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『茶色の朝』の紹介

 大月書店より『茶色の朝』(フランク・パヴロフ著 本体価格1000円)という本が出版されています。2003年、フランスでベストセラー第1位、日本でも各誌で紹介され、話題となったので読まれた方もいるかもしれません。この本は、わずか30ページほどの物語ですが、子どもから大人まで読め、今後私たちが平等で平和な社会≠目指すうえで、非常に参考になると思いましたので、少し紹介させていただきます。




 ある心地良いひととき、湖のほとりでコーヒーを飲みながら何気ない会話を楽しむ、主人公の俺≠ニ、その友人のシャルリーの会話から物語が始まります。
 
 彼らの住む国では、「茶色党」という政党が政権を握っており、『ペット特別措置法』という法律が作られ、茶色以外の猫は全て安楽死させなければならなくなっていたんだそうです。理由は、どこかの科学者が「これ以上猫が増えると危険」とか「茶色の猫は優れている」とか言ったことからだそうです。

 それに関して、友人のシャルリーが、最近自分が飼っていた犬を安楽死させたと何気なく話します。それを聞いた主人公は、最初少しは驚いたけど、「あぁ、犬までもあの法律が適用されるようになったんだ、でも茶色の犬でも犬は犬だし、可愛いし・・・」って感じで、受け入れてしまいます。
 
 ところが、気づいてみるといつの間にか、『ペット特別措置法』を批判していた新聞が廃刊させられたり、ある出版社の本が、本の中で猫≠竍犬≠ニいう単語の前に茶色のという言葉をつけていないとかの理由で、本屋や図書館から締め出されていきます。
 それでも、主人公やその友人は、「少しやり過ぎ・・」と思うものの、特に生活に不便があるわけでもないからとの理由で受け入れていきます。そして、いつの間にか茶色に守られた安心、それも悪くない」と言うように、自らが茶色の犬や猫を飼い、もう何の疑問も抱くことなく日常を送っていくことになります。

 ところが、ある日、友人の家に行ってみると、自警団によって友人が逮捕されたと知る。どうやら、以前に友人が茶色以外の犬を飼っていたことが、法律が変わり摘発の対象になったとのこと。「茶色ラジオ」が伝えるところによると、国内で何百人の人がこの法律により「国家反逆罪」として摘発されたとのこと。

 以前に茶色以外の猫を飼っていたことのある主人公は、眠れない夜を過ごしながらこうつぶやく。茶色党のやつらが、最初のペット特別措置法をかしてきやがったときから、警戒すべきだったんだ。(略)いやだと言うべきだったんだ。抵抗すべきだったんだ」しかし、主人公はさらにこうもつぶやく。「でも、どうやって?(略)俺には仕事があるし、毎日やらなきゃならないこまごましたことも多い。他の人たちだって・・・」

 翌朝、全てが茶色に染まった朝に、だれかが激しく自宅のドアをたたく・・・「今行くから!」という主人公の言葉で物語りは終わる。



 どうでしょうか、この茶色というのは著者の国・フランスでは、ナチスドイツをイメージするそうです。一時、フランス国内において、ルペンという人物によって率いられた極右政党が勢力を伸ばし、一部の都市では市長の座まで奪うまでになっていたそうです。このままではフランスが茶色に染まってしますと警戒した著者が、この本を出版したそうです。そして、2002年の大統領選挙の際、この極右政党のルペンという人が、シラク現大統領と決選投票を闘うまでの事態となり、フランス社会は大きく動揺することになったそうです。その時、この『茶色の朝』いう原文ではわずか11ページの本が、フランスの人々の間で読まれ、ベストセラーになったとのことです。

 本当に日本語訳でも、数十ページなので子どもからお年寄りまで簡単に読むことができると思います。どうか一度読んでみてください。また、周りの人に勧めてあげてはいかがでしょうか。今の日本社会の現状を理解する一役になると思います。

05.1.17(tomo)



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