Italian Dream
〜 華麗なるボロ儲け計画 後編 〜




背筋の凍るような気味の悪い空間を、一人の男が鼻歌混じりで陽気に歩いていく。


「フッフ〜ン、ハッハ〜ン、今日から俺はぁ〜、億万長者あぁぁ〜♪」

デスマスクが何気なく口ずさんでいるこのワンフレーズが、彼の企みの全貌を端的に表現している。

『死にかけのアナタ、諦めるのはまだ早い!積尺気パワーであなたも今日から元気モリモリ健康体に!』・・・・・、う〜ん、今イチか・・・・・。商売始めるまでに、バチッとキマったキャッチフレーズ考えておかなきゃな。」

今しがたシュラに説明してきた内容は、決して嘘ではない。
己の能力を活かして、病める人々に健康を取り戻させてやる、それ自体に偽りはないのだ。

ただシュラには、そこに利益が発生する事を言わなかっただけで。


「別にあの野郎が訊いて来なかったからな。俺は訊かれた事に答えたまで、嘘は吐いてねぇぜ、ヘヘッ。だ〜れがタダで人助けなんざやるかってんだよ。何たって世界は資本主義を中心に回っているからこそ発展するんだ。金儲けを考える奴が一人もいなくなったら、この世は終わりだっつーの。」

自らの生命が風前の灯と化したなら、全財産を投げ打ってでもどうにかして貰いたいと考える人々はこの世にごまんと居る。
そこに目を付けたデスマスクは、このビッグビジネスを思いついたのであった。

「一国の王やら政府の要人やら大富豪やら、そんな連中にこの話を持ちかけてみろよ。望みのままに金が転がり込むってもんだ。そうすりゃチンケなサラリー生活ともおさらば、俺様は一躍大・大・大富豪って寸法だ。クククッ、折角授かった能力は、フルに活かさなきゃ罰が当たるってもんだぜ。なあオイ?」

恨めしげな呻きを上げてノソノソと歩いているそこら辺の亡者の肩をバチンと張り飛ばして、デスマスクは上機嫌な顔で辺りを見回した。


「その為にも、アイツにゃ頑張って貰わねぇとな・・・・・・。さあってと!ちゃ〜ん、今迎えに行ってやるからな〜!」













一方その頃、は。


「も〜やだ、こんな所・・・・・・」

半泣きになりながら、デスマスクが迎えに来るのを待っていた。
今のところは無事だが、連綿と続く亡者の行進を見ているだけでも十分身の竦む思いなのだ。

「すぐ来てくれるって言ったのに、デスの嘘吐き〜!」

背筋を擽る恐怖心を、デスマスクへの怒りに変えて怒鳴り声を上げた瞬間、の背後から恨めしげな男の声が聞こえてきた。


う〜ら〜め〜し〜や〜・・・・・・・
ぎゃああっ!!!・・・・・って、何だー、デスーー!!!」
「ケケッ、な〜にマジでビビってんだよ。」
「こっ、こっ、ここにいるの全部本物の幽霊なんだから当然でしょー!!」

は涙目になって、背後の男・デスマスクの胸倉を掴んだ。


「これのどこが画期的な治療法なのよ!っていうかそもそもがやっぱりおかしいわ、たかが首の寝違えを治すのに、何でこんな怖い目に遭わなきゃいけない訳!?寝違えなんか放っておいてもすぐ治るのに!!」
「そうポンポンポンポン言うなよ。こいつは本当に画期的な治療法なんだって!それに、お前が無事に治りゃ、快気祝いにお前が欲しがっていたバッグ買ってやるって言ってんだろ?」
「そう、それもおかしいのよ!快気祝いって、たかが首の寝違えよ!?それでどうして快気祝いにバッグを買ってくれるの!?」

無論快気祝いなどではない。デスマスクにとっては、バイト料のつもりだったのだ。
首を治してやるとはいえ、その痛み以上の恐怖を味わわせておいてタダで済ますのも、流石に申し訳ないと思ったからである。


「考える暇もなくここへ送られたけど、やっぱりどう考えたっておかしいわ!納得のいくように説明して!」
「ったく・・・・・・・」

そんな人の真心も知らないでプリプリ怒りやがって、と内心で毒付きながらも、デスマスクは暫し考えた後、にもシュラに話したのと同じ内容の話を語って聞かせた。




「そ、そんな事が出来るようになるの・・・・・!?」
「おうよ。凄ぇだろ?現に、回復の見込みのなかった失明が治った例さえあるんだぜ。絶対に可能だ。」
「た、確かに凄いけど・・・・・・」
「けど、何だよ?」
「・・・・・・・・怪しい。

