What a Wonderful Destiny 30




サガと固い握手を交わした後、は改めて皆に頭を下げた。

「精一杯頑張ります。改めて宜しくお願いします・・・・・」

詰まりそうになる声を懸命に励まして挨拶したら、思わず涙が滲みそうになった。
それ以上どうにかならないように俯いたまま何度も瞬きをし、ようやく顔を上げてみれば、
そこには温かい笑顔を浮かべた彼らの姿があった。


「何今更言ってやがんだ。」

はにかんだ笑顔を浮かべるの肩を、デスマスクが抱き寄せる。
女性にというより仲間に対してするような仕草で、にはそれが妙に嬉しく感じた。
言葉にならない今の気持ちを笑顔に託して彼に向ければ、彼もそれに応えるような微笑を返してくる。

これ以上このままでは、堪えきれずに泣いてしまいそうだ。
何か話さなくては。

そう考えた矢先、先に彼の低く穏やかな声が聞こえてきた。

「さて、と。次はテメェの尋問だな。」




周りをぐるりと取り囲まれ、は冷や汗を流しながら事の次第を白状した。

「・・・・ほ〜う。寝過ごした、ってか。」
「そしてどうにか帰ろうとめくらめっぽうに歩いて、却って撃沈した、と。」

やけに静かな口調のデスマスクに同調し、シュラが言いにくい事をずばりと切って捨てる。

「すわかどわかしかと騒いだ我らは、とんだ道化だな。」
「いやシャカ、それはお前が勝手に言い出したのでは・・・」

呆れたような物言いのシャカに、カミュが控えめに突っ込みを入れる。

「詰まる所はやはり私の予想通り、道に迷っていたという事だな。」
「それにしても・・・・」

アフロディーテが妙に自慢げに話を纏めた頃には、はすっかりしょげ返っていた。
そしてそれに追い討ちをかけるように、カノンが低い声でぼそりと止めを刺す。

全く人騒がせな。

もはやに何かを言い返す気力はなかった。
事実その通りなのだから、『ご尤もです』と小さくなるしかない。
そんなに、ミロが労わるように声を掛ける。

「まあそう言うな、カノン。だってわざとじゃなかったんだから。」
「ミロ・・・、ありがとう・・・・!」
「疲れただろう。ダメージを抜いてやる。」
「え?いや、大丈夫よ。一晩寝れば平気平気!」
「駄目だ。明日も執務があるってのに、足が痛くて階段登れませんでしたじゃ困るんだよ。
とっとと靴脱げ。」

デスマスクが半ば無理矢理を座らせ、靴を脱がせる。

「な、何する気!?」
「心配すんな、気持ち良い事だからよ。」
「だから何よ!?」
「足ツボマッサージだよ。疲れもスッキリ取れるぜ。」
「いやっ、ちょっと本当に・・・、遠慮する、遠慮しますーーー!!

デスマスクは非常に楽しそうな表情を浮かべて、の足を掴んだ。
それに怯えたは逃げようとしたが、あろう事かミロとカノンが両サイドから上半身を固定した。

「クッククク。散々心配掛けやがったバツだ。たっぷりヤキ入れてやるぜ。
ヤキ!?

は周りに助けを求めたが、誰一人動こうとする者はいない。
皆面白そうに笑って見ているだけである。

「行くぜ〜?」
「やっ、ま、待って!」
「Ready・・・・」
「待ってってば!!」
「Go!!」
いっったあぁぁぁーーーーー!!!

の高らかな悲鳴と黄金聖闘士達の楽しげな笑い声は、夜遅くまで聖域を賑わした。






「・・・・出来た、と。」

書き上がったばかりの絵葉書を読み返して、は微笑を浮かべた。


こうして思い返してみると、人の運命とは不思議なものだと思う。
ふとした拍子にとんでもない方向へ転がってしまう。
少し前までの自分なら想像もつかなかった生活を、今こうして送っているのだから。


日本を出てから今まで大なり小なり様々な事があった。
そこから得たものは、愛すべき良き仲間と充実した毎日。
もう今ではかけがえのないものとなっている。

そしてこれからもまた、色々な出来事があるだろう。
全てが良い事ばかりではないかもしれないけど、きっと楽しい事の方が多い。
そんな予感がする。




物思いに耽っていたは、玄関チャイムの鳴る音で我に返った。
ドアの向こうの笑顔を思い浮かべると、足取りも自然と軽くなる。

「はーい!」



今日もきっと、素晴らしい一日になる。




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後書き

よっしゃーーー!!
やっと終わりました!!!
まさか30話にまでなるとは思っておりませんでした(笑)。

さて、早速当初の目的を振り返ってみましょうか。


◆ヒロイン・黄金聖闘士達のキャラを掴みなおす。
そうですね、自分の作品におけるキャラは、何となく確立出来てきたように思います。

◆逆ハーの練習
いやこれは・・・、どうやろう(笑)?
なんか結局こすい手を使って、オールキャスト話が少なかった気が(爆)。
上達したのはごまかし方だけ、か??


・・・・。

えー、墓穴を掘りそうなプチ反省会はこのぐらいにするとして(笑)、
総括して感想を述べるとすれば、『大変だったけど、やって良かった』ですかね。
自分自身、楽しんで書いていましたしね。
うん、それで良しとしよう(笑)。


あとは、そうですねえ。
オマケにもならない製作舞台裏のご紹介でもしときましょうか。

一応この話には、MYテーマソングがありましてですね(笑)。
何かというと、Three Dog Nightの『JOY TO THE WORLD』です。
あと局所的に聞き込んでいたものとしては、

同じく『JOY TO THE WORLD』、こちらはLeyonaのカバーバージョン。
Roy Orbisonの『Oh Pretty Woman』。
中森明菜の『北ウイング』。

・・・・無秩序でかつ分かりやすいな(爆)。
特に北ウイングは、どの話で聴いていたか一発でバレますな(笑)。


そんな感じで書いて参りましたこの話、少しでもお楽しみ頂けていれば幸いでございます。
ご覧下さった皆様には、本当に大感謝です。
皆様の有り難いご感想や激励が励みになり、どうにか無事終了させる事ができました。
ここまでお付き合い下さり、本当に有難うございました!