アイルランド旅行記その20 最終回
アイルランドからイギリスへは、幾種類かの航路があります。
北アイルランドのベルファストからスコットランドへ行くの、
ダブリンからマン島経由、ロスレアからペンブルク、またはフィッ
シュガード、ロスレアからはフランス行きもあります。コーク
を出るのもあります。一番最短距離を行くのはダブリン近くのダ
ンレアリから、ウェールズのホーリーヘッドという航路で、従来
のフェリーだとそれでも3時間半かかるのですが、最新式の高速
フェリー「SEA LYNXS II」ですと、1時間半という進歩ぶり。
帰路を船にしたのは別に深い意味はないのですが、何となく、
島国やなあ、というのをゆっくり実感してみたかったわけです。
そのわりには、1時間半の高速艇に乗ってしまっているところが
また、せちがらい日本人の悲しさかも知れません。
ダートでダンレアリ港へ行くと、靄は出ていますがいい天気です。
さすがはでかい高速フェリー、立派なものです。狭い海峡とはいえど
も、いったん出航すると、別段何が見えるでもなし、靄で愛蘭土はす
ぐ隠れてしまい、感傷にふける暇もあらばこそ。甲板に立っていられ
ないほどの強風で、外には出られず、結構豪華なバーなどもある船室
で座っていることになります。
向かい側に金髪の若いお母さんが座り、「子供がいてもいい?」と
訊ねました。どーぞ、と答えると、彼女が連れてきたのは、小学校に
入ったばかりのローレンという、長くまっすぐな金髪の、人なつっこ
い女の子と、3才くらいの恥ずかしがりやのアダム君でした。そのう
ちお父さんもやってきて、談笑しつつ、この一家と共にアイルランド
旅行は終わりを迎えたのでした。
ダブリンのおばあちゃんに、おもちゃを買ってもらったと、大はしゃ
ぎのローレンは、ヴェールをつけた白い馬の人形「ブライダルビュー
ティー」を抱いて、お喋りをし、「ローレン」を日本語で書いてと
ねだり、カタカナで書いた自分の名前をしげしげと見て、学校の先生
に見せるといっていました。奥さんの実家がダブリンで、だんなさん
はウェールズの人だったので、婚約時代はしょっちゅうこの海峡を行
き来したというご夫妻。サンドイッチの簡単な食事(船の中の売店で
はイギリスポンドか、アイルランド紙幣しか取ってくれない!!で、
あのアイリッシュハープの描いてある小銭がいっぱい余ってしまった。)
をすませると、フェリーはウェールズの鄙びた港ホーリーヘッドに到
着します。はにかみやさんのアダムも、最後には「バイバイ、アリコ」
と手を振ってくれました。
ホーリーヘッドは港しかない、ほんとに何もないところです。ロンド
ン行きの汽車にのって、30分。北ウェールズのバンゴールという町で
降りました。別に何のあてもありませんでした。他に降りる人もなく、
寂れた町で、インフォメーションもタウンホールの中に同居しており、
暇そうなおばさんがいるだけ。とにかくブリティッシュホテルという古
色蒼然とした(それでもホテル)宿をとってもらいましたが、バスつき
シングル4つのクラウンつきホテルで、20ポンド。うそだろーと思い
つつ、いってみるとやはりなるほど20ポンドだったという建物でした
が、今度はどうしても読めないウェールズ語の地名に悩みつつ、この地
方を彷徨することとなりました。が、これはもうアイルランド旅行記の
管轄外ですね。
というわけで、どうも締めくくりがうまくありませんが、長々とご辛
抱、おつきあい頂き、まことにありがとうございました。