里山だより        2008年11月30日 
             
   
      第8回紀伊半島三県森林ボランティア交流大会                     
    里山だより(海・川・山の循環)     2008年11月29日、30日(晴れ)

「山と海のつながり」をテーマに、第8回紀伊半島三県森林ボランティア交流大会が、南国の太陽をいっぱい浴びた黒潮とくじらの町、 潮騒のふるさと「南紀・太地町」で開催されました。    

和歌山県森林アニメーター会の福西紘次さんの主催で、当会から佐藤事務局長はじめ3名が参加し2日間素晴らしい体験をさせていただきました。  

京都大学フィールド科学教育研究センター紀伊大島実験所 所長の梅本信也准教授の講義の後、海辺の里山のフィールドワークが続きました。 古来より海の恩恵をうけてきた地の山の恵みを肌で感じてもらおうと、磯ばたでの植樹、岩肌の人工法面への植樹方法、磯笛さがし、植物観察など 南国の海辺の貴重な体験と研修や、鯨料理のフルコースでの食事会、ブーゲンビリアを漉き込んだケナフの紙漉き、磯の貝で作るキャンドル作りなど、 夜が更けるまで楽しい思い出つくりと交流が行われました。


磯の植物観察や磯笛を拾った燈明崎下「ふるさとの散歩道」と
「牟婁の御崎」。     


恋人岬のブーゲンビリアと婦夫波  08.11.30 
 翌30日大会終了後、和歌山県参加者のバスを見送った後海辺を歩いていると、まもなく鯨が湾内へ追い込まれるとの報を聞き、燈明崎へ 駆けつけました。

 勇壮な鯨漁(古式漁法、鯨の「追い込み漁」)です。 お父さんからの連絡を受けた小さな子供たちや若奥さんも駆けつけ、 岬の上は応援の歓声が上がります。  太地でも久々の大漁だそうで、樫野沖のゴンドウクジラの群れを12隻の舟で湾内へ追い込んでいます。湾内への追い込みが上手くいかず 上の写真の磯へ追い込み、網で囲い捕獲しました。 
人間とクジラの戦いが目の前で繰り広げられた貴重な体験でした。    

スダジイ、シロダモ、モチノキ、トベラ、タブノキ、ヤブニッケイ、タイミンタチバナなど海辺の照葉樹林は、海の生き物をを育てる「魚付き保安林」 として、海辺の人々の生活を支えた「薪炭林」として大切に守られている海辺の里山です。


           自然域と里域

        海辺の植樹  シャリンバイの植樹

    岩肌の斜面に800本のスダジイやタブを植樹

竹筒で育てた苗木を急斜面の岩肌に穴を掘りそのまま埋める植樹法

  「自然域と里域」  〜梅本信也先生の話より〜

 私たちの住む地球は自然域 (nature ecosystem) と里域 (human ecosystem) に区分できます。  自然域は文字通りに原野や深山幽谷の領域で、人間の活動の影響を受けない生態系が営まれます。
一方、里域は人間生活や文化活動が持続的に周囲の動植物と共生してきた領域です。  里海、里川、里地、里山そして里空も含まれます。 文化的香りのする里域と里域圏は人類の誕生と共に拡大を続け、その速度は 日増しに加速、その結果として起こる自然域の衰退は深刻です。
  自然域では、かく乱の原因はもっぱら自然要因であり、保全の仕方は立ち入り禁止による in situ保全こそ最上です。 里域生態系は、かく乱要因が自然要因以上に、人為要因の効果が強く、 周期的で中小規模の場のかく乱が里域の博物相に 与えられ、適切な管理が行われると、多様性の増大や余剰物の持続的利用が可能となります。  薪炭林や茅場など on situ保全(こまめな世話)が行われ、文化となっていたものも、時代と共に変化します。

 古座川プロジェクトを例に、各世代の人々の「自然」に対する概念や考え方に変化があるのを調査され、その結果をお聞きすると 我々の取り組んでいるフィールド「芋谷」や「ふるさと演習林」も、周囲の変化に合わせて、我々の活動も変化させて行くことも 重要なこととして、考えていく必要が有るようです。
 いつまでも昔は良かったなどと昔に戻すのではなく、その時代にあった里山保全活動にも、取り組んでいく必要があると感じます。


追い込まれた「ゴンドウクジラ」  大きいですよ。 

可愛い目、シシャモガが好物のようで、おいしそうに食べてくれます

磯端を一面に覆う「ツルソバ」 ここにもソバの花が咲きます     

北の国からやってきた「ノスリ」 暖かくて幸せそうです。