床に座り込んで、機嫌良く鼻歌混じりに洗濯物を畳む。
紫煙を吐き出しながら、デスマスクはその姿をじっと見つめていた。
頼んだわけでもないのに、自分の衣類を甲斐甲斐しく畳んでくれている。
綺麗に畳まれたそれは低い山を成し、の周りをぐるりと取り囲んでいた。
― 俺の気も知らねぇでよ・・・・
いつ頃からだったか、そんな事はもう忘れた。
だが気がつけば、を求めてやまない自分が居た。
だから戯れ半分のような振りをして迫るし、時にはストレートに口説く事もある。
しかし、いつもは本気にしない。
小言や憎まれ口を叩きつつも、笑い飛ばしてしまう。
そんな言動はデスマスクの性格故なのだと、そう思っているようだ。
尤も、少しでも本気にしていれば、決してここを選ばなかっただろうが。
こんなにも欲望を滾らせた男の元へなど。
デスマスクの心を狂わせるのは、のこういうところだった。
冗談だと思っているから、こうして何の警戒もなく目の前をうろつき、あれこれ世話を焼く。
それがどれ程デスマスクの心を掻き乱す事になるかなど、想像もしないで。
そしてそれがもう、危険な一線を超えようとしている事も知らないで。
視界の隅にジーンズの濃紺が映り、は顔を上げた。
「あ、デス。丁度良いところに来たわ。はいコレ、アンタの洗濯物。畳んだからしまっておいでよ。」
「別にその辺に投げてて構わねぇよ。」
「だらしない事言わないの!クシャクシャになっちゃうでしょ。」
苦笑を浮かべながら、は洗濯物の山をデスマスクに押し付けた。
「はい、早く早く!ホント世話が焼けるんだから。」
デスマスクは無言のまま、押し付けられた洗濯物を放り出した。
その光景を見たが、驚いたように目を見開いた。
「なっ・・・!何よ、どうしたの!?」
じりじりと詰め寄ってくるデスマスクの表情が、いつもと何処か違う事に気付き、は内心怯えた。
だが、きっといつもの悪い冗談だろう。
そう思い、どうにか引き攣った笑顔を浮かべた。
「も・・・、またそういう冗談・・・!いい加減にしてっていつも言って・・・」
「冗談?俺は本気だぜ。」
デスマスクは薄く笑うと、の顎を持ち上げて、乾いた唇にキスを落とした。
デスマスクの舌がその乾きを潤すように這った瞬間、は彼の肩を思わず突き飛ばしてしまった。
「やっ・・・!やめて!悪ふざけもいい加減にしてよ!」
「・・・・クククッ、お前も馬鹿な奴だな。」
「な、何よ!?何がおかしいの!?」
の必死の抗議にも全く動じずに低く笑って、デスマスクはその腕を掴み取った。
そして。
「もっと警戒してりゃ、無事でいられたのにな。」
自分でもぞっとする程冷たく響く声を発した後、デスマスクはその場にを引き倒した。
「いやぁ!!やめて!!」
「止めねぇよ。暴れても無駄だぜ。」
「いやっ、やだっ!!」
激しく抵抗するを押さえつけて、デスマスクはその着衣を力任せに引き裂いた。
「やめてーーッ!!」
「うるせぇ、騒ぐなよ・・・」
「うぅっ・・・・!」
に贈る、戯れではない初めてのキスは、酷いものだった。
噛み付きそうな程激しく深く、そして一方的な。
苦しそうに顔を顰めるが、手足をばたつかせてもがく。
その脚がテーブルを蹴り、上に載っているものが音を立てて倒れても、デスマスクは全く意に介さなかった。
「はっ・・・、はぁっ・・・・!」
どうにか酸素を取り入れようと、必死に呼吸する。
デスマスクはそんなを更に拘束し、音を立てて次々と衣服を破っていった。
「もう、やめ・・・・」
怯えて竦むの姿は、既に酷い状態になっていた。
元々大きく開いていたニットの襟刳りは更に引き裂かれ、もう殆ど縦二つに破られている。
その下の薄いキャミソールは只の布片と化し、淡いピンクのブラジャーは乱暴に引き下ろされて、最早その意味を成していない。
必死で庇った下半身は、その抵抗も虚しくあっさりとパンツを剥ぎ取られ、今や無防備なショーツ一枚のみとなってしまっている。
「デス・・・、お願いだからもう・・・」
「止めねぇっつっただろう。」
「こんなの酷い・・・・!最低!」
露出した肌を庇うようにして、は涙目でデスマスクを罵った。
確かにデスマスクは、よく不埒な冗談を飛ばしてくる。
けれども、それは決して冗談の域を超える事はなかったのだ。
なのに今は違う。
