仔猫十二宮編

〜 姫で御座います 〜




「しかし、捜すと言ったってな・・・・・・・・・・」

取り敢えず自宮の周辺を見渡しながら、アルデバランは途方に暮れていた。
何処までも続く広大な大地ではあるまいし、確かに聖域という地はさほど広くない。
だが、この中から掌サイズの仔猫を捜すとなると、実際にはそう簡単な事ではないのである。
宮の中、裏手、階段等、思いつく限りの場所は捜してみたが、気配すら感じられなかったのがその良い証拠だった。


「ふーーっ、駄目だ!!!ちょっと休憩しよう!!!」

体力・気力の限界を感じて、アルデバランはとうとう音を上げた。
我ながら少々情けなくはあるが、こういうのは使う体力と神経の種類が違うし、また、心当たりは一通り見て回ったのだから取り敢えずOKという事にしよう。そうしよう。

と決めたところで、アルデバランは、隣の白羊宮の守護人にして共にこの辺り一帯の捜索を担当しているムウの言葉を思い出した。


「そう言えば、一段落ついたら白羊宮でムウと落ち合う約束だったな。行くか。」

かくして、アルデバランは一旦捜索を打ち切り、白羊宮へと出向いた。









「邪魔をするぞ、ムウ。」
「おや、お疲れ様です。」

白羊宮では、既に戻っていたらしいムウが、用意良く茶の支度などを整えていた。
乾いた喉が鳴りそうな薫りの良い茶葉の匂いを嗅ぐと、全身からホッと力が抜けていく。
いそいそとテーブルに着いたアルデバランは、ムウから茶のカップを受け取りつつ尋ねた。


「ところで、仔猫は見つかったか?」
「いえ一匹も。貴方は?」
「俺もだ。流石に参ってきたので、少し休憩しようと思ってな。」

差し向かいで茶を啜り、二人は低くて重苦しい溜息をついた。
些かオヤジくさい感じがしないでもない。
男二人がぐったりとテーブルに突っ伏していると、部屋の空気が重くなるのは是当然。
だが、そんな空気を打破してくれる軽やかな小宇宙が部屋の中に満ちた。



「ムウ様ーーっ!只今帰りましたーーっ!」
「おうおう、小僧はいつも元気だなぁ。」
「騒々しいですよ、貴鬼。少し静かになさい。それで?頼んだ材料はちゃんと揃えて来たのですか?」
「はい!ちゃんと全部揃っていますよ!」
「ご苦労でした。今丁度お茶が入ったところですから・・・」
「それより見て下さい、ムウ様!」

貴鬼がほらほらと差し出すモノを面倒臭そうに一瞥して、ムウとアルデバランは目を見開いた。


「そっ、それは・・・・・・・・!」
「まさか・・・・・・・・・・・!」

貴鬼の手で不器用に抱きかかえられて、後ろ足がカエルのように開いてしまっているソレは、次の瞬間『ミ゛ャアッ!』と抗議の声を上げて、貴鬼の手からすり抜けた。


「貴鬼・・・・・・・・、お前それを何処で・・・・・・・!」
「え?そこの石段で日向ぼっこしていましたよ。そう言えばこの猫ってデスマスクの所に居た筈なのに、何でこんな所にいたのかなぁ。」
「よーし、良くやったぞ貴鬼!!!」
「わっ、何だよアルデバラン!?!?」

突如アルデバランに抱き上げられ、高い高いをされてしまった貴鬼は、困惑しながらもされるがままになっている。
ムウはその隙にすかさず仔猫が出て行きそうな恐れのある隙間を塞ぎ、安堵の溜息をついた。


「良くやりました、貴鬼。お前のお陰で仕事が実に早く片付きましたよ。」
「え?え?何の事ですか、ムウ様?」
「説明は後で。とにかくお前はを呼んで来て下さい。今すぐ。」
「?はーい・・・・・」





訳の分かっていない貴鬼が、ともかくムウに言われた通りを連れて白羊宮に戻って来たのは、それから少し経っての事だった。




「やったー!一匹見つかったのね!?!?」
「ええ。貴鬼がそこの石段で日光浴をしていたこの猫を捕獲して来ましてね。」
「そっかー、良かったぁー!」

は心底嬉しそうな顔をして、小皿から牛乳を飲んでいる仔猫の頭を突付いた。


「こら!人騒がせな子なんだからもう!」
「いやいや全くだ!俺などそこら中を草の根分けて捜し回ったというのに、すぐそこの石段で呑気に日向ぼっことはな。全くしてやられたよ、ガッハハハ!!」
「何はともあれ、見つかって良かったですね。」
「そうね。」

