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輸血検査で起こる非特異反応の中の連銭形成を経験された症例のようですね。
連銭形成は、生食法判定の際、顕微鏡で形態を観察して判断したり、生食水を加えて(血清・血漿蛋白濃度を下げて)連銭が消えるか確認したり、免疫グロブリン値やフィブリノゲン値などの検査結果からも推測することができます。

今回は骨髄腫疑いの患者さんですから、連銭形成が起こっても不思議ではありません。
骨髄腫の患者さんの輸血検査で異常反応が出た場合、血清総蛋白値(TP)や、免疫グロブリン、血清膠質反応(TTT、ZTT)の検査結果を見ると参考になります。
ZTTはIgG・IgM値と相関し、TTTはIgM値と相関するので、特にその値に注目して下さい。いずれかが 20から25を越えている場合は連銭形成を起こす可能性があります。
骨髄腫のタイプにもよりますが多いのはIgG型骨髄腫(IgA型骨髄腫は1/4程度)なので輸血検査にはいろいろと影響を与えてくると思います。
また、高フィブリノゲン血症の患者さんでも連銭形成を起こすことがあります。

血清がうまく分離できないのであれば、
(こういったフィブリン塊が出て、うまく血清分離できないケースは透析患者さんでもよくありますが、)クロスマッチに関しては(補体結合性抗体を検出するためには)本来血清が良いのかもしれませんが、あえて血清にこだわって輸血検査に悪影響がでるよりも、EDTAなどの抗凝固剤入りのスピッツで採血して血漿で検査された方が良いのではないでしょうか?
また、不規則抗体検査は実施されているのでしょうか?

それから、クームス法の判定が陰性とのことですが、
クームスコントロール血球を入れて凝集が確認されなければ、残念ですがそのクームス法陰性という検査結果は無効となります。
クームスコントロール血球を入れても凝集が認められない原因ですが、この症例の(血清がうまく分離できない)場合、(あくまでも推測ですが...)洗浄がうまくできてないのではと思います。
反応増強剤はアルブミンを使われましたでしょうか?
アルブミン法の判定をされたときにフィブリンの析出はありませんでしたでしょうか?もし、その際にフィブリンが出ていたら洗浄してもうまく取り除けないとフィブリンが(その固まりの中には患者血清中のIgGや補体などの成分が含まれているため)クームス血清と反応して中和されてしまう可能性があります。反応増強剤にペグを使われている場合では37℃インキュベーション後すぐに洗浄に入りますので、(そこでフィブリンが出ていたのか)確認することが出来ません。特に 自動洗浄機を使われている施設ではその辺が確認しずらいです。
もしかしたらクームス法判定時に(フィブリンに赤血球がトラップされてしまっていて)試験管底の赤血球量がいつもより少なくなかったでしょうか?