が金牛宮に来てから、はや数日が過ぎた。
その間、二人は至って良好な関係で同居生活を送っていたのだが。
その関係に変化が起こったのは、ある夜の事だった。
「さっむーーー!!」
「ううむ、今夜は冷えるな。」
今夜はやけに冷え込む。
熱い飲物を摂れば少しの間は温まるが、その効果はあまり持続せず、二人はリビングで震えていた。
「こんな状態で大丈夫!?」
「ん?ああ、平気だとも。」
心配そうなに、アルデバランは陽気に笑ってみせた。
が来てからずっと、ここで寝起きしている。
寒い夜に板張りのリビングで寝る自分を気遣ってくれたのだろう。
アルデバランは、その気持ちだけ有り難く貰う事にした。
「俺は平気だから気にするな。さあ、もう寝た方が・・・」
「でも寒すぎよ!?風邪引くわ!」
「いや、しかし・・・」
「ねえ、もし嫌じゃなかったらさ・・・」
その後に続くの言葉を聞いたアルデバランは、みるみる内に目を大きく見開いた。
― マズいぞ・・・・!
ベッドに横たわりながら、アルデバランは激しく狼狽していた。
久しぶりの自分のベッドだというのに、まるで落ち着かない。
それもその筈、隣にはが寝ているのだ。
― どういうつもりだ、!?
あんな風に申し出られた手前、断れずに承諾してしまったが、本当に良いのだろうか。
「もう寝た?」
「・・・・いや、起きてる。」
眠気など、とうに飛んでいる。
好意を寄せる女と一つベッドに寝ていて、呑気に眠ってなど居られるだろうか。
「あったかーい♪やっぱり正解ね、これ!」
「そ、そうだろうか・・・・」
欲望を理性で必死に抑え込むアルデバランを尻目に、は満足そうに布団に包まって喋りかけてくる。
何かの試練かと思う程辛い状況だ。
それを何とか紛らわせようと、アルデバランはその他愛もない会話に必死で集中した。
だがそれも長くは続かなかった。
いよいよ話題も尽きてしまった。
沈黙が満ちる部屋で、互いの存在感だけがはっきりと手に取るように分かる。
変な緊張の余り、身じろぐ事も出来ない。
何か他に話題はないか。
それとも、ここはひとつ寝た振りを決め込もうか。
アルデバランは、天井を見つめて必死で考えを巡らせた。
だがその時、が先にその沈黙を破った。
「もう少しだね。」
「・・・・何がだ?」
「ここに泊めて貰うの。もうじき直るんでしょ、私の家。」
「ああ。」
黄金聖闘士総出の作業によって、の家はほぼ元通りに修復されていた。
の言う通り、こうして一つ屋根の下で暮すのもあと僅かだ。
「なんか・・・・寂しいな。」
「そうか・・・・。」
そう言ってくれるのは嬉しい。
しかし口下手なアルデバランは、不器用な返事しか出来なかった。
「アルデバランは?邪魔な居候が居なくなってほっとする?」
「なっ・・・、馬鹿な!そんな風に思う筈ないだろう!?」
とんでもない推測に驚いたアルデバランは、思わずの方に身体を向けた。
「じゃあ寂しいって・・・・、思ってくれる?」
暗闇で揺れるの瞳に、眩暈を覚えそうになる。
は、自分の側に居たいと思っている。
そう解釈しても良いのだろうか。
「・・・・ああ。」
肩と肩が触れ合っている事に、今更ながら気付く。
少し腕を伸ばせば、をこの胸に抱く事が出来るだろう。
その一歩を踏み出すきっかけさえあれば。
「本当?」
問い返すの唇が、すぐ隣で小さく誘うように開かれている。
そう考えるのは虫が良すぎるかもしれない。
だがそれは、『きっかけ』として十分なものだった。
「本当だ・・・・・」
一瞬躊躇った後、アルデバランはその細い肩をそっと抱き寄せた。
ついさっきまではあれ程躊躇っていたのに、もう止められない。
何度も唇を重ねて、慌しく着衣を脱ぎ捨てて。
気が付けば、全裸で縺れ合っていた。
「はっ・・・あ・・・・」
「・・・・・」
細い首筋から立ち込める甘い香りが、体中の血を沸き立たせる。
アルデバランは夢中になって、その白い肢体を組み敷いた。
「やっあ・・・・ん・・・」
自分と比べれば、随分小柄で柔らかい身体。
その中でも一際柔らかい二つの膨らみに吸い付く。
「あんっ!」
先端の蕾が、舌に固く感じられる。
その何とも言えない感触をもっと強く感じたくて、舌に力を込めて何度もなぞる。
その度に、は甘い声を上げて身を捩った。
「はんッ、あっ、んっ!」
喘ぎながらアルデバランの頭を掻き抱く。
求められる嬉しさに、アルデバランはより一層激しい愛撫を加え始めた。
「やぁっ!あ、ん・・・、うっ・・・あ・・・、ア、ル・・・・」
絡み合っていた脚が、次第に解けていく。
更なる快感を求めて、の膝がゆるゆると立てられ始めたのだ。
女の一番密やかな部分を、自分から許してくれている。
アルデバランは躊躇わずに、だが細心の注意を払って其処にそっと触れた。