テーブルに着いてムウに出された茶を一口飲み、は改めて仔猫を見た。
ツンドラに良く似た真っ白な身体だが、額の部分にだけ平安貴族の眉を連想させるような薄茶のブチが入ったあの仔猫である。
既に牛乳を飲み終え、椅子の上で悠々と寝そべって気取った顔をに向けているその仔猫をじっと見つめて、は小さく笑いを零した。


「どうかしましたか、?」
「ううん、何でもないの。ただちょっと・・・・・・」
「何か?」
「あの・・・・・・・、怒らないでね?」
「ええ。」
「この子・・・・・・・、ちょっとムウに似てない?」
「ぶはッ!!」
「ぷーッ・・・・・!!」

の言葉を聞いた瞬間、アルデバランと貴鬼は発作のように笑いを洩らしてしまったのだが、ムウの冷ややかな目で微笑みかけられてすぐさま黙り込んだ。
物笑いの種にするつもりは全くなかったのだが、やはりムウは気を悪くしたのだろうか。

「ご、ごめん、私そんなつもりじゃ・・・・・・・・!!」
「いえ、良いんですよ。確かに自分でも似ていると思いますから。ええ全く。」

そう思って慌てて謝ったのだが、ムウは麻呂眉のその仔猫を見つめてにっこりと微笑んだだけだった。












しかしこの仔猫、別の意味でもムウに良く似ていたのである。







仔猫を白羊宮前にて捕獲してから、早くも数時間が経過していた。
宮の主・ムウは、これで一件落着だと言って己の本業、つまり聖衣の修復に取り掛かるべく作業場に篭りに行き、アルデバランも金牛宮に帰ってしまっている。
従って、残ったと貴鬼が仔猫の見張りを兼ねて白羊宮のリビングで留守番をしていたのだが。


「うそぉ・・・・・・・・・、凄い。」
「これってそんなに凄い事なの、お姉ちゃん?」
「凄いも何も、超凄いわよ。」

真顔で頷いて、はしげしげと仔猫を見つめた。
実はこの仔猫、乾ききった土だけが入った植木鉢の上にしゃがんで、現在トイレットタイム中である。
これの何が凄いかを端的に説明すると、仔猫自らがこの植木鉢を選んで用を足し始めた、という事だ。


「普通はね、人間が予め猫用のトイレを用意しておいて、『ここでするんだよ』って連れて行って教えてあげなきゃ、最初からうまくは出来ないものなのよ。それも、何度教えたって覚えない猫もいるし。」
「へ〜。」
「それが、この子は最初から一人でここへ来てしたでしょ。」
「うん。」
「し・か・も。」

と歯切れ良く言って、は部屋の中をぐるりと指差した。


「柔らかくて座り心地の良さそうなソファやラグの上じゃなくて、わざわざこのどうでも良い植木鉢を選んで。この植木鉢、もう捨てちゃうところだったんでしょ?」
「うん、そうだよ。今は何も植えていないし、土も養分が抜けきってスカスカだったし、鉢もボロボロだし、近々鉢ごと処分するってムウ様が言ってたよ。」
「仔猫の癖に、この要領の良さと気遣いが凄いと思わない?」

確かに、ソファやラグの上などに排泄されると、掃除係の貴鬼としては大層困る事になる。
の話に合点がいった貴鬼は、顔を得意げに輝かせて言った。


「きっとこの猫の頭が元々良いんだね!もしかしたら、オイラやムウ様みたいに超能力があるのかも!」
「えぇ!?」
「だってさ、人間がされて困る事、誰にも教わってなくてもちゃんと分かってるみたいじゃん!」
「あっなるほどねー・・・・・・、本当にそうかも知れないね。」

貴鬼の発言は突拍子もないものだったが、それでもは何となく納得してしまった。
何故なら、他にもそう思わせる要因があったからだ。


「食物や飲物だって、自分用に出されたものにしか口をつけてないし。」
「うんうん。」
「遊びたい盛りの仔猫なのに、壊されて困るような物にはじゃれついていかないし。」
「そうそう。」
「まるでお姫様みたいにお行儀も良いし。」
「そうだよ!」
「・・・・・・・・もしかしてこの猫、本当に凄い??」
「凄いよーーー!!!」
「きゃーっ、凄ーーい!!!」

