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小さな子どもが過ごす場所だからこそ、保育園は”家”でありたい。

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コラム 3.「子どもの能力が伸びるには…」 

 世は今まさに教育ブーム。様々な習い事が登場し、教育の低年齢化が進んでいます。保育園や幼稚園の中でも専門講師を呼んで体操教室や絵画教室を開いているところが増えてきました。
 世の中がこういった状況になってくると「私の子にも何かさせなければいけないのかしら…」と不安になるのが親心です。
 しかし、文部科学省が発表しているデータに興味深いものがあります。「幼稚園での運動指導頻度による運動能力の比較(2002)」というものです。
 これによると、運動指導を7回以上行っている園の子どもの運動能力6種目合計点の男女平均は、およそ17.5点。これに対して運動指導をまったく行っていない園の子どもはおよそ18.8点でした。また、同じ調査を2008年にも行いましたが、やはり運動指導を行わない園の子どもの方が、確かに点数が高いと言える結果でした。

 教育ブームの中で生活している私たちにとっては衝撃的なことかもしれませんが、この結果は、つまり、「指導的教育主体の保育を行うより、自由あそび主体の保育の方が子どもの能力が伸びる」という事でもあるのです。

 子どもの体力・運動能力は昭和60年ごろから現在まで低下傾向が続いています。11歳男児のソフトボール投げは、50年前と比べるとおよそ85%の距離しか飛ばせなくなりました。7歳児では、50m走は0.5秒程遅くなり、立ち幅跳びは10p以上距離が短くなりました。
  よくよく考えれば、その当時は今ほど習いごとが当たり前ではなく、子ども達は自由にあそんで過ごしていました。保育園や幼稚園の保育も、現在より自由であったと聞いています。

 こういった事は体操教室だけのものかと言うとそうではなく、お絵かき等でもそうです。自由なお絵かきは、視覚の後頭葉、記憶・図形の認識をする側頭葉、思考・判断・想像・分析の前頭葉、筋肉を動かす頭頂葉、これら脳全体を刺激します。
 しかし色彩心理学者の末永蒼生氏は「テーマを与えて絵を描かせることでは脳の発達は期待できず、むしろマイナスである」とさえ言っています。課題を与えて絵を描かせると脳への刺激は弱くなり、情緒の発達も期待できないそうです。
 運動能力だけでなく、実はお絵かきでも、自由に遊ぶことが子どもにとって良い刺激となるようです。

 他に音楽や制作活動なども、やはり自由に、思うようにすることで能力が伸びていきます。例えば歌なら、上手に歌えたことでやっと喜びを感じられるというより、歌うことそれ自体が楽しく、楽しいことを続けていると、結果として歌が上手になります。課題をクリアする喜びも大切なのですが、活動そのものを楽しむ事はもっと大切になるのです。

  技術の向上を目的としたレッスンを受けることは否定しません。でも、そのようなレッスンをなんのために受けるのでしょうか。本人自身が「発表会で入賞することに価値がある」と考えて取り組んでいたり、「この子を音楽家にしなければならない」とか「オリンピックに出場させなければならない」という目的があるのなら分かります。
 でも、もしそうでないのなら、技術に焦点を当てる事に何の意味があるのか、私には分かりかねるのです。

 ピアノを習いに行くことで、ピアノに苦手意識を持ってしまう子。授業を受けることで、勉強が嫌いになってしまう子。
 そんな子たちも、できた・できなかったの価値観でなく、活動そのものを楽しむ価値観だったなら違う結果になっていただろうと、そう思うのです。

 日本の「できるようにするための指導法」がいわゆる「詰め込み式」と呼ばれるように、あえて子どもを型にはめることで効率的に知識や技能を与えていきます。
 しかし、この日本式の教育法は「楽しいかどうか」よりも「できたか、できなかったか」に価値を置きやすくなります。それは、物事を追求していく楽しさよりも、人との優劣の価値観の中で生涯を生きていくという事でもあります。

 また、その教育で育てられた私たち大人自身もそのように考えがちです。人間は、自分の知っている事しかできません。そうやって育てられてきたから、同じような指導の仕方になってしまうのですね。

 しかし、勉強そのものに楽しさを感じられる教育が広がれば、いわゆるドロップアウトをしてしまう子どもは今よりもぐっと減るだろうと、私は思うのです。
 そういった事を解決するための新しい教育法が、「自分で考えさせる」「自由に運動する時の環境そのものに発達の要素を仕組んでおく」というものです。
 自由にさせることで、「能力を伸ばす」のではなく、「能力が伸びる」という主体的な状態を作っていこうというものです。その試行錯誤の段階に、今この日本があるのです。

 発達心理学には、「子どもは、今自分の成長に必要な刺激のある遊びを好んで選んでいる」という考え方があります。例え大声をあげて飛び跳ねているだけのように見えても、ストレス発散の必要性であったり、自身の体に強めの刺激を与えて骨や関節・筋肉の発達を促していたり、脳と手足の統合を進めていたりします。

 私たちは「自由にあそぶだけでは足りない、意味がない」と考えがちですが、少し視点を変えてみると、今まで常識だと信じていたことがひっくり返ることもでてきます。

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