「自然域と里域」 〜梅本信也先生の話より〜
私たちの住む地球は自然域 (nature
ecosystem) と里域 (human ecosystem)
に区分できます。
自然域は文字通りに原野や深山幽谷の領域で、人間の活動の影響を受けない生態系が営まれます。
一方、里域は人間生活や文化活動が持続的に周囲の動植物と共生してきた領域です。
里海、里川、里地、里山そして里空も含まれます。 文化的香りのする里域と里域圏は人類の誕生と共に拡大を続け、その速度は
日増しに加速、その結果として起こる自然域の衰退は深刻です。
自然域では、かく乱の原因はもっぱら自然要因であり、保全の仕方は立ち入り禁止による in
situ保全こそ最上です。
里域生態系は、かく乱要因が自然要因以上に、人為要因の効果が強く、 周期的で中小規模の場のかく乱が里域の博物相に
与えられ、適切な管理が行われると、多様性の増大や余剰物の持続的利用が可能となります。
薪炭林や茅場など on situ保全(こまめな世話)が行われ、文化となっていたものも、時代と共に変化します。
古座川プロジェクトを例に、各世代の人々の「自然」に対する概念や考え方に変化があるのを調査され、その結果をお聞きすると
我々の取り組んでいるフィールド「芋谷」や「ふるさと演習林」も、周囲の変化に合わせて、我々の活動も変化させて行くことも
重要なこととして、考えていく必要が有るようです。
いつまでも昔は良かったなどと昔に戻すのではなく、その時代にあった里山保全活動にも、取り組んでいく必要があると感じます。
|