油断のない視線をデスマスクに向けて、は探るように問いかけた。


「そんな凄い事をするのに、デスがタダ働きなんて有り得ないでしょ。」
「なっ、何言ってんだよ、俺はこれでも愛と勇気の黄金聖闘士・・・・」
う そ 。それ絶対嘘。お金取って商売にする気ないのに、私にバッグ買ってくれるなんてもっと嘘。」
「チッ・・・・・」

時々妙に鋭いとこがあるから困るぜコイツは、と思いながらも、デスマスクはのその冷静な分析に反論出来ずにいた。無論、当たっていたからだ。
シュラの場合は、目の前でが積尺気に送られた事に少なからず動転していた事が影響して難なく言い包められたが、今のに只の理想論は通じそうにない。
覚悟を決めたデスマスクは、己の思惑を正直に打ち明ける事にした。


「・・・・・・・おうともよ。こりゃあ俺の一世一代の、ビッグビジネスなんだ。」
「やっぱり・・・・・・。」
「利益を求めて何が悪い!?世界の基本は資本主義だぜ!?じゃあ何か、商売は悪か!?大企業の社長も、近所のパン屋のオバちゃんも、全部悪党か!?」
「い、いやそうは言ってないけど・・・・」

必殺・逆ギレを放ちながら熱論したデスマスクは、その勢いのままの肩を掴んで揺さぶった。


「俺がその商売を始めてみろ、俺の懐にはガッポガッポと大金が転がり込んで来るようになる!だが俺はそれを独り占めにする気はねぇ!俺とお前で巨万の富を掴もうじゃねえか!だから俺に協力してくれ、頼む!!お前しかいねぇんだ!!」
「きょ、巨万の富って、そんなの私、想像出来ないよ・・・・・!」
「ああ、俺も想像つかねぇよ!安月給だったからな!だが、それ程リッチな生活が俺達を待ってるんだ!良いか、これには未来が掛かってるんだ!俺と、お前の!!

『あと一応全人類のも』と申し訳程度に言葉を付け足して、デスマスクはいよいよフィナーレに向けて畳み掛けた。


「そ、そんな・・・・・、いきなりそんな・・・・・」
「嫌じゃねえんだな!?な!?な!?」
「嫌・・・っていうか何ていうか・・・・・・」
「よーし話は決まりだ!!お前なら絶対分かってくれると思ったぜ!!愛してるぜ!じゃあ早速戻るぞ!!」

完全に気圧されているの額にブチューーッと濃厚なキスをかましてから、デスマスクはを抱きかかえて生きとし生ける者の世界へと戻っていった。












「・・・・・・・はっ!!」
!?」

不意にパッチリと目を開けたに気付いたシュラは、慌ててを抱き起こした。

「無事か!?どこも何ともないか!?」
「シュラ・・・・・・、う、うん、取り敢えず・・・・・」
「そうか、良かった・・・・!」

シュラがの生還を喜んでいると、デスマスクが戻って来た。
戻って来るや否や、デスマスクはに駆け寄り、瞳を妙な風にぎらつかせて様子を伺った。

「おう、どうだ!首は治ったか!?」
「え?あ、あ、そうだね。確認しなきゃ・・・・・。よっと・・・・・・」
「どうだ!?」
いっ・・・・!?・・・・・・駄目、まだ横向いたら痛い・・・・・!」
「何だと!?か〜〜〜ッ・・・・・・

顔だけをプルプルと振るわせるを見て、デスマスクは盛大な溜息をついたが、やがて気を取り直したように手を打つと、もう一度右手の人差し指を高く掲げた。


「仕方ねぇ、もういっぺん行くぞ!!」
ええーーーッ!?
『ええーーーッ!?』じゃねえ!今度は違うアプローチで試すんだ!!グズグズしてねぇでとっとと入れオラ!!」
ギャーーーッ、またーーーーッ!?!?
!!!おいデスマスク、もういい加減に・・・・」
「ちょっくらもういっぺん行ってくるわ、シュラ!!引き続き留守番頼むぜ!!!」
「おいこら待て!!!おーーーいっ!!!」

