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コラム 5.「できて良かったね」より「頑張ったね」 

 以前、日本の教育は「楽しいかどうか」より「できたか、できなかったか」に価値を置きやすいという話をこのコラムで書きました。今回は、その話をもう少し深めたいと思います。

 できた・できなかった、勝った・負けたにこだわる人生は苦しいものです。できるようになったら楽しい。できるようにならなかったら辛い。勝ったら楽しい。負けたら辛い。誰かよりも優れた自分でなければ価値がない。そんなことに追われる人生に疲れて命を捨ててしまう人もいます。「どうせできないのだから、わざわざ苦しい思いをすることはない」と、挑戦することを諦めてしまう人も少なくありません。できる・できないにこだわると、そんなふうにならざるを得ないのかもしれません。

 アメリカで行われた実験があります。子ども達をAグループとBグループに分け、とても簡単なテストを受けさせました。とても簡単ですから、両グループともにほぼ満点がとれたそうです。そして、Aグループには「良い点数がとれたね!すごいね!」と褒め、Bグループには「よく頑張ったね!すごいね!」と褒めました。
 すぐさま、今度は難しいテストを出します。「ここにすごく難しいテストがあるけど、やってみるかい?」

 さて、両グループの反応はどうだったでしょうか。 結果を先に述べると、良い点数がとれたことを褒められたAグループは、難しいテストには挑戦しませんでした。頑張ったことを褒められたBグループは、難しいテストにも取り組みました。

 Aグループの子ども達は点数を褒められたことで「できた・できなかった」に価値を置き、Bグループの子ども達は頑張ったことを褒められたので「努力すること」に価値を置きました。
 そのため、Aグループの子どもは、「難しいテストでは、良い点数が取れない」と考え、挑戦をしなくなったのです。Bグループの子どもは、点数に関係なく挑戦することができました。
 この価値観が継続していくと、最終的に能力が伸びるのはどちらなのか明白ですね。

 他に、こんな実験もあります。子ども達を2つのグループに分け、適度な難易度のパズルをさせました。
 両グループとも楽しんでパズルに取り組んでいるところへ、Aグループにはパズルを解けた事に対して報酬を与え、Bグループには何もしませんでした。しばらくした後、両グループに休憩時間を与えました。
 休憩時間中、Bグループは変わらずパズルに取り組み続けたのに対して、Aグループはパズルをする事をやめてしまったのです。

 Aグループは初めパズルをする事そのものが楽しかったのに、その楽しさが報酬をもらえる喜びにすり替わってしまい、報酬が与えられなければ取り組む意味がないと感じるようになってしまったのです。対してBグループは、パズルそのものが楽しいので、休憩も関係なく取り組み続けたのです。

 楽しむことでも、人は成長できます。日本人には「苦しい思いをしないと、良い結果につながらない」と思い込んでいる人が多いそうです。「これを乗り越えたら楽しくなるぞ」というような言葉をよく聞きますが、これを言い換えると「乗り越えられないと苦しいままだぞ」ということになります。
 乗り越えられるのって、いつなのでしょうか。終わりがいつになるのかわからないということは、世の中に結構あります。そんな苦しい人生は嫌だなあと、私は思うのです。
 苦しむことが前提だなんて、そんな事はないと思うのです。むしろ、「苦しい」より「楽しい」の方が効果的です。楽しんだ方が、倍の速さで身に付きます。

 例えば勉強なら、大人になってからすると楽しいことが多いです。それは、「勉強をしたい」「もっと知りたい」と思っているからです。勉強をすることや新しい知識が身に付くことそのものに価値を見出しているからです。
 受験勉強を一生懸命頑張ってやっと難関校へ合格したものの、入学後はどうしてもやる気が起きず結局退学してしまうという「燃え尽き症候群」も、できた・できなかったではなく勉強そのものを楽しめていたら防げたでしょう。

 楽しむことを教える前に課題を与え、できた・できなかったで価値を判断するという日本の教育法に異議が唱えられるようになってきてはいますが、現状はまだ変化の途上にあるようです。
 「その内できるようになるのだから、いかにしてこの物事を楽しんでいこう」というくらいの度量を持って子どもと関われると、きっと違ってくるのでしょうね。

 「これを乗り越えたら楽しくなる」じゃなく「今、楽しい」で良いのですよ。

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