「はっ・・・・!」
しっとりと濡れる花弁に触れた途端、が小さく息を呑んだ。
その唇に深い口付けを落としながら、アルデバランは蜜を溢れさせる泉にゆっくりと指を沈めていく。
「んんっ・・・、あぅっ・・・・!」
「狭いな・・・・・、平気か?」
「ん・・・・、だいじょう・・・ぶ・・・、あんっ!」
ゆっくりと挿入されるお陰で痛くはないが、指一本分にしてはかなりの質量だ。
人並み外れた体格のアルデバランは、やはり指の太さも長さも人より上回っている。
なのにそれは、とうとう付け根まで沈み込んでしまった。
「はッ・・・・、あ・・・・」
「辛くなったら言うんだぞ。」
「ん・・・・、あぁん!」
体内に沈められた指が、ゆっくりと抜き差しを始めた。
それは予想していた以上に強い快感をにもたらした。
「んあっ、あんッ!んっはァ・・・!」
決して乱暴ではないが、激しいと感じられるのは何故だろう。
その摩擦に耐えようと泉が更に蜜を溢れさせ、淫靡な音を奏でるからだろうか。
それとも、子宮を突かれ、全てを引きずり出されるような錯覚に陥るからだろうか。
「ふぁっ、あっ、あん、あっ!やぅッ・・・!」
「大丈夫か?」
「あふっ、だい・・・じょ・・・ぶ、だから・・・・、あっ、もっ・・・」
もっと欲しい。
そう告げたいのに、上手く言葉を紡げない。
だから代わりに、アルデバランの肩を掴んだ。
「ひぁッ!くぅッ・・・・!んっ、んっ、あっ!」
その意思は逞しい肩に食い込む爪から伝わったようで、アルデバランの指の動きが次第に早くなり始めた。
快感は強まる一方で、翻弄されるより他に術はない。
「やっあ、駄目!あんっ、あはァッ・・・・!!」
激しく抜き差しを繰り返す指がある一点を突いた時、その快感は飽和状態になった。
その瞬間、は胸元を仰け反らせて絶頂に達していた。
いよいよ、二人が一つになる時がきた。
「いくぞ・・・・」
「うん・・・・・」
律儀にの了解を得てから、アルデバランはゆっくりと腰を沈めた。
怒張した彼の分身は、にとって初めての大きさだった。
「うっあ・・・・・!」
「大丈夫か?」
「あ・・・ぐ・・・・・」
指とは比べ物にならない程の圧迫感に、声も出ない。
遠い昔に経験した破瓜の衝撃を、もう一度味わっているようなものだ。
「大丈夫か?辛いなら止め・・・」
「やめ・・・ないで・・・・、大丈夫だから・・・・」
「しかし・・・・」
「平気よ。アルデバランが・・・・、したいように・・・して・・・・」
こんな風に言われて断れる男が居るだろうか。
健気にも刺激的な台詞が、アルデバランを燃え上がらせた。
「ふああぁ!!」
腰を強く打ち付けられ、は大きく喘いだ。
またアルデバランも、その締りにえも言われぬ快感を感じて身を震わせる。
「あんっ、ア・・・ル・・・・んあぁッ!」
先程の愛撫で十分解したとはいえ、其処は己を受け入れさせるには少々狭い。
その狭さが男としては快感なのだが、は果たしてどうだろうか。
自分の下で喘ぎ乱れるに、アルデバランは心配そうに囁きかけた。
「辛くないか?」
「あ・・・ん・・・・、平、気・・・・、気持ち・・・・良い、の・・・・」
「・・・・あまり挑発しないでくれ。加減出来なくなるぞ。」
「加減・・・・しないで・・・・」
困った顔をするアルデバランに、は微笑みかけた。
辛くない訳じゃない。
だがその辛さは苦痛ではなく、気も遠くなりそうな快感なのだ。
加減などして欲しくない。
「ああぁっ!!」
その表情と言葉に完全に狂わされたアルデバランは、先程とは比較にならない程深く猛々しい律動を始めた。
その雄々しい巨体に押し潰されるようにして、身を捩り喘ぐ。
甘い嬌声は、次第にすすり泣くような声へと変わり始める。
加減無用と言ったのは本心からだが、想像を絶する程の衝撃だ。
「ひぃッ、あッ・・・・!はぁぁぁッ・・・・!!」
壊れてしまうかもしれない、そんな錯覚さえ覚えてしまう。
しかし、慕う男に壊されるならば本望だと思うのは愚かだろうか。
「ふっは・・・くぅッ・・・!ああァ!ア・・・ルぅ・・・・!」
「・・・・、・・・・!」
もう止まらない。
華奢な身体で己を受け入れてくれるを愛しいと思う気持ちが。
このまま共に快楽の果てへと流されたいと願う心が。
アルデバランは、心のままにの最奥を貫いた。
その直後。
「くッ・・・・!」
「ひぁッ・・・・・!!!」
下腹部を圧迫するものが一気に引き抜かれる感触を感じながら、は声にならない悲鳴を上げて果てた。
アルデバランもまた、の白い下腹に思いの丈を解き放って崩れ落ちた。
翌朝から、二人の関係は更に良好なものに変化した。
具体的に言えば。
同居生活が終わった後も、二人で朝を迎える日が多いような、そんな関係である。