助ける暇もなくまた積尺気へ送られてしまったと、その後を再び追って行ったデスマスクが消えた方向を見て、シュラは呆然と立ち尽くした。

「・・・・・何なんだ、アイツらは一体・・・・・・・・」














「ちきしょう、ただ行って戻っただけじゃ駄目だってのか・・・・・・!」

を再び積尺気に連行したデスマスクは、実にシリアスな表情で嘆いていた。
本気で打ちひしがれているのがありありと分かる。
再び訪れた積尺気に怯える事も一瞬忘れて、は落ち込んだデスマスクの様子をオロオロと伺っていた。


「そんな筈はねえ、俺の理論は正しかった筈だ!だが・・・・・・、そうだ、現実問題、コイツの寝違えは治らなかった。そういうデータが出たんだ、これは紛れもない事実だぞ、俺。どうする、俺・・・・・!」
「ちょ、デス・・・・・、大丈夫?何か言動が怪しいよ?
「・・・・・・小宇宙か、やっぱ小宇宙か?」
「デスってば・・・・・」
「そうだとして、どうやって一般ピープル共に小宇宙を燃やさせる?石一つ砕けねえ非力な連中だぞ?」
「デスってば、ねえ・・・・・・」
うるせえな!俺ぁ今、真剣に考え事してんだよ!!切羽詰まってんだよ!!

心配しているにそう怒鳴って、デスマスクはハッと口籠った。
心配してくれたに対して余りな態度だったと反省でもしたのだろうか。



否、この男はそんなタマではない。



「切羽詰る・・・・・、危機感・・・・・・、火事場の馬鹿力・・・・・・。生物にとって最大の危機感とは即ち・・・・・」

ドン引きしているを暫しじっと見つめた後、デスマスクはパチンを指を鳴らした。


「よし、。お前今から一人で元の世界に帰れ。」
はぁっ!?ちょ、何言ってんのよ!!こんな所から一人で帰れる訳ないでしょ!!デスが無理矢理連れて来たのに、そんなの無責任じゃない!!」
「バーカ、話は最後まで聞け。元の世界への入口は、俺が作っておいてやる。お前はそれを探し出して戻るんだ、自力でな。」

デスマスクの思いついた第二の方法、それはこの通り、被験者(客)を極限まで追い詰める事であった。
生命の危機を感じる程まで追い詰められたら、何の心得もない一般人でも火事場の馬鹿力を発揮し、僅かでも小宇宙を燃やす事が出来るだろうと考えたのである。


「自力でーー!?無理っ、無理無理無理!!!こんな気味悪い場所、一人で歩けないし!!!」
「なぁに、出口さえあれば積尺気からは簡単に抜け出せる。問題はテメェのそのヘタレた精神だ。戻るまでの間、テメェの中の恐怖心や襲い来る亡者共に決して負けず、何が何でも生きて帰ると強く念じて出口を探せ!」
「そんなあ!!!っていうか、亡者が襲って来るですって!?!?
「大丈夫だ。恨み言呟くしか能の無ぇ奴等だからな。チョロいチョロい。」
チョロくない!!そんな状態でどうやって恐怖心に負けるなって言うのよ〜〜!!」
「・・・・・・甘えてんじゃねぇぞ。」

涙目になっているを、デスマスクは真顔で叱責した。


「身体は治してぇ、怖い目には遭いたくねぇ、じゃ、道理が通らねぇんだよ。世の中そんなに甘くねぇ。そんなに簡単に動かなかった脚が動くようになると思うか?見えなかった目が見えるようになると思うか?命ってのは本来、金で解決のつくもんじゃねぇだろうが。」
「う゛っ・・・・・・」
「分かったらとっとと行け。テメェの命はテメェで掴み取るんだ。」

厳しい中にも励ますような温かみのある声でそう言って、デスマスクはの肩を押した。













― ちょっと待って・・・・・・・?

