NEUMANN, J. v and MORGENSTERN, O.,
Theory of Games and Economic Behavior, Princeton, Princeton University Press, 1944, 8vo., pp.xviii+625

 ノイマン、モルゲンシュテルン『ゲームの理論と経済行動』初版。
 宇宙人はいるか。いる。地球上に人間に混じって生活している。それは、ハンガリー人である。というジョークがある。司馬遼太郎ならずとも、アジア人の血を引くマジャール人にはなんとなく親しみを覚えるが、この異能のハンガリー人数学者・ノイマンも、宇宙人だ、悪魔の化身だといわれる如く、行くとして可ならざるはなし、「電動ドリルをもったオイラー」(森毅の言葉)と評されている。
 学生時代からして型破りで、ヨーロッパの国をまたがり、大学と大学院に同時に入学した。たつきを得るための大学の応用化学科と本命の大学院の数学科である。大戦間の不安定な時代の中で、二つの選択肢の期待効用を比較し決断するより、両方とも選択することで解決したのだ。まあ、ゲームの理論が完成されてない時だからしかたないか。
 その後の活躍は、量子力学の数学的基礎付け、現在もこれを乗り越えられない電子計算機のいわゆるノイマン型・プログラムの発明、大気の階層構造モデルを使った数値気象学、マンハッタン計画への参加等々と20世紀の科学に与えた絶大な影響に見られるとおりである。
 経済学の分野でも経済成長理論における森嶋通夫のいう「フォン・ノイマン革命」と、このゲームの理論の開発という超弩級の業績がある。
 元々この本の題名と同じ論文をモルゲンシュタインが書いて、草稿をノイマンに見せたところ、共同で書くこととなった。二人は討論を重ね、分量はどんどん膨らんでいった(鈴木光男『新ゲームの理論』に面白いエピソードが載せられている)。ストーンは、ケインズの『一般理論』以後の最も重要な経済学の業績と評価しているとのことだ(鈴木『ゲーム理論の世界』)。現代経済学へのゲーム理論の応用は盛んなようである。時代に先んじたのかしばらくは、停滞の時代を経て、1980年代に飛躍し、90年代に一気に開花した。

 忍耐強く読めば素人でも理解できる本との竹内啓氏の文書をどこかで読んで、とうに東京図書刊の訳本を古本屋で購入するも、当然ながら永らく本棚で埃を被ったままである。

 米国の大型古書店よりの購入。海外の古書店で数学書のコーナーを見つけた時は、知らずとこの本を追っていたが、初版本の体裁のイメージが解っていないので、探しにくかった。手に入れてみると,すこし薄手であるが、第二版にほぼ同じである。
 その後の経済学に与えた影響か、当サイトの「インターネット集書」にも、書いたように、短期間で見る見る書価が高騰した印象がある。高い所で、7,000ドル台の本を見たし、現在普通でも3~4,000ドルの値段付いている。とても小生には手が出る本ではないと諦めていた。今回掘り出し物価格で手に入ったので、喜びの余り筆がスベリ、余分なことを書いてしまった。ご海容のほどを。





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(H17.12.5記)



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