行儀良く座っている仔猫を抱き上げて褒めちぎり、と貴鬼は無邪気にはしゃいだ。








白羊宮で保護してから僅か数時間しか経っていないというのに、仔猫はもうすっかり宮内のルールを知り尽くしたような利口な振る舞いを見せていた。
およそ仔猫らしからぬその思慮深さと知力は、白羊宮の聡明な主のそれと良く似ている。
愛くるしく、その上超がつく程のお利口さんとくれば、幼い貴鬼がこの後に言い出す事はおおよそ見当がつくだろう。






「・・・・・・・・・・許しません。」

作業に区切りをつけてリビングに戻って来たムウは、貴鬼の話を聞くや否や即座にこう言った。


「どうしてですかムウ様!?この猫、とっても賢いですよ!?悪い事なんて絶対しません!」
「ほう、それはそれは。」
「カミュにはオイラからお願いします!世話だってオイラが一人でやります!!ムウ様には絶対迷惑掛けませんから!!!」
「何度も言わせないで下さい。駄目なものは駄目です。そんな事が問題なのではないという事が、お前には分からないのですか?この猫はカミュが戻り次第、彼に返します。良いですね?」

ムウの口調は決して荒くないが、それでいて有無を言わせぬ鋭さがあり、その迫力たるや傍で聞いているの方が『はい』と頷きたくなる程だった。
だが、流石はムウの一番弟子。
貴鬼はムウの口調に怯みこそしたが決して退かず、目に涙を溜めて・・・・・


「・・・・・・・ムウ様の分からず屋ーーーーーッッ!!!

と叫んで、仔猫を抱きしめたまま白羊宮を飛び出して行ってしまった。













「で?行く所がないから俺の所へ来た訳だ。」
「・・・・・・・」
「ムウに頭ごなしに駄目だと言われたのが、そんなに悲しかったか?」
「・・・・・・・」

アルデバランの低く静かな声で尋ねられた事全てに対して、貴鬼は無言のまま頷いていた。


「お前の気持ちは良く分かる。だが、ムウの言う事にも一理ある。」
「・・・・・・・でもこの猫、本当に賢いんだよ・・・・・?」
「それは顔を見れば大体分かる。実に利口そうな顔をしてるじゃないか、誰かさんに良く似た、な?」

アルデバランとしては貴鬼を笑わせるつもりだったのだが、貴鬼は仔猫を掻き抱いたままニコリとも笑わず、ポツリと呟いた。


「・・・・・オイラ分かってるんだ。ムウ様は、この猫の麻呂眉毛が自分に似てるって笑われたから腹を立ててるんだ。」
「ブッ・・・・・・、アッハハハハ!!!!」

不覚にも大笑いしてしまったのはアルデバランの方である。
しかも貴鬼の沈んだ表情は依然変わらないのだから、不覚も不覚、大不覚だ。
暫くして笑いを引っ込めたアルデバランは、頑なな態度の貴鬼を一瞥して小さく溜息をつき、その小さな頭を大きな掌でポンポンと叩いた。



「・・・・良いか、貴鬼。動物を飼うというのはそんなに簡単な事じゃない。勿論、考え過ぎても仕方ないが、欲しいという気持ちだけでどうにかなるものでもないのだ。」
「・・・・・・・・・・」
「この猫が賢いか賢くないか、そんな事が問題ではない。」
「・・・・・・・それ、ムウ様も言ってた・・・・・・・」
「・・・・・・・だろう?」
「だったら何が駄目なんだよ!?どこがいけないんだよ!?」

今にも泣き出しそうな貴鬼にそう問われたアルデバランは、静かに立ち上がって言った。



「送って行こう。白羊宮に。」













その頃、は。


「貴鬼・・・・・、帰って来ないね。捜して来ようか?」
「放っておきなさい。その内戻って来ます。」

何か思うところのありそうなムウの側から何となく離れ難く、未だ白羊宮に居た。


「・・・・・・ねぇ、どうしてあんなに頭ごなしに言ったの?」
「・・・・・・・・」
「そりゃ、動物を飼うなんてノリだけで決めちゃいけない事だけど、もうちょっとちゃんと説明してあげてたら、貴鬼だって・・・・・」
「説明など無意味ですよ。」