今目の前に居るデスマスクに、は恐怖さえ感じていた。
「・・・・何とでも言えよ。いい加減に諦めろ。」
「やっ・・・・!」
とうとうその最後の砦までもが、なす術もなく悲痛な音と共に引き千切られてしまった。
「ぃやっ・・・・!」
の涙声を聞き流し、デスマスクは白い胸の先端に噛みついた。
怯えきって震えている割には、其処は固くしこっている。
「はぅっ・・・・!痛っ・・・・!」
削り取るような勢いでもって舌でなぞり、時折僅かに歯を立てると、は鋭い声を上げて身を捩る。
痛いと思わせるのは甚だ不本意だが、理性を飛ばしたデスマスクには、己を止める術はなかった。
「あっん・・・、やぁ・・・・!」
「暴れるからだ。大人しくしてりゃ痛くねぇよ。」
「いやぁ・・・・・!」
「チッ・・・」
涙を零して首を横に振るを見て、デスマスクは忌々しそうに舌打ちした。
何も泣かせたくて、甚振りたくてこうしている訳ではない。
溺れて欲しいのだ。
溺れて、求めて欲しいのだ。
「泣くんじゃねえ!」
「!」
苛ついたようなデスマスクの怒声に、はビクリと肩を震わせた。
驚きと怯えの余り、今その涙は一時的に止まっている。
デスマスクは涙に濡れたの顔をしばし凝視した後、ふと辛そうに視線を背けた。
そして、それを隠そうとするかのように、の腰を掴んで手繰り寄せた。
「や・・・だ・・・・、あッ・・・・・」
涙こそ止まらないものの、の抵抗はもう随分弱いものになっていた。
先程の一喝が、の抵抗心をへし折ってしまったようだった。
「はっあ・・・・、あ・・・・」
涙と同じように、秘裂からは熱い蜜が溢れ始めている。
デスマスクはの腰を高く抱え上げて、それを舐め取っていた。
わざと音を立てて、にその事実を知らしめるように。
「や・・・・あぅ・・・・、う・・・・」
「良い子だ、やっと大人しくなったな。気持ち良いか?」
「なっ・・・・、ちが・・・・・」
涙で滲んだ瞳を、はデスマスクに向けた。
せめてもの抵抗の意を託して。
だが、デスマスクには全く通じなかった。
「ほう?言うじゃねえか。ならこれでどうだ?」
「ふぁッ・・・!?あっ、やぁぁッ・・・・!」
花芽を吸い上げられて、は激しく身をくねらせた。
デスマスクの舌は、今まで以上に強く激しく、秘部を這い回る。
その強すぎる刺激に耐えきれず、は必死でもがいてデスマスクの拘束から逃れ、這うようにして逃げ出した。
しかし。
「逃げるなよ。」
「やだっ!やめっ、あっ!んぁぁ・・・・!!」
すぐに腰を掴まれて引き戻され、うつ伏せた状態のままで再び秘部を嬲られてしまう。
屈辱的な体勢で秘部を舐め回される羞恥に混乱したは、また悲痛な拒絶の声を上げ始めた。
「やめてぇ!いや、やめッ、あーーッ!!」
だが、どんなに拒絶しても、泣いて懇願しても、その責めは止まなかった。
身体がエクスタシーを感じるまで。
無理矢理絶頂に追い込まれて、ぐったりと伏せるの後ろで、デスマスクはジーンズの前を寛げた。
それは今にも破裂しそうな程猛々しくそそり立ち、先走る欲望に濡れている。
今更後戻りなどする気はないし、出来もしない。
デスマスクは小さく息をつくと、力の抜けたの腰を抱え上げて、その中心に己を突き刺した。
「あぁぁッ!!」
「くっ・・・!」
一思いに最奥まで貫いてから、デスマスクは深い溜息をついた。
肌を粟立たせて震えるには悪いが、天国のような心地良さだ。
今はその感触を貪る事しか考えられない。
「いくぜ・・・・?」
「はっう・・・・!くぁッ・・・・!あうっ!!」
一方的な情交が始まった。
それは労りなど欠片もない、力で捩じ伏せるようなものであった。
「あぁッ、んぁッ、はっ、あっ!や・・・め・・・・」
「まだ言うか?」
「ひっ、いやぁぁッ・・・!!」
身体を繋ぎ留められてもまだ拒むに苛立ち、デスマスクは力任せに腰を打ちつけた。
「ひあぁぁッ!」
泣き叫ぶような悲鳴と共に、の身体は床に崩れ落ちた。
逃げ場などある筈もないのに、床に爪を立て、身体を束縛する楔からまだどうにか這い出そうとしている。
デスマスクは、その背の上に己の上体を預けた。
「逃がさねぇよ・・・」
片手で震える腰を抱え直し、もう片手で白くなる程力が籠められている指先を捉えて。
そして、戦慄く花弁を更に蹂躙し始めた。
「あぅぅ・・・・!」
「どうだ?良いか?」
