それでは話を、こどもの発達に戻して考えてみましょう。こどもが座る、ハイハイする、立つ、歩くなど、生まれてから学習していくことはたくさんあります。脳性麻痺の場合、筋肉の緊張、わかりやすく言うと力の入れ具合がうまく調節できない状態にあります。成人の麻痺のある患者の場合も同じです。

そこで力の入れ具合を自分で調節できるようにならなければなりません。力の入れ具合は、目的や欲求を満たすために周りの環境に対して適切に働きかけることにより獲得されると考えられます。そのためには周りの環境を適切に知覚できなければ、適切に働きかけることはできません。何もわからない、認識できないものには働きかけようという意志は起きません。そこで認知過程が重要になってくるわけです。周りの環境を知覚する能力、そこに注意する能力、記憶する能力を養う必要があります。それを伸ばすことで正しい働きかけができるようにするのがこどもの発達障害に対する認知運動療法だと考えています。

行動を変えるのはこども自身であり、外から何かをすることで人間の行動を変えることはできません。また刺激を与えてそれに対する反応を引き出していくというリハビリも反射に基づいたリハビリとなり、子どもの頭のなかで起きていることを無視しています。子ども自らが働きかけた刺激でなければ、子どもにとって意味のある刺激にはなりません。発達を促進するよい刺激というのは、子どもが理解できる刺激であり、子ども自ら働きかけることで得られるものだと思います。

小児に対する認知運動療法は、まだしっかりとした方向付けがなされていない状態ですが、成人に対しては劇的な効果が得られていることも考えると、脳性麻痺に対しても効果があるのは明らかです。実際、認知運動療法を行っているほとんどのこどもになんらかの効果が得られています。そしてまだまだ進化している治療法でもあります。この21世紀の新しいリハビリテーションを、21世紀を担うこどもたちに少しでも広めていけるようにこれから努力していきたいと思います。

最後にこのような機会を与えてくださったこどもたちとそのご家族に深謝いたします。

認知運動療法 とは?

特別寄稿