ムウの口調にいつになく鋭い棘があるのを感じ取って、は些か驚いた。
こうも感情を露にした話し方をするムウを見た事など、これまでになかったからである。



「・・・・・・・私は七歳で牡羊座の黄金聖闘士となり、この聖域に連れて来られました。」
「うん・・・・・・」
「お恥ずかしい話ですが、当時の私はとても心細い思いで毎日を過ごしていました。前牡羊座の黄金聖闘士にして当時の教皇であった我が師・シオンは、聖衣を私に譲ると同時に私を一人前の聖闘士として扱い、容赦なく過酷な任務を与えました。今から思えばそれは光栄な事なのですが、たった七歳だった私には、身に余り過ぎて重圧にさえ感じられました。」

ムウの昔話など初めて聞くは、驚きながらも真剣に聞き入った。


「そんな孤独で心細い日々を支えてくれたのが、私の宮にある日フラリと舞い込んで来た野良猫のコウでした。」
「ムウ、猫飼ってたんだ・・・・・・」
「少しの間餌をあげていただけですよ。」

薄らと微笑んで、ムウは頷いた。


「人目を忍んで餌を与え、束の間その温もりに触れるだけでも、私の心は随分癒されました。大っぴらに飼う事など出来ないのに、自分ではすっかり飼い主のつもりでした。名までつけてね。」
「・・・・・・・・」
「けれどある日、この聖域に不穏な空気が流れ始め、身の危険を感じた私は、聖域を離れざるを得なくなりました。」
「・・・・・それで・・・・・?」
「未熟な私には、自分一人の身を守りながらジャミールまで逃げ帰るのが精一杯で、とてもコウを連れて行く事は出来ませんでした。」
「じゃあ、コウは?」
「この白羊宮が無人になった事に気付いて、また何処かへフラリと去ってしまった事でしょう。多分。」

には、ムウの微笑みの中にほんの束の間、自分を責める感情がちらついたように見えた。


「私はその時になって初めて、自らの過ちに気付きました。コウを連れて来られなかった事以前に、自分一人の身すら確実に守れない半人前が、他の誰かの面倒をみようと思う事自体間違っていたのだ、と。何かが起こっても、守ってやる力がないのですからね。」
「・・・・・・・・・・」
「私はコウと過ごしていた頃の自分の浅はかさを責めました。その頃の私は何も分かっていなかった。しかしこういう気持ちは、幾ら人から説明や説教をされても理解出来ないものです。理解するには自分自身で体験しないと。」
「そう・・・・・だね・・・・・・」
「だからと言って、私やコウと同じ思いを味わってみろと言うには些か酷でしょう。当時の私と同じ幼子である貴鬼にも、あの仔猫にも。」

その時、フッと零したムウの苦笑が、不意にそのまま固まった。


「ムウ?どうし・・・・」
「貴鬼・・・・・・・」

ムウの視線の先に居たのは、半ベソを掻いている貴鬼と、その側に寄り添うようにして立つアルデバランであった。


「貴鬼お前、今の私の話を・・・・・・・」
「ごめんなさい、ムウ様・・・・・・・・」
「貴鬼・・・・・・・」
「オイラ、ムウ様の事分からず屋なんて言って・・・・・・・、おまけに、眉毛が猫とそっくりだって笑われた位で腹を立てるなんて大人げないとかも思っちゃって・・・・・・、だって、オイラだって同じ眉毛なんだし、そんなの気にするなんておかしいと思ったし・・・・・・」

涙と鼻水を次第に垂らし始めながら一生懸命喋る貴鬼を、ムウは決して叱り飛ばしたりはせず、もう一度苦笑を浮かべて貴鬼の頭を一撫でした。


「仮にも師に向かって、何でも物怖じせずポンポンと言う弟子ですね、お前は。」
「ごめんなさい・・・・・・・・」
「・・・・・・・頼もしい限りですよ、全く。」
「ふえぇん・・・・・、ムウ様ぁ・・・・・・・・!」

貴鬼は腕に仔猫を抱いている事さえ忘れて、ムウの腰に縋りついた。
そして、師と弟子が抱擁を交わす直前に貴鬼の腕をすり抜けた仔猫は、アルデバランの足元に行儀良くちんまりと座り込んだ。



