

今このような議論が起こってくるのは格差を是正しようという理由からである。しかし今の問題になっている格差は、デフレ特有の格差であり、正常な時やインフレ時の格差ではない。それ故デフレを解消しなければ本質的にデフレにより生じる格差は解消されない。

デフレの場合と正常な経済では利益分配の基準が違う。
マルクスや社会主義の考え方による労働分配も所詮正常な経済における分析に過ぎない。
デフレでは会社自体も、経営者も労働者もまたその他の生産素材も、その本来持っている価値以下の付加価値しか付けられず経済の縮小と共に価格が下がって行く。
それ故売上減少に伴ない、各企業はリストラを行いその一環として雇用制限していく。正規雇用が賃金カットからパートに移行し、そしてアルバイトにあるいはお手伝いへと格下げしながら、会社も経営者も労働者も、生き延びるために損失を分散をしていくのである。これは自由経済の自然の摂理であり、日本経済のしなやかさの現れでもある。
これはデフレ下では、消費の減退から各企業が売上を伸ばすのが困難になり、競争が激しくなり低価格競争を余儀無くされ、企業が利用する生産要素がどんどん付加価値を低くしていくことになるからである。

このような経済ではどこか有利な分野が出ると、それ以外のものが不利を受けることになる。不利を受けなければ、売上を維持できないのである。同じように企業内で生産に必要な要素の何かがたくさん必要になると価格維持のためそれを補うように何かが減らされることになる。それ故デフレ下の売り上げが減少している状態で、賃上げをすると、他の生産要素で補えない場合価格を引き上げることになる。これで売上が増えれば問題ないが、デフレは価格弾力性が非常に強いので、売上が下がる公算が大きい。そうなると賃上げが
会社にも経営者にも負担となり、結局労働者にとって有利と言えなくなる。
(正常経済であれば賃金の増加がその分消費に結び付く可能性があり、売上が伸びる可能性もある。)
デフレという経済状態にある場合、恣意的に何かを調整することは必ず大きな反発がでるものである。
それは経済の原則に反するからである。(デフレインフレの一般理論参照のこと。http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
現在内需を主に売上の対象としている企業は苦しい状況にあり、外需を主にしている企業は好況である。

それ故賃金を上げさせねばならないのが輸出企業であり、賃金の引き上げの環境にないのが内需関連である。日本国内一律に最低賃金の引き上げや、正規雇用を増やす政策は望ましくなく、場合によっては失業の増大を招くこともあるだろう。
よってこのような政策を民間に押し付けるのは摂理に反しており企業努力を無駄にするものである。(輸出で好況の企業には逆に強制するべきものである。彼等は外需というインフレ又は正常な消費を堪能しているからだ。)

しかし政府がこのような政策を民間に代わりやっていくならばすばらしい政策となろう。デフレ解消策は資金を直接消費者に投入しなおかつ国の負担にならないようにする政策である。
デフレの場合市場に資金を投入してもそれが再び増税という形で差し引くようになるなら効果がないからである。またこの資金の投入は必ず消費者側に直接行う必要が有り、企業側に補助金や援助金を出して行ってはならない。それは正常な経済やインフレ経済の景気回復策に過ぎないからである。
このような資金を最低賃金労働に従事する人に投入することは、この資金が貯蓄にほとんど回らず確実に消費に回る確率が高い人たちであり、経済効果の大きな層と言えるであろう。

いろいろな方法があろうがその一つの案として:
デフレにおける格差の一つの要因が公務員と民間との格差である。これを解消しながらなをかつ消費を増やす方法
*公務員の雇用保険を増やしてその分を最低賃金以下の労働に従事する人達に回すのが合理的である。
経済的には特に合理的と言えるであろう。
これをすることにより市場に消費に回る資金が増えデフレ解消の一助となるであろう。さらに公務員の給料を減らすと消費が下がり不景気になるという方もいると思うが、デフレでは民間の負担を減らす方がデフレの解消になるのである。このような所得を民間に移動させる政策は新たな財源を必要としないため、国の負担にならない。それ故それがための増税はする必要がない。

もう一つデフレの格差の一つの要因は輸出関連企業との格差である。内需が奮わないためどうしても外需に頼りがちになる。それは止む負えないことだ。しかし今この外需を生かしてデフレを解消を図る好機である。
*それ故輸出関連企業の売上に消費税を掛けそれを最低賃金以下の労働者に付加するべきであろう。このような政策がデフレのための政策である。念のために言っておくが、この政策を取ると経済成長が止るという人達がいるが、それは内需を無視して成長率を上げようとする政府の自己防衛に過ぎない。日本政府は明らかに内需を犠牲にしたのである。実質GDPの偏重は国内の消費の拡大より、国内の輸出品の拡大を促している。それは政府が自らの失敗したデフレ解消策を、実質GDPを強調することにより取り繕っているに過ぎない。

ここで言いたかったのは、デフレの賃金引き上げや正規雇用の増大は民間にすべて押し付けるならば自然の摂理に反したものになり成功しないであろう。逆に政府が資金を消費者側に投入する方法を取ればすばらしいデフレ解消策となるということだ。
間違っても企業に補助金を与えるようなことをしてはならない。デフレ下での利益分配は正常な経済の時のものとは性格の違うものである。経営者、労働者、資本家とも3者が損しており、だれかが得をしているというものではないからである。今新聞雑誌テレビ等で行われている討論はこの論点をはずしており、まともなデフレでの賃金政策になっていない。いずれも前からある正常時やインフレ時の政策を品を変え、言い方を変え論じているに過ぎない。