「い・・・や、ぁ・・・・、苦し・・・・・」
デスマスクの下で、はくぐもった声を上げた。
体内にはデスマスクが一部の隙間もなく捻じ込まれ、その先端は鈍痛すら感じる程奥まで届いている。
その状態だけでも耐え難い程の圧迫感を感じるのに、それは動きを止めない。
小刻みに律動を繰り返し、責め立ててくるのだ。
「デス・・・・、も・・・、お願い、だから・・・・やめ・・・」
「・・・・そんなに止めて欲しいのかよ?」
大粒の涙を流しながら小さく頷くに、デスマスクは苦々しい呟きを零した。
これだけ征服しても、まだはそれを受け入れようとしない。
それが許せなかった。
「・・・・分かった。止めてやるよ。」
「本・・・当?」
「但し、俺が満足してからだがな。」
は大きく目を見開いた。
束の間の安堵が、一転してより深い絶望に変わる。
その拍子に頬を伝い流れた涙を舐め取りながら、デスマスクは更に追い討ちをかけるような囁きを、の耳に吹き込んだ。
「俺が欲しいって言えよ。イかせて欲しいって言えよ。」
「なっ・・・・!」
「早く言わねぇと、いつまでもこのままだぜ?嫌なんだろ?どうなんだよ、オラ?」
「あんッ!」
ぐいと腰を押し付けられ、の身体がびくりと震える。
「ほら、ほら。言えよ?それともずっとこのままが良いか?」
「い・・・や・・・・・」
「じゃあ言えよ。」
脅し以外の何物でもない事ぐらい、こんな風に言わせたところでそれがの本心でない事ぐらい、重々承知している。
だが、それでも言わせたかった。
デスマスクが欲しい、と。
この快楽に溺れたい、と。
それを聞きたいが為に、デスマスクはまるで拷問のようにの体内を抉り続けた。
そして、その責めに次第に負け始めたは、口元を震わせながら小さく呟いた。
「・・・しい・・・」
「・・・・何だ?聞こえねぇな?」
「欲・・・しい・・・・」
「何がだ?」
「デスが・・・・、欲しい・・・・」
嗚咽交じりで呟く声に反応して、身体の芯がかっと熱くなる。
「・・・・それで?どうされてぇんだ?」
「っ・・・・、ぃ・・・かせ・・・て・・・・」
卑猥な言葉を強要され、は羞恥と屈辱の余り、顔を赤く染めて唇を噛み締めた。
蚊の鳴くような声で絞り出された要求だったが、それは十二分にデスマスクを煽った。
「あぁん!!あんッ、い、やぁ・・・・ッ!」
気が遠くなりそうな振動を身体の中心に受け、は髪を振り乱して喘ぐ。
さっきまでの小刻みなものとは違い、モーションの大きな力強い律動は、明らかに絶頂を目指してのものであった。
「あぐっ、あっ・・・・!はんッ、はァッ!!」
もう今更どうにもならない。
諦めきったは、もはやデスマスクのされるがままになっていた。
溢れる涙も、唇が勝手に紡ぐあられもない声も、抑えようとはしない。
だが。
「くッそ・・・・!、出すぞ・・・!」
「なッ・・・・!」
苦しげな呻きが、朦朧としていたの頭を急速に冷やした。
これ以上はないと思っていたのに、その恐ろしい予告は、更にを恐怖に陥れたのである。
「だ、駄目!やめて、それだけは・・・!」
身を捩り、必死で懇願するが、デスマスクは全く聞き入れようとしない。
楔は益々深く体内を突き回し、一瞬信じられない程質量を増した。
そして。
「くッ・・・・!」
「いやぁぁ・・・・!!」
そうと気付いた瞬間には、既に熱い迸りを体奥に受けていた。
デスマスクは、糸の切れた操り人形の様に崩れ落ちているを抱き上げて、ようやく寝室へと運んだ。
一度ならず二度三度と交わりを強要した為、疲労しきったの意識は既にない。
身体は何度も拭き清めてやったが、自分でも信じられない程大量に注ぎ込んだ欲望がそんな程度で清められる筈もなく、未だに秘裂から時折溢れては零れて落ちる。
「酷ぇな・・・・」
泣き腫らした瞼を閉じて眠るを見ながら、デスマスクは小さく呟いた。
だが、後悔などしていない。
後悔するような半端な気持ちだったなら、最初からあの笑顔を失うような事はしない。
どんなに泣いて責められようが、軽蔑されようが構わない。
が心から自分を求めてくるようになるまで、この身体が忘れられないようになるまで、何度でも何度でも抱くだけだ。
「絶対に・・・、そうさせてやる・・・」
その低い呟きに反応したように、閉じられたの瞳から涙の雫が一粒流れた。