「・・・・・なあ、ムウよ。」

その猫を抱き上げながら、アルデバランは意味深な笑みを浮かべてムウに言った。


「小僧はお前の話を良く理解したようだ。もうこれ以上我侭は言わんだろう。だが、小僧の気持ちも俺には良く分かる。そこで、だ。」
「何でしょう?」
「俺と共同でこの猫を飼わないか?」

アルデバランの申し出に、ムウは珍しく驚いたような表情を見せた。


「何ですって?」
「小僧が側に置いて世話をしたがっているのなら、猫はここに置いてやれば良い。俺は日々の面倒を見ない代わりに、猫の飼育にかかる費用の一切を持つ。そして、万一の緊急事態が起こった時にはムウ、俺とお前で守れば良い。」
「アルデバラン、貴方・・・・・・・」
「黄金聖闘士が二人いれば、そう滅多な事も起きやしないさ。我ながら名案だと思うのだが・・・・・どうだ?」

アルデバランの笑顔は、『NOとは言わせない』という自信と迫力に満ちている。
その笑顔と、目に大粒の涙を溜めたまま口元をわなわなと震わせている貴鬼、そして釣られて泣きそうになっているを交互に見たムウは、やがて声を上げて笑い始めた。

ここに居る誰もが聞いた事のない程の、彼にしては大きな声で。



「っははは・・・・・・、やれやれ、流石に多勢に無勢ですね、これは。」
「そういう事だ、ははは!」
「最初に断っておきますが、私は知りませんよ。カミュの説得から何から、全部あなた方でやって下さいね。」
「あぁ、あぁ、分かっているとも。」
「やったーっ!!ムウ様、有難うございます!!」
「もーーっ、ムウもアルデバランも憎いんだからこのこのーーっ!!」

ニヤニヤと笑ったアルデバランは、仔猫を抱いてはしゃぐ貴鬼に言った。


「貴鬼、仔猫に名前をつけてやれ。」
「え?でも名前はカミュが考えてるんじゃ・・・・」
「なぁに、飼うのは俺とお前とムウだ。お前の気に入った名前をつければ良い。」
「っていう事は、カミュから貰って来る事決定済みなんだね。」
「当然じゃないか!ここまで話が盛り上がっているのに、今更白紙に戻せる訳ないだろう!ああ、カミュを説得する時にはも手伝ってくれよ?」
「・・・・・・ふふっ、分かった、善処する。さ、貴鬼、考えてみたら?」

に促され、貴鬼は暫し真面目な顔をして考え込んだ。
そして数秒の後・・・・・



「じゃあ・・・・・・・、マロ!!

と何の迷いもなく叫んだ。




「あははっ、やっぱりそう来たわね!!」
「ふう・・・・・・・・、よりによってお前がそれを言い出しましたか、貴鬼。」
「何でぇ?別に良いじゃないですか。眉毛はオイラとムウ様のこの猫の、たった一つの共通点なんだし!」
「おいおい、それじゃ共同飼い主の俺だけ仲間外れだろうが!」
「あ、そっか。ごめんよアルデバラン;」
「じゃあこうしてくれ。名はマロンだ。眉の模様が何となく栗の実に似ているだろう?だからマロンだ。なあ、どう思う?」
「マロンねぇ、うんうん、良いかも。女の子だし、可愛いんじゃない?アルデバランってば、意外にファンシーな趣味ねぇ。」
「それでもって・・・・・、愛称が『マロ』だ!
「ぶっ・・・・・・・、あっはははは、やっぱりーー!」
「当然だ、わっはははは!!!」
「わーい、良かったなぁマロ!お前は今日からマロンって名前だぞ!!」


大爆笑するとアルデバラン、無邪気に喜ぶ貴鬼、そして。
そんな彼らに苦笑させられているムウ。


この四人に囲まれながら、『マロ(ン)』と名付けられた仔猫は、さながら寵愛される姫の如く、優雅に澄ました顔をしていた。




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後書き

あれ?100%馬鹿話にしようと思ったら、途中でシリアスが入っちゃったよ(汗)。
しかも長くなって済みません。シリアスになるとどうも長ったらしくなっちゃいますね。
なるべく馬鹿100%にしようと思っているのですが・・・・・・、さてさてどうなる事やら。
あ、それから、眉毛眉毛と連呼して済みませんでした(笑)。