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コラム 7.ヒーロー物テレビ番組は是か非か(2016.7〜9) 

 今も昔も男の子に人気のヒーロー物テレビ番組。近年は暴力的な番組を子どもに見せるのは悪影響だということで、ヒーロー物は観せないという家庭も増えています。父親の多くは同じような番組を観て育ってきたためかそのような番組に対して肯定的である事が多く、母親の方は否定的である事が少なくありません。しかし、20年ほど前からは女児向けアニメでも身体的な暴力を取り扱うようになり、今でも人気番組となっています。

 発達心理学の調査では、暴力的なテレビ番組を観せることで子どもの暴力行動が増すというデータが確かに出ています。善悪の判断がつかない内からそういった情報を与えれば“暴力を楽しむ”ことや“気に入らない相手を殴る”ことをするようになってしまうのは当然といえば当然かもしれません。本人はお友だちとあそんでいるつもりでも、振り回した玩具がぶつかったり突き飛ばされて泣く子にしてみれば、たまったものではありません。
 小学生前後になるとある程度のやっていい事といけない事の区別がついてくるので、たたかいごっこをしても殴るふりだけにしたり、痛くないように当てたり、周囲に人がいないところでするなど一定のルールの中でできるようになってきます。しかし小さな子どもにとって手加減をすることは難しいので、どうしても泣く子が出てきます。

  通常、成熟した社会では人と人の共生が重視され、文化的な生活が向上することで暴力に対して非寛容になります。暴力の多い社会は、法がうまく機能していない社会です。国民の生活が保障され、適切な教育と愛情を受けることで他者を許容することを身に付け、法を守る意識が高まっていくことで社会の成熟度が上がります。
 なぜ共生が重視されるようになるのかと言うと、それが種の存続につながるからです。争いにより数の減った一部の種族だけで生きていくより、多様な種族・様々な特性が存在している事で、感染症の流行などの異常事態が起きても絶滅を免れる事ができます。人間は、「社会性」をより高い次元に昇華させていくことで様々な種族・特性を生かし、今ほどの繁栄をすることができました。いわゆる「社会保障制度」はそういった意味合いのある制度なのです。

 日本でも昔に比べて暴力が振るわれることは減りました。私たちが子どもの頃に比べても格闘技ファンは減り、ヒーロー物番組の視聴率は下がり、躾のためとされていた体罰は虐待と呼ばれることが増え、喧嘩が強いこと=格好良さではなくなってきました。 現代の価値観では物理的な暴力はほぼ否定されるものとなり、次の課題として言葉の暴力について語られることが増えました。直接的な言葉の暴力はもちろん、悪評を流すことも法に問われることが増えました。
 現代の価値観は“共生が大事であり、双方の譲り合いによって平和的に解決をする”こと、つまり“お互い様”という自他に対する寛容さ、心の広さ・柔らかさを重視する方向へ進んでいます。
 ちなみに私は、この“お互い様”は関西人情のキモであると考えています。持ちつ持たれつ、支えあい。世話好きな文化の中で生きる関西人は、もともと共生が上手だったのでしょう。しかし近年になって人との関係性を勝ち負けで捉えるという精神の幼稚化が顕在化し、相手を自分の思い通りにするために、対話を経ず一方的な現状変更を試みようという人が増えているのだとしたら、それはとても残念なことに思います。
 昔は“男らしさ”として腕っぷしの強さも大事でありましたが、男女共生・男女平等の考えが生まれたことにより男らしさ・女らしさにもこだわらなくなってきました。
 これを書いている私自身も子どもの頃はウルトラマンや戦隊ヒーローを観て育ちましたが、やはりこういった考えには世代間格差があります。保育の仕事に身を置いていることもあり、現代の考え方に自然と対応できたところは確かにあります。  

 ところでなぜ、社会の意識が変わっているにもかかわらず、子ども向けの番組にはいまだに暴力的表現が多用されるのでしょうか。これは個人的な考えになりますが恐らく、視聴率と、関連商品販売のしやすさといった市場原理が働いています。
 勧善懲悪の暴力表現は、視聴者にとってわかりやすいのです。悪を説得して改心させるのは、観ている側も頭を働かせないといけないのでわかりにくくなります。暴力表現なら子どもにもわかりやすく、楽しめます。実際にたたかいごっこをして相手を殴れば、なんだかスッキリして爽快な気持ちにもなるかもしれません。人を殴る体験を通すと、よりその番組に感情移入できて楽しめることでしょう。
 わかりやすい番組は人気が出るので、関連商品がよく売れます。株式会社は利益を追求することが目的の法人ですから、当然売れる物を作ります。しかし、逆に暴力的な番組を観せない家庭が増えていけば、そういった商品は売れなくなり、番組の内容も変化していくことでしょう。

 発達心理学の調査では暴力的な番組を子どもに観せても、子どもが暴力的な行動をとらないようになる方法も見つかっています。それは、親がその番組を一緒に観ながら「お母さんは、こんなふうに叩いたり蹴ったりするのは嫌だな」「あんなふうに叩かれたら痛いね。嫌だね」と声をかけていくという方法です。テレビ番組そのものよりも、大人が暴力を肯定するか否定するかで子ども自身の考え方も変わってくるという、そういう事になります。

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