先を読む


「ダッ、ダメッ〜」
ギャンに対し、毎日繰り返されるこの言葉。この言葉を懐かしく思えるようになるのはいつのことかは予想もつかないが、毎日、否が応でも「ダッ、ダメッ〜」を聞かされているギャンのほうも、成長とともにそれなりに対応が変わってきているようだ。

例えば、ギャンが椅子に敷いている座布団をくわえて遊ぼうとしている場合。
ギャンに対し、「ダッ、ダメッ〜」と言って制止させたとき、直ちにこちらの指示を聞き分けた場合は、褒美としておやつを与えることもよくあった。
「ギャん、賢かったなぁー!」と言って、キッチンに置いてあるおやつを取りに行くと、うれしそうに弾むステップであとをついてくる。
これを繰り返しているうち、いつの日か、「ダッ、ダメッ〜」でくわえた座布団を放したあと、こちらの意思に関係なく自らキッチンの方向へと足が向くようになってきた。もし、おやつを与えないようなものなら、早くちょうだいとの意思表示までもするようになった。
さらにこういうことを繰り返していると、ついにはおやつをせしめる目的のために、座布団をくわえようとする格好だけをするようになってきた。別に座布団をくわえるでもなく、視線は「早く止めんかい!」と横目でもの欲しそうにこちらを向いている。つまり、おやつをせしめるための手段としていたずらのふりをしているのである。生意気にも、こちらの「ダッ、ダメッ〜」とそのあとの褒美のおやつまで先を読んでいるのである。いつのまにか身についたこの順序だてて物事を考える能力に驚いたりもするが‥‥。

これはひとつの例だが、ギャンとの生活において、良くも悪くもギャンが日々学習していることに気づくことが多々ある。ギャンがいろいろな物事から学習できるということは、ギャンを真っ当な道へと導くのも、先日、各地の成人式で大暴れした悪餓鬼どものようにしてしまうのも、どうやらこちらのしむけ方ひとつにかかっていると言ってもよいようである。

こんなことどうってことない当たり前のことといえば確かにそのとおりなんだけど、自分自身の先が読みにくい今、ギャンにも爪の垢があるのかな、とふと思っている自分に気づきはっとする。(01/25/2004)
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