走りながら、は考えた。


― デスのさっきの話にはそれなりに納得出来たけど・・・・・・


湿った土の下から一人、また一人と身を起こして縋り付こうとしてくる亡霊達から必死で逃げつつ考えた。


そもそも私は健康なのーーー!!私はデスのお金儲けの為に協力させられてるだけじゃないのよーーー!!!何が『自分の命は自分で掴み取れ』よデスの馬鹿アホ間抜けーー!!!」

はどうにか理性を保つ為に必死で頭を巡らせ、大声でデスマスクの悪口を叫んでいた。
そうでもしていないと、恐怖に呑まれてしまいそうだからだ。
だからは必要以上に大声で叫びつつ、早く出口を探そうと積尺気を駆け回っていた。


いやーーッ、また新しいのが出たぁ!!もうやだーーー!!!全部デスのせいよーーー!!デスのスケベーーー!!!」
「チッ、完全にパニクりやがったな。ついでに支離滅裂な悪口が丸聞こえなんだよこのヤロウ。」

そんなを少し離れた位置から見守っていたのはデスマスク。
元の世界へと続く出口をとうに作り終え、後はがそこを自力で通ってくれるのを待つばかりだったのだが。


「あの調子じゃ、穴に落っこちてマジで冥界行きになっちまうぜ。・・・・・仕方ねぇ、ここは多少親切設計でいくか。利益を求める以上は、多少のサービス位つけとかねぇとな。」

デスマスクは唇を吊り上げると、丁度足元に落ちていた尖った石を拾った。

















「いやーーーっ!!逃げても逃げても追って来るぅ!!!誰か助けてーーー!!!」

時折後ろを振り返って、追って来る亡者達の姿を青ざめた顔で確認しつつ、絶叫しながら当てもなく走り回っていたは、ふと目に入った岩に何かが刻み込まれているのを見つけた。


「なに・・・・・・?矢印・・・・・・?」

それはとてもやる気のなさそうな書き殴りだったが、大きさだけは申し分なく、はっきりと矢印の形に見える記号であった。
瞬時にそれがデスマスクの書き残してくれたものだと考えたが、万が一違っていても構わない。
この状況から脱出する事さえ出来れば、もう何だって良い。


「こっちね・・・・・・!」

そんなヤケクソな気分で、は矢印の指し示す方向へと足を向けた。






ぎゃーーーっ、いやーーーーッ!!!来ないでーーー!!!!

矢印の方向に進んでも、亡者は後から後から追って来る。
は益々パニックに陥り、折角示してやったルートからまたもや外れそうになっていた。


「おいおいおい!そっちは今来た道だろうが!!ったくあの方向音痴は・・・・・。ありゃ一種の才能だな。」

そんなを呆れ顔で見守っていたデスマスクは、再び先回りをしての目につきそうな岩に矢印を書き記し、暫くして二つめの矢印に気付いたは、またそれの指す方向を目指して駆けていった。

そして、それと同じ動作が何度か繰り返されて。





「うへ〜〜ッ、疲れるぜ・・・・!こりゃあ実際商売する時にゃ、予め立て札でも立ててた方が良さそうだ・・・・・!」

必死で走るも相当に疲労しているが、デスマスクの疲労もまた馬鹿にならない程に溜まっていた。
走り回るの先を常に行き、岩に矢印を彫って歩いていたのだから、そうなるのも無理はない。
ただ、その甲斐あってか、はようやく元の世界への出口に辿り着いていた。


「や・・・・・、やったーー!!!やっと帰れるーーーー!!!」

玉のような汗を浮かべた顔をキラキラと輝かせ、は躊躇う事なく出口に踏み込んだ。
そう、躊躇う事も、デスマスクを探す素振りさえも見せずに。















「・・・・・・・はっ!!」
!?」

またもや突然に目を開けたに気付いたシュラは、慌てての側に駆け寄った。

「無事か!?今度もどこも何ともないか!?」
「う、うん、取り敢えず・・・・・」
「そうか、良かった・・・・!」

シュラがの二度目の生還を喜んでいると、デスマスクが戻って来た。
戻って来るや否や、デスマスクはに近付き、恨みがましい口調で言った。


テメェ、俺を待たずにさっさと一人で帰りやがって。」
「あ、デス・・・・・。だ、だって仕方なかったのよ!!私もう怖くて怖くて、走りすぎて今にも倒れそうで・・・・!」
「ヘッ、まあ良いけどよ。ところで、どうだ!今度こそ治ったか!?」
「え?あ、ちょっと待って、今確認してみる・・・・・・・、あ、治ってる!もう首痛くないわよ!」
「マジか!?やったぜぇーー
勝手に治っただけかも知れんがな。
ぇーーー・・・・・って・・・・・・・・・・、何だと?

