怒涛のバレンタイン 前編




「なぁ、。お前明日ヒマか?」
「明日?明日って何日やっけ?」
「14日。」
「・・・・・。ヒマや。ヒマで悪かったな。なんやイヤミかそれは?」
「ちゃうがな!!怒んなや!!」


今日は2月13日。明日はハッピーバレンタイン。
腐れ縁の千堂との間では、別段特別な日ではない。
何かする年もあれば、何もしない年もある。


「ほんなら何かしようや〜。」
「何かって何よ?」
「とりあえずチョコでもくれや。」
「なんやその偉そうな態度は。チョコな〜、売り場混んでるねんな〜!コンビニでもええ?」
清々しいぐらい手抜きやな・・・・。もうちょっとこう、何かないんかい?」
「何かって、作れってか!?今から材料買うて!?あんた無茶言いなや!!」
「ええやんけーー!!たまには女の子らしゅうしてみろや!!」
「どういう意味やねん!」
「コンビニのチョコ嫌やーーー!!何かしようや〜〜〜〜!!!」

駄々をこねる千堂。


「ん〜、なんか作るって言うてもな〜。チョコは作るのめんどい割に腹膨れへんしな・・・・。」
「お前ホンマおばはんか?」
「そんなん言うんやったら何もせぇへんで?」
「・・・・すんまへん。」
「あ!ほなアレどう?たこ焼きパーティーしようや!!」
「たこ焼き〜〜!?色気もへったくれもあれへんやんけ!!」
「今更うちらに色気もへったくれもあるかい。そうしようや!たこ焼き食べたなってきたし!」
「・・・・まぁええか。ほな決定と。」

ロマンチックには程遠いが、たこ焼きは好きだ。
まぁいいかと千堂は納得した。


「ほな明日材料買うてそっち行くわ。婆ちゃんにもよろしゅう言うといて。」
「おー!ほな明日なー!!」






日が変わり、バレンタイン当日。


「婆ちゃん何しとん?」
「わて今日から老人会の旅行や言うたやろ?」
「ああーーー!!忘れとった!!!」
「店番頼むで。ほな行ってきま。」
「気ぃつけや〜。」


千堂の祖母はウキウキと荷物を持って出掛けてしまった。
・・・・ちゅーことは、ちゅーことはやで。


二人っきりかい!!??




「お邪魔しますー。」
「うおっ!!」
「何びっくりしとんねん。荷物持ってぇや、重いねん。」
「お、おう、こっち貸せや。」
「はい。っあーーー、重!!あれ、婆ちゃんは?」
「それがな。今日から旅行やってん。ワイすっかり忘れとってなぁ。」
「あーあ、早よ言いーや。材料てんこ盛り買うてきてもうたやんか。」
「まぁ二人で食べれるやろ。」
「そやな、チビチビ食べたら入るかな。」
「早よ用意しよーや。腹減ってしゃーないわ。」
「ほんだらうちタコやら生地やらやるから、あんた鉄板用意しといてや。」


二手に分かれてたこ焼きパーティーの準備を始める。
はタコを刻み、生地を作る。
千堂は棚からたこ焼き器を取り出し、ちゃぶ台にセッティングする。


「ほら、これ持っていって。あとソースやら何やらも出しときや!」
「はいよー。」



そしてすっかり準備が整い、さぁ焼き始めようとしたまさにその時、絶妙なタイミングでいつもの客が現れた。


「なになに!?何してんの!?」
「もーまたお前らーーー!!何しに来てん!!!」
「お菓子買いに来たんや!あかんのか!!」
「ほな買うたら早よ帰れや。どれにすんねん。」
「たこ焼きすんねやろ!俺らも混ぜてぇや〜!!」
「あかん!今日はあかん!!」
即答する千堂。
折角のバレンタインまで、子供達に邪魔されたくない。


