Q37. 不規則性抗体 抗M抗体(Nacl Dia Panel P 陰性、AHG Dia Panel 陽性)、
間接クームス(+)の結果でした。検査結果の解釈の仕方について教えて下さい。

追加情報
妊婦さんの検査結果です。
妊娠12週、31歳、血液型 B型 Rh(D)陰性
不規則性抗体 抗M抗体(Nacl Dia Panel P 陰性、AHG Dia Panel 陽性)、
間接クームス(+)の結果でした。問診表によると初回妊娠、輸血歴なしです。
今回の検査結果の解釈、また今後分娩時までの検査について
どのように進めていけばよいのか是非教えて下さい。


A37.
この妊婦さんの場合の抗Mは、輸血歴・妊娠歴がないので、通常ならIgM性の自然抗体と考えられます。
IgM性の抗体は胎盤を通過できませんので、新生児溶血性疾患(HDN)の心配は必要ありません。
しかし、今回の検査結果が生食法(Nacl)は陰性でクームス法(AHG)が陽性となっておりますのでIgG性抗体の疑いがあります。(「生食法(Nacl)」この表現は、検査方法はゲルカラム法(MTS法)でしょう。)
最終的には、この抗MがIgM性かIgG性なのかが問題となります。
患者血清をDTTまたは2ME処理してIgM抗体を失活させて検査を実施すればその区別ができます。
もし、IgG性ならHDNに気をつけましょう。今後は定期的な抗体価測定が必要となります。
抗体価測定は基本的には37℃60分クームス法になります。
(しかし、60分も待っているのが面倒と思われる施設では、反応増強剤を入れておられるのが現状です。)
大事なことは抗体価の推移を同じ検査方法で経過観察していくことです。
また、検査後の残りの血清をフリーズしておき、次回検査時に今回の検体を対照にされると良いでしょう。
血清が十分に確保できるのならIgM不活化処理と未処理の血清で抗体価を測定されると良いでしょう。
また、抗Dを含め他の抗体を産性する可能性もありますので
不規則抗体検査は(抗Mだけと決めつけず)慎重に実施して下さい。

余談ですが・・・・私の経験談を。
産婦人科の先生から
「Rh(D)陰性の妊婦さんの抗D抗体価を測定して欲しい」
と依頼され抗体スクリーニングを実施したら抗Dではなく
別の抗体が陽性になったことがありました。
妊婦さんがRh(D)陰性ですと、
すぐに抗D抗体と思ってしまう先生がおられました....。