SCARS OF GLORY 1




「champ, It's time.」

試合の開始を告げるトレーナーの声には、いつも苛々させられる。
まだ今一つその気になれていないというのに、こちらの都合はお構いなし、全く口やかましい男だ。
『練習しろ』『せめて試合を控えている時位、酒・煙草・女は断て』、『早くしろ、時間だぞ、ウォームアップは出来ているのか』、毎度同じ小言ばかり浴びせてくる。

今日だって、折角カジノでグラマラスな良い女を引っ掛けたというのに、控え室に連れ込もうとしたら『試合直前なのに、何を考えてるんだ!?』と烈火の如く怒り、強引に女を追い返してしまった。


「Hey, Can you hear me!?」

どうせ今日の相手だって、3分ともたないだろう。
汗を掻く暇もなく終わるに決まっている。
そんな無意味な試合をする位なら、コールガールでも呼んでホテルに篭った方が、余程良い汗を掻ける。

「・・・・・・・・Yeah」

ふて腐れた顔を向けようともせず、ホークは気だるそうに返事をした。









試合はやはり予測通り、3分ともたなかった。
正確に言えば2分ももたず、相手は意識不明の重態で、病院に搬送されていった。
恐らくもう二度と、リング上で顔を見る事はないだろう。
いや、もしかしたら、この世の何処でも。


「Hey, What's the matter?」
「mm・・・・・, nothing.」

喉の奥で笑いながら、ホークは派手な金髪の美女の乳房を吸った。
ノーダメージで圧勝を収めたのだ。今夜は一晩中でもいける。
高い金を払ってこの高級コールガールを呼びつけたのだから、精々愉しまねば損だ。

むさ苦しい男を呻かせるよりも、こうして女を喘がせる方が余程楽しい。
いつだったか、誰かにポルノ俳優になれば良いと言われたのだが、本当にそうした方が良かったかもなと、ホークは思った。

だが、やはり多分無理だ。
監督の言う通り、シナリオ通りの演技をせねばならないセックスなど、面白くも何ともない。
そういえば、その時もそう思ったから実行に移さなかったのだと思い出し、ホークは女を我が物顔に弄んだ。


「Oh! Ah・・・・, Yeah! Oh, I'm comming・・・・, I'm comming・・・・! Ah・・・・・!!」

確かに女は好きだ。暇さえあれば女を抱いていると言っても過言ではない。
だが、波打つ長い金髪をこうして見つめていると、時折酷く興醒めする事がある。
挑発的に男を誘い、雌の匂いを撒き散らしながら腰を振る女には、正直言ってもう飽きているせいだろうか。


「Why are you blond?」
「Ah・・・・, What?」
「Why are you blond?」
「By nature. So what?」

気分が高まってきたという時に奇妙な質問だと言いたげな女が、怪訝そうに眉を顰めている。
確かに、髪の色などどうでも良い事だ。
ブロンドだろうがブルネットだろうが、乳房と女性器がついていて、ある一定の器量を最低限持っている者なら、誰でも抱けるのだから。
それに、この女はどちらかと言わなくても美人の部類に入る。


だが本当は。




「・・・・・・I wanna eat a Japanese girl・・・・・・」


口に出して言ってみると、益々この女を抱く気がしなくなってきた。
絶頂に達する瞬間でも何処か恥じらいのある表情、黒いしなやかな髪と甘い声、華奢な身体を持つ日本人の女を抱きたい。
そう思ったら、不意にこの女が醜く見えた。



「・・・・・・Get out.」
「What?」
「Get out of here.」

はじめ女は意味が分からないといった顔をしていたが、二度目をゆっくりと発音してやると、みるみる内に憤慨した顔で髪を掻き上げ、『Shit, Son of a bitch!』等と悪態をつきながら、乱暴に服を着込んで出て行った。

裸を見て、ボディータッチだけで2千ドルとは随分高くついたが、向こうもビジネスだ。
一度受け取った金を返すような真似は、死んでもしない。
それに、金なら唸る程ある。2千ドルなどさして惜しくはない。





・・・・・・・」


― ちくしょう、、またお前が恋しくなっちまった・・・・・・


時折不意に蘇る記憶の中の幻が、また今夜も現れた。
瞳を閉じてその面影をなぞりながら、ホークは己の楔を握り締め、自慰に耽り始めた。




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後書き

実はホーク・・・・、好きなんです(笑)。
非常に線のくっきりとした面白いキャラで。
ですので、ホークで連載をおっ始めてみました(笑)。
いきなり第一話から裏ですが(笑)、別にそんなにヤバくはならない・・・・と思います。
うん、多分(笑)。
あと、今回の会話文は調子乗って英語で書きましたが(笑)、
間違っていたら済みません。『アホやー』と笑い飛ばしてやって下さい。
次回からは無理せず日本語で書きます(笑)。