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AIHA患者は、まず輸血療法ではなくステロイド(プレドニン)療法で治療されます。
Hb7g/dlくらいでは輸血をしなくても済むケースがあり、慢性例の場合はHb4〜5g/dl代くらいまで輸血を我慢できるケースもあります。
この段階でステロイドが効けば貧血は改善され輸血の必要は無くなります。(やがて間接クームスも陰性になっていきます。)
個人的な意見ですが、やはり極力輸血されずにAIHAと診断がついたらステロイド療法でいかれた方が良いかと思います。

どうしても輸血が必要な場合(貧血がひどく重篤な場合は輸血せざるを得ません。)についてですが、
まず、間接クームス陽性時には患者血清中に同種抗体が隠れていないか注意して検査する必要があります。
これが一番大事です!同種抗体が存在した場合、その抗体に対する対応抗原陰性血を輸血します。
同種抗体が無ければ最終的には患者のABOとRhを合わせて輸血すれば良いでしょう。
但し、自己抗体が型特異性がある場合、よくあるのは(今回のようにRh系)抗e自己抗体が存在する場合
赤血球型検査ガイドライン(日本輸血学会雑誌 平成15年7月 398-402)によれば、自己抗体の対応抗原陰性血つまりEE血球を選択するとなっております。
自己抗体で型特異性がある場合、対応抗原陰性血を選択すれば輸血効果はある(体内での赤血球寿命が長い)かも知れません。
しかし、1回の輸血だけで同種抗体を産生してしまう可能性もあります。
特に輸血歴、妊娠歴のある患者さんは同種抗体産生率が高いので注意が必要です。
主治医には上記のようないくつかの選択肢があることを説明されて今後の輸血回数なども踏まえて良くご検討の上、血液製剤の選択をして下さい。

私の病院でも高力価の冷式自己抗体を保有した直接・間接クームス陽性患者に、ランダム血を輸血したら抗E抗体を作ってしまったケースがあります。
自己抗体はステロイドや免疫抑制剤の投与により陰性化していく可能性がありますが、一度輸血で作ってしまった同種抗体はそう簡単には消えません。
第41回近畿医学検査学会の抄録「AIHAの輸血対応」でのアンケート調査結果によると 約半数の施設ではRh同型血を選んでいるようです。
(裏を返せば半数の施設ではランダム血もしくは自己抗体の対応抗原陰性血を選んでいることになりますが...。)

それから、主治医に「副作用が発症しないかを通常の輸血よりも注意しながら輸血するよう」伝えましょう。
さらに、輸血後の血液(CBC)検査から輸血効果があったかを確認し、また溶血所見を示す検査結果(LD、AST、T-Bil上昇などの)所見が出ていないかフォローしていくことが大事になるかと思います。

あと、直接間接クームス陽性患者への洗浄赤血球の必要性についですがあまり必要ないと思われます。臨床の先生は、製剤中の補体を気にされて洗浄血を使っておられると思います。しかし、MAPの血漿除去率は90%を越えていますし、RCC中にわずかに含まれている可能性がある補体も採血して数日経てば活性は低下していると思います。
また、洗浄血はRCCに比べ赤血球の回収率が悪い(赤血球数が減っている)ことや、膜抵抗も低下している可能性がある点からもあまりメリットがないかと思います。期限も調製後24時間しかないですし...。生食浮遊でボリュームも増えてますし.....。でも、確かに先生は洗浄血を使いたがります。

参考資料
血液製剤の血漿除去率ですが、血液製剤の性状比較表を参考に計算してみました。
(正確には、製剤上清の蛋白除去率となりますが)全血(WB)と比較して、RC-MAPは除去率が93.4%です。
洗浄血(WRC)は99.2%です。今はLR製剤になっていますが、参考値にはなるかと思います。
従いまして、赤血球製剤(RCC)は大部分の蛋白成分が除去されていることになると思います。