『千堂武士
件名:今度の土曜の
町内会の花見、お前も行くんやろ?』
『
件名:Re:今度の土曜の
あ、うち無理♪友達と遊ぶねん('▽')』
『千堂武士
件名:えー!?
マジで!?なんでやねん!?来いや!!』
『
件名:せやから
無理言うてるやん!今年は一人で頑張って(`m´〃)』
『千堂武士
件名:無理じゃ!!
あの連中の相手一人でせえってか!?お前ずっこいぞ!!』
『
件名:なにがやねん!
何と言われようと無理なもんは無理やねん!諦め!!』
『千堂武士
件名:お前
今度会うたら覚えとけよ!ほんでその顔文字ムカつくねん!!』
『
件名:へーへー
まあせいぜい頑張ってや(´ε`)』
「くっ・・・!こっのアマ・・・・!!」
千堂は携帯を布団に叩き付けて歯軋りした。
これで頼みの綱は全て切れた。
やったら絶対いけると思ったのに!
あかん、もう終わりや・・・・
「夜桜もまた風流でええのう!」
「ほんまやなぁ!」
土曜の夜、千堂は町内会の人々と共に大阪城公園にいた。
本日は毎年恒例、町内会主催の花見の日である。
試合の応援等、日頃から世話になっているので、千堂は毎年この花見に顔を出していた。
しかし正直なところ、千堂はこの席が少々、いやかなり、苦手なのであった。
「武ちゃん!!こっち座りぃや!!」
「早よおいでぇな!!」
そう、天下無敵のおばちゃん連中。
この方々こそが、花見の席での千堂の天敵なのである。
大抵はや他の地元の友達が一緒に参加してくれるのだが、生憎と今年参加している若者は自分一人。
後は老人・中年の集団と、それにくっついてきた子供達という、何とも居心地の悪い団体になっていた。
「早よ来ぃや!!あんた座らな話ならへんがな!!」
「そやそや!ロッキーが主役やさかいな!」
「いつの間にワイが主役になっとんねん。誰か助けてくれや・・・・」
孤立無援、四面楚歌、絶体絶命の大ピンチ。
しかし天は彼を見放さなかった。
これから自分の身に降りかかる災難を憂いている時、救いの女神が現れたのだ。
「こんばんわ〜・・・・。」
「いやーー!!さんとこのちゃんやんか!」
「今日来ぇへんかったんちゃうんかい!?」
「うん、ちょっと予定が変わってもうてな・・・。」
恐る恐る登場したに、一団は一層盛り上がりを見せる。
が、その中の誰よりも激しく盛り上がった者が約1名。
「ーーーー!!!!!」
「うわっ!!なんやねん!!」
「やっぱり来てくれたんかーー!!お前はやっぱりええ奴やーー!!!」
「そんな泣きそうな顔せんでもええやんか。大袈裟やな。」
「そうやねん!お前は昔からやれば出来る奴やねん!!」
「何ワケ分からんこと言うとんねん。ちょっと落ち着きぃや。」
今にも抱きつきそうな勢いの千堂を宥めて、は適当な場所に腰を下ろした。
千堂もいそいそと横に座り、小声で作戦会議を始める。
「お前今日来られへんかったんちゃうんかい。」
「それがやな、急に約束キャンセルなってもうてな。親もこっち来てるからメシもないしな、と思って。」
「ワイを助けるためやないんかい。」
「それはない!」
「そんな寂しいこと言うなや!今年も協力しようや!」
「ん〜〜、まあそれが得策やな。ほな今年もおっちゃんらは頼むで。」
「よっしゃ、その代わりおばちゃんらのこと任したで。」
「子供らは?」
「放っとけ。」
「そやな。今年もいつも通り、ちゃっちゃと食べて適当に目立たんとこおって、さっさと帰ろう。」
「よっしゃ!」
作戦もあらかたまとまったところで、千堂とは敵地へ赴いた。
しかし彼らは忘れていたのだ。
年頃の若者が、自分達二人だけだということを。