ASDとPTSD


イラクで拘束されていた日本人5名が無事解放された。
最悪の事態まで考えざるを得ない状況だっただけに、15日に解放された3人は、にこやかな表情(少なくとも安堵の表情)で関西国際空港に降り立っても良いはずだったのに、現実は全くその逆であった。暗い表情と、しきりに周囲に頭を下げながら歩を進めるその姿を見て、胸が締めつけられるような思いがした。

外務省の退避勧告に反してイラクに入国したことについては責められる点もあるとは思うが、なぜあれほどまでに落ち込んだ表情をしなければならなかったのか。
小泉首相は、解放直後の混乱した中での高遠菜穂子さんの発言「(イラクにかかわる活動を)続ける」に対して、あからさまに次のとおり不快感を示した。
「いかに善意の気持ちであっても、これだけの目にあっても、これだけの多くの政府の人たちが寝食忘れて努力して、なおかつそういうことを言うのか。自覚をもってもらいたい。」
このバッシング発言が、3人に対する批判、誹謗、中傷を増幅させたのは間違いのないことだ。国民をこういった方向に誘導した責任は大きいと思うのと同時に、それに乗ってしまった人たちも浅はかだと思う。

小泉首相は、冷たい人だ。
3人は、その直前まで殺されるかもしれない恐怖下に1週間も置かれ、ほんの今解放されたことを把握できたばかりの混乱時の発言だったのに‥‥。頭の中が整理される暇がないばかりでなく、日本国内でこれほどの大問題になっていることなど知っているはずもない状態で、冷静に、我々日本人が求めているような発言が出てくるはずがないではないか。
街頭で、この件についてマイクを向けられた人が言うのとわけが違うことを分かって言っているのだろうかとさえ思う。見方によっては、日本人の代表としてイラクに出向いた善意の1個人に、こんな無思慮な発言を我が国のトップの立場の人が公の場で言っても良いのか。解放後に診断されたことであるが、その時点でもASD(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性があることなど誰でも分かることなのに。
これまで、いつもながらの第3者的な発言に、これが首相としての発言か、との腹立たしさを感じてきたが、今回は情けないの一言に尽きる。3人の立場にたったものの考え方ができない小泉という人に、あらためて失望した。

強く胸に引っ掛かったのでワンコの話題からは外れてしまったが、たまにはこんなことも良いのでは‥‥。ちょうど「ワンコのPTSD」について書こうと思っていた矢先だっただけに、グッド・タイミングというか‥‥。
ワンコにもPTSDがあるということは、いずれ書くことにしようと思う。 (04/20/2004)
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