「ケチー、ロッキーのケチー!!!」
子供達のブーイングが炸裂する。


「材料ようさん買うてもうたし、混ぜたったら?」
の鶴の一声で、子供達の参加が決定した。
折角の二人の時間を邪魔されてふくれる千堂。


「何ふくれてんねんな。早よ焼こ。武士油引いて。」
に促され、しぶしぶ作業に取り掛かる千堂。
油を引き終わった鉄板に、が手際よくタコを入れ、生地を流し入れる。
後は焼きあがるのを待つばかりである。





「でけたー!さー食べよ♪」
熱々のたこ焼きを皿に取り、皆で食べ始める。
一気に人数が増えた分、一人一人の取り分が減り、あっという間に空になる。
食べ足りない子供達が騒ぎ出す。

姉ちゃん早よ次焼いてーー!!」
「はいはい、ちょー待ってぇや。まだ私食べてんねん。」
「お前らちょっとは遠慮せんかい!!」



子供達にやらせるのも危ないので、千堂との二人でひたすらたこ焼きを焼く。
その共同作業が妙にこそばゆく感じる千堂。
いかにもロマンチックというわけではないが、これはこれでいいムードだ。


・・・・こいつらさえおらなんだらな(怒)!!




数回同じ作業を繰り返して、だいたい皆のお腹も膨れてきた。



「なーなー、今日バレンタインやろ?姉ちゃんチョコレートちょうだいや〜!」
「あんたらなぁ、ええ加減にしぃや。たこ焼きがチョコの代わりや。」
「えーー!!」
「お前らこれ以上我侭ばっかり言いくさりよったら張り倒すぞ。」
「こわー!!虐待や〜!!」
「人聞き悪いこと言うな!!」


「そや!!ロッキーの部屋行って遊ぼーやー!!」
「行こ行こ〜〜!!」
「ちょー待て!!お前ら!!!」


腹の膨れた子供達がじっとしている理由はない。
一目散に階段を駆け上がり、千堂の部屋へと乱入する。
それを必死で阻止しようと後を追いかける千堂。
一人置いて行かれるのも退屈なので、も一緒に上がってみる。



「ロッキー部屋汚な!!」
「ほっとけ!!そこらへん漁んな!!」
「ほんまやなー。あんたちょっと掃除ぐらいしぃや。足の踏み場もあらへんがな。」
は溜息と共に言う。


床に散らばった雑誌や服。
飲んだ後の空き缶やペットボトル。
敷きっぱなしの布団。



「よっしゃ、バレンタインサービスや。特別に片付けしたろ!」
は腕まくりをし、そこら辺のものをかき集める。


「うわロッキーこれなんや!!??」
「あ?うわっ、ちょっ、返せ!!!」

子供達が引っ張り出したものは所謂エロ本。
真っ赤になって子供達の手からひったくる千堂。


「あんたそんなもんそこら辺に散らかしなや。せめてどっか隠しとき。」
が呆れたように言う。


「ほっとけや!!あぁもう触んな!!!」
「あんたが部屋綺麗にしてたらこんなんせんで済むんじゃ。ボーっとしてやんと掃除機と雑巾とゴミ袋持ってき!」
有無を言わさぬの命に、従わざるを得ない千堂。



言われたものを手に戻って来てみれば。


せっせと片付ける
そこら辺の物を手当たり次第漁る子供達。


「ほら!あんたの部屋やねんからあんたも掃除し!そこのゴミ捨てて!」


余りの部屋の汚さに殺気立つに怒鳴られ、しぶしぶ片付けを始める。
子供達はが片付けた所を再び散らかし、に怒られている。


「あんたら!!散らかすんやったら外行き!!ホンマどいつもこいつも!」
姉ちゃん怖い〜!」
「やかまし!!」




違う。
なんか違う。
ワイはこんなバレンタインがしたかったんやない。
どこで間違うてん(涙)。


半泣きになりながら、千堂は部屋の掃除を続けた。




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後書き

明日はいよいよバレンタインですね〜。
二人に素敵なバレンタインを過ごしてもらうつもりが、どこで間違ったんでしょう(爆)。
ここで終わるのもあまりに千堂が不憫なので、続いてみたりします♪