盛大に喜ぼうとしたデスマスクを、シュラの冷たくさえ聞こえる声が制した。


「お前達が積尺気に行ってから、何時間経ってると思っている?外を見てみろ。」
「うわ、もうすっかり夕方・・・・・・。こんな時間になってたの?」
「しかも、寝違えたのは今朝の事だろう?そこから含めて考えると、たかがちょっとした寝違え位なら、自然に治っていてもおかしくない頃だ。ちなみに、一応夕飯の準備はしておいてやったからな。」
「うん、確かにそうよね、その可能性はあるわ・・・・・。ちなみに、今夜のメニューは何?」

そこから夕食の話へと移っていったシュラとの声を遠くに聞きながら、デスマスクは絶望していた。
何故なら、実験体の確保は非常に困難だからだ。


シュラにも話した通り、人知を超えた存在である黄金聖闘士達では実験にならない、最も相応しい人物は、ごく普通の人間である。
しかし、まさか面識の無い一般人に協力を仰ぐ訳にもいかないから、実質は一人しか実験体が居ないのだ。
だからと言って、実験の為にの目を失明させたり、半身不随にさせたりなど出来る筈もない。
今回のように、偶然に患部が出来た状態が実験には丁度良かったのだが、その折角のチャンスもたった今無駄にしてしまったところだ。

デスマスクの無念さが如何程のものだったか、想像がつくであろうか。




「・・・・・・・・・冗談じゃねえぜ・・・・・・・・・」
「じゃあ早速食べようよ♪私お腹空いちゃった。」
「ははは、元気な元・死人も居たものだ。いつでも食えるぞ。」
「そりゃねぇよ・・・・・・・・」
「やった〜♪ねぇ、デスはパスタのソース、トマトとクリームどっちが良い?」
ふざけんなーーーーッ!!!

デスマスクの怒声に、は竦み上がってオロオロと取り繕い始めた。


「ご、ごめんねデス、私、役に立てなくて・・・・!でもさ、今日はもうアレだから、取り敢えずご飯食べようよ?ね?折角シュラが作ってくれてるし・・・・・」
「飯どころじゃねぇよ!!俺の夢はどうなるんだーーッ!!」
「おいデスマスク、何もそう焦らなくても、じっくり研究すれば良いだろうが。人の命が懸かっている大きな仕事だ。少々時間をかけても、確実で安全な方法を編み出さねばならんだろう?」
「そうよ、シュラの言う通りよ。また日を改めて考えようよ、ね?」
何呑気な事言ってやがんだテメェらは!!じっくりも何も、次の実験のチャンスすら、いつ来るか分かんねぇんだよ!!」
「そ、そんな怒鳴らなくても・・・・・!大富豪なんてそうそうすぐになれるものじゃないって!ゆっくりやろうよ、ね?今回は結局失敗しちゃったから、バッグも遠慮するし。私、別にバッグや大金欲しさに協力した訳じゃないからさ。っていうか、選択の余地もなく巻き込まれたんだけど・・・・・
「・・・・・・大富豪、バッグ?何の話だ、?」

それまでと二人でデスマスクを宥めていたシュラは、の話を聞いて油断のない表情を浮かべた。


「どういう事だ?」
「え、どうって?積尺気健康パワーでお金儲けして、皆でリッチになるんじゃなかったの?バッグは、何か知らないけどデスが買ってくれるって・・・・・。それってギャラ代わりなんだよね、デス?」
バッ、馬鹿っ、それは俺とお前のひみ・・・」
デ ス マ ス ク 。貴様が俺に話した内容と少しばかり違っているようだが、どういう事だ?」
「つ・・・・・・・・・・」

今更口止めしてももう遅い。
次の瞬間、デスマスクの頭上には、早々と全てを察したシュラの右手刀が振りかざされていた。



謀ったなデスマスク!!どうも妙だと思ったら、やはりロクでもない事を考えていたか!!」
「ちょ、ちょっと待て!!ロクでもないって事ぁねぇだろ!!」
黙れ!!!貴様そんな事の為に、を危険に晒したのか!!やはり成敗する必要があるな、そこへ直れ!!!」
「だああッ、エクスカリバー出すなーーーッ!!




切られる肌の痛みよりも、野望費えた心の方が余程痛い。
かくして、デスマスク一世一代の大勝負は、惨敗という結果で幕を引いたのであった。




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後書き

デスマスク氏、残念ながら大富豪にはなれませんでした(笑)。
また毎度お馴染みの下らないアホドリームでしたね。
余りに下らなさすぎて、オチをつけるのが大変でした(汗)。