A51.

【はじめに】
 白血病患者に対して行われる輸血には,補充療法としての輸血,化学療法による骨髄抑制に対する輸血,移植
療法後の輸血などがある.

【補充療法としての輸血の適応】
 血液製剤の使用指針では,造血器悪性腫瘍などの慢性貧血の場合には,Hb値7g/dLを目安にして赤血球
製剤の輸血を行い,血小板製剤の輸血は,多くの場合血小板数を2 万/μL以上に維持するように輸血を行うと
なっている.

【輸血量および輸血効果の判定】
 赤血球製剤の必要投与量は予測上昇Hb値(g/dL)=投与Hb量(g)/循環血液量(dL)から算出し,
輸血効果はHb値やHt値で判定する.また,血小板製剤の必要投与量は予測血小板増加数(/μL)={輸血
血小板総数/循環血液量(mL)×10^3}×{2/3}から算出し,輸血効果は血小板増加数の評価として,
血小板輸血後1時間前後あるいは20時間前後の補正血小板増加数(CCI)=血小板増加数(/μL)×体表
面積(F)/輸血血小板総数(×10^11)により輸血効果を判定する.

【輸血副作用・合併症】
 輸血を行う上で常に考慮しておかなければならないことは,輸血により副作用を発症する可能性があることで
ある.輸血後副作用には,アレルギー反応,蕁麻疹,発熱,アナフィラキシーショック,輸血後GVHD,TR
ALI,血小板輸血不応や肝炎ウイルス・HIV・パルボウイルスB19・サイトメガロウイルス(CMV)・
プリオンなどによる感染症がある。

【輸血副作用予防対策】
 白血病患者は輸血が頻回となるため副作用予防対策が重要となる.副作用予防対策として,血液製剤への放射
線照射,白血球除去フィルターの使用,適正輸血などが挙げられる.血液製剤へ放射線照射を実施することによ
りリンパ球を不活化し輸血後GVHDを予防できる.また,白血球除去フィルターを使用することで,製剤中に
含まれる白血球を起因とした副作用予防に有用となる.血小板製剤の頻回輸血により,患者が抗HLA抗体を産
生し血小板輸血不応状態に陥った場合は,HLA適合血小板を使用する.移植後の免疫不全状態時に問題となる
CMV感染については,ドナーと患者が共にCMV陰性の場合はCMV陰性血小板を使用する.製剤中の血漿成
分に対する副作用を発症した場合は,洗浄赤血球・洗浄血小板製剤を使用する.また,高単位輸血用血液製剤を
使用する(供血者数を減らす)ことにより抗原感作と感染の機会を減らすことができる.

【移植療法後の輸血】
 造血幹細胞移植ではドナーと患者間のHLA型一致により移植が行われるため,ABO式血液型が異なる場合
でも移植が行われる.ABO不適合移植の場合,型不適合による溶血を防ぐために骨髄液の処理が必要となる.
また,ABO不適合移植後に問題となるのは,赤血球製剤および血小板製剤の血液型の選択である.選択の際に
は,major mismatch とminor mismatch を考慮する必要がある.
 Major mismatch とは,患者血清中の抗A,抗B抗体がドナーの赤血球と反応し溶血を起こす場合で,骨髄液は
血液成分分離装置を用いて単核球分画のみ採取して赤血球を除去し移植する.移植後の輸血は,例えば患者がO
型でドナーがAB型の場合,患者血清中の抗A,抗B抗体が消失するまではO型赤血球製剤を,抗体消失後はド
ナーと同型の赤血球製剤を輸血するのが一般的である.血小板製剤は,患者血液型またはドナー血液型のどちら
かを選択することになる.
 Minor mismatch とは,ドナー骨髄液中の血液に含まれる抗A,抗B抗体が患者赤血球と反応し溶血を起こす場
合で,骨髄液を遠心分離して血漿を除去し,AB型の血漿で置換して移植する.移植後の輸血は,例えば患者が
AB型でドナーがA型の場合,移植後の輸血はO型赤血球製剤またはドナーと同型の赤血球製剤を輸血する.血
小板製剤は患者血液型の製剤を輸血するのが一般的である.

【生着の指標・血液型の変化】
 移植後,患者血液型はドナー由来の造血幹細胞から作られた赤血球型,つまりドナーと同型の血液型に変化し
ていく.このことを利用して移植後のドナー造血幹細胞生着の指標として,血液型検査が実施されるケースがあ
る.
 ABO異型移植後の血液型検査で注意することは,オモテ試験・ウラ試験不一致や部分凝集(mixed field
agglutination)を認めることである.部分凝集は移植後,患者由来血球とドナー由来血球が混